クリア出来なかった
目の前の俺そっくりの真分身に憑依したスケさんに死墜をかけた。
死墜がかかった身体は、肌の色がどんどん血の気が引いて青味がかった白になって、閉じていた目を開くと真っ赤な相貌を覗かせた。
肌の色と目以外は殆ど普通の人間との違いはない、変化は少ないけど成功はしたと思う、見た目じゃ分からないから、スケさんになんのアンデッドになったのか聞いてみた。
『ウォーカーという最下級のアンデッドです。
ウォーカーの種族スキルの無痛はちゃんと取得出来たのでいいですけど、精霊でもアンデッドでも一番ハズレばかりなのは、なんの嫌がらせですかマスター』
「俺はバフまでかけて、全力でスキルを使ったんだから不可抗力だろ。
一応、新しい種族スキルは取得出来たんだからいいじゃないか」
『そうですね、本来の目的だったステータスの獲得は果たせたので、おまけのスキルは微妙でもヨシとしましょう。
もう身体は必要ないので、破邪の力で浄化して真分身を解除していいですよ』
スケさんは俺の真分身から、憑依状態を解除して俺の頭の中で話始めた。
「結局、スケさんは何になったの?」
『死精霊です、マスターの眷属になったので立場は兎達に近いですね。
マスターのスキルでもあるので安心して下さい、普段は今までと何も変わりません、ただステータスが共有じゃなくなったので、これからはワタシもステータスを上げないといけません。
嬉しい事にスキルスロットがなくなって、スキルの取得数の制限がなくなりましたし』
「やったな、これならダンジョン攻略はスケさんに任せても大丈夫だな」
『残念ですけど、マスターのスキルとしての繋がりの方が強いので、ワタシは死精霊として実体化してもマスターから一定の距離以上離れられないので。
任せて貰っても、一緒に攻略しないとダメですよ』
「やっぱりそんなに甘くないか」
『そんなもんです、それにダンジョンと繋がっているのはマスターなので、どちらにしろマスターがいないとダンジョンの攻略は出来ません。
弱いまま先に進んだら危ないですし、マスターには今まで通り頑張って貰います』
俺は少しがっかりしたけど、条件を満たしたので蘇生魔法が取得出来ないか確認した。
「あれ?蘇生魔法がまだ取得出来ない、もしかしてやっぱりスケさんじゃダメだった?」
『そうじゃありません、まだ条件が残っているだけです。
最後の条件は、マスターが魂を認識出来る様になる事、ワタシも全力で手伝いますので頑張りましょう』
「魂の認識ってどうやってやるんだよ、そんなの考えた事もないぞ」
『大丈夫です、出来ればもっといいスキルが取得出来れば良かったんですけど、何とかなりそうなので任せて下さい』
「何とかなりそうって何?」
俺がスケさんの言葉に不安を感じていると。
『大丈夫です、リラックスして下さい、ワタシに全て任せて下さい』
そう言うとスケさんは、憑依を使って俺の身体の自由を奪った、どんどん不安がましていく。
「本当に大丈夫なのか?なんで俺に憑依を使ったんだよ」
『心配しなくていいです、すぐに済みますから』
そして、スケさんのその言葉と同時に頭に衝撃が走った、薄れていく意識の中で宙に浮くバットが見えた。
不思議と痛みはなかったので、無痛を使ってくれたんだと思うけど、なんでバットで殴られたのか後でちゃんと説明して貰おう。
朝、ダンジョンの中で目を覚まして頭を押さえて、スケさんには声をかけた。
「なんで、俺はバットで殴られたの?」
『いえ、その、マスターの記憶の中でもバットで殴れば幽体離脱が出来るってあったので』
「そんな訳ないじゃないか、漫画とかフィクションの話だぞ。
まさか魂の認識が、バットで幽体離脱で出来ると思ってたの?」
『いえ、バットはたまたまで、幽体離脱や臨死体験が出来ればいいと思ってました』
「言いたい事はなんとなく分かるけど、バットで殴られても気絶するだけだから。
今は何時?俺はどれくらい気を失ってたんだ?」
『今は、向こうの時間で6時半くらいです』
「急いで戻って、準備しないと仕事に出かける時間になっちゃうじゃないか。
なんで起こしてくれなかったんだ、早く戻ろう」
『いつになったら身体から幽体が出てくるのか待っていたんですけど、全然出てこないでこんな時間になってました』
バツの悪そうな声のスケさんは取り敢えず置いておいて、俺は部屋に戻ると汗を流して仕事の支度をする。
スケさんが淹れてくれたコーヒーを飲んで、仕事に出掛けた。
『魂の認識が出来るようになるには、どうしたらいいんだろうか?』
『もう一度、バットでで殴りましょうか?
もう少し強く殴ればちゃんと幽体離脱が出来るかもしれないです』
『俺じゃなかったら首から飛んでいく威力を、もう少し強くしたら死ぬと思う。
スキルで幽体離脱とか、それに近いスキルがあればいいんじゃないか』
『その手がありました、昇精か死墜でもっといいスキルを手に入れるつもりだったのに、ちょっと予想外の結果にショックを受けて、すっかり頭から抜けていました。
どうにか取得したスキルで、何とか出来ないかばかり考えてしまって』
『もういいよ、いいスキルがないか探して試してみよう、とにかく仕事が終わってダンジョンにいってからの話だな』
『はい、そうですね、スキルの事はワタシが調べておきます』
図書館について、スケさんは魂についての本を何冊か物色して、それを元にスキル探しをしている。
俺も仕事が終わったら、ダンジョンに行く前にスケさんと相談しながらスキルを考えた。
幽体離脱は普通にスキルにあって、殴られ損だった事にタメ息をついて、他にも何かないか確認してダンジョンに転移した。
今日は兎達はダンジョンにはこれないみたいで、召喚したら拒絶された。
スケさんと2人?でダンジョンを攻略する、スケさんが死精霊として具現化すると、人の形をした黒いモヤが現れて、念動やマジックハンドじゃなく黒いモヤ本体が虫型の魔物の相手をしていた。
倒し続けて周りに魔物がいない事を確認してから、まずは幽体離脱を取得して試してみる。
何か不思議な感覚だった、質量のない身体はフワフワと頼りなくて、どうやって動けばいいか分からなくてジタバタしてしまう。
それでも、何とか幽体になった身体の動かし方を覚えて、魂の認識に挑戦する。
幽体になったけど、魂というのとはなんか違う気がして、すぐに戻って身体に幽体を重ね合わせて身体に戻る。
剣聖が両親を誤魔化していられる時間は、後数日くらいなので頑張って魂の認識ってやつを出来る様にならないと。
その後も、口寄せとか胡散臭いスキルにも手をだしてみたり、色々と試したけど曖昧な条件はなかなかクリア出来なかった。




