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同時に門をくぐった

 色々と試したけど曖昧な条件はなかなかクリア出来なかった。


 そろそろ帰る時間になって、最後に取得したスキルを試すと、身体から何かが抜けた感覚があった。


 『マスター、しっかりして下さぃ‥‥』


 いつも頭の中から聞こえるスケさんの声が、遠くなっていく気がして、突然意識が飛んだ。


 目を覚ますと、 真っ白がどこまで続いているような空間で、立っている地面さえ真っ白なせいで歩き出すのさえ躊躇ってしまう。


 そんな遠近感や平衡感覚が狂いそうな空間にいるのは俺だけじゃない。


 老若男女関係なく100人以上の人が、白い空間に集められていた。


 集められた人は俺と同じように、状況が分からずにキョロキョロと様子を伺っている。


 たぶん全員が目を覚ました時に、白い空間に大きな顔が浮かび上がった。


 石膏像のようなその顔が口を開くと、重く低い声が空間に響いた。


 「貴方達は、世界に定められた死以外で死んでここに集められました。


 貴方達には、死後の世界に居場所がありません、なので魂ごと消滅させて頂きます」


 空間全体にざわめきが広がる、いきなり消滅とか言われればそうなるのも当然だ。


 「ふざけるな!予定外の死なら取り消せよ!?」


 誰かの文句が引き金になって、集められた人達から次々に声が上がり、それぞれが言いたい事を言って、収拾がつかなくなっていく。


 だけど、次の瞬間に一番最初に声を上げて、この状態を作り出した人が浮かび上がった顔の口から吐き出された光線に貫かれて、光の粒になって消えた。


 一気に空間内を恐怖と混乱が支配して悲鳴が上がるが、喧騒の元凶となった顔の声が遮った。


 「静まれ、確かに予定外の死は此方にも非がある、だから貴方達にチャンスを与えよう。


 今から24時間以内に、試練に合格すれば魂の消滅はなかった事にして上げよう。


 ルールは簡単、門をくぐった先の迷宮で赤と青の宝玉を2つを手に入れて、迷宮の最奥の門をくぐる事が出来れば合格。


 宝玉の数は赤と青共に100ずつある、2つの宝玉の組み合わせは、赤青でも赤赤でも青青でも自由。


 赤の宝玉は迷宮に出てくるモンスターの中に、青の宝玉は迷宮の何処かに隠されている。


 モンスターさえ倒せれば赤の宝玉は簡単に手に入るし、見つけるのは困難だか青の宝玉は安全に手に入る。


 上手くいけば、ここにいる殆どが消滅を逃れる事が出来る、我の慈悲に感謝して試練に挑むがいい」


 浮かんだ顔の言葉が終わると同時に、手の甲に24の数字が浮かび、大きな門が現れる。


 急な展開についての行けず、俺が開かれた門に入るのを躊躇っていると、1人が門をくぐりそれに続いて続々と門をくぐって消えていく。


 あっという間に門の前には俺ともう1人だけが残った、浮かぶ顔の話話だと宝玉の数は100ずつはあるから、早い者勝ちというほど切羽詰まった状態じゃない。


 俺は門の前で立って考えているもう1人に話し掛けた。


 「行かないんですか?」


 「なんか変な感じがするなぁ、と思いまして、魂を消滅させるのは本気だと思うんですけど。


 殆ど残った人がクリア出来る可能性のある試練をさせるなら、最初から生き返らせてくれればいいんじゃないかと」


 「なるほど、試練を受けさせるのが目的かもしれないって事ですか」


 俺と一緒に残ったのは、二十歳前後の落ち着いた雰囲気の男だった。


 「分からないですけど、宝玉を手に入れても帰してくれないような気がするんですよね。


 だって消滅はしないけど、生き返らせてくれるとは言ってないんですよね」


 「確かに言ってないですね、でも宝玉を集めないと間違いなく消滅させらると思いますよ」


 「そうなんですよね、宝玉を手に入れないといけない事には変わりないんですよ。


 予定外の死に関しても、死んだという記憶が曖昧なんですよね、だから本当に死んだのかも自信がなくて。


 貴方は死んだって実感はあるんですか?」


 質問をされて答えに困る、変なスキルを使ったらここにいましたと言って信じてもらえるだろうか。


 今の現状が非現実的だから、受け入れてくれる可能性も高いような気がするけど、いつもなら相談にのってくれるスケさんがいないのが不安で仕方ない。


 「いや、俺はなんて言うかスキルっていうのを使ったら、ここに居たというか」


 迷った末に、俺は正直に話す事にした。


 「スキルって何ですか?」


 「臨死ってスキルを使ったんです」


 細かい説明は全部省いて、取得して使ったレア(希少級)スキル臨死を使った事だけを話した。


 「何でそんな危なそうなスキルを使ったんですか?普通に考えて死ぬ可能性のある名前のスキルですよ」


 「一応目的があって、使っちゃったんですよね」


 「そうですか、目的があったなら仕方ないですけど、死んだかもしれないスキルを使ったなら、僕達が死んでしまったというのも信憑性が増しますね。


 他に何か出来る事はあるんですか?」


 青年に聞かれたけど、さっきから何度も試しているけど、スキルはおろかステータスも観る事が出来ないし、なんだか身体が重い。


 身体が重いのは、この空間のせいかと思ったけど、一緒にいる青年はいつも通りだと言うので、空間のせいじゃないらしい。


 やっぱり後付けのステータスが効果をなくしてしまっている、という事は今は普通のおっさんという事だ。


 「他のスキルは何も使えないんだ」


 俺は頭を掻きながら、スキルが使えない事を話した。


 「他にスキルはないんですか、それは仕方ないですね、良かったら一緒に迷宮を探索しませんか?」


 「え~っといいんですか?俺なんかただのおっさんですよ」


 「門にくぐるのを最後まで疑ってた者同士ですから、他の人も渋々進んだり、誰かに釣られただけの人が大半でした。


 もしかしたら命を賭けるかもしれないのに、全く知らない人に背中を預けられませんから、少しでも考え方が近い人がいいなと思っていたら、貴方に声をかけられたんです」


 なんとなく言いたい事は伝わった、俺もステータスもスキルも使えない状態では自信がなかったので正直に助かる提案だった。


 「それじゃ、よろしくお願いします、俺は佐藤 九郎っていいます」


 「こちらこそ、よろしくお願いします、僕は八谷 鏡也(やたに きょうや)です」


 お互いに簡単な自己紹介をして、同時に門をくぐった。

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