無理はしないからな
やるしかないのか
俺は重い足取りで部屋に帰って来た、コンビニの弁当を食べて風呂を済ませ、まだ早いけど寝る。
気が進まないけど、帰り道でスケさんとの作戦会議も終わっている。
ポイントを集める為に、ダンジョンに転移するまで仮眠して朝まで入る事になった。
目標は、俺の能力値が全項目プラス赤ん坊から、せめてプラス成人にまでする事。
対吸血鬼に役に立つスキルを取得する、スケさんのレベルと念動スキルのレベル上げ。
ポイントはどれだけあっても足りない気がする、40のおっさんに徹夜はキツすぎる。
だから出来るだけ、早く寝て少しでも睡眠時間を確保したかった。
そして俺は、ダンジョンのスケさんの言った通り出入口の転移ゲート前に転移していた。
ちゃんと今回は靴を履いている、一応武器代わりにバットも持って来ている。
帰り道にホームセンターで買った安物だけど、何もないより良いと思う。
スケさんと相談して、転移ゲートから奥に進む事を決めたので、今までのみたいに手ブラにサンダルじゃ危ない。
ダンジョンは現実なのだ、娘を守る為の準備で大怪我したり、死んだら意味がない。
『準備は良いですか?、2階層に行ったら、3階層の出入口を探します。
探索時間は約6時間、1階層分で魔物の強さがどれだけ変化するかは分かりませんが、魔物が強くなった分だけ魔石のポイントも高くなるはずです。
より深い階層に行けば、それだけ多くポイントを稼げるので頑張りましょう』
スケさんはノリノリだ、俺は出来るだけ安全第一で進みたい。
「無理をするつもりはないぞ、ダメそうなら引き返して帰るからな。
低階層でもそれなりのポイントは手に入るし、そのポイントで強化しながら徐々に進めばいい」
『もちろん、マスターが危なくなる様な無理はしません。
しかし、時間がないのは事実です、前回の獲得ポイントは3時間ほどで、約400程度。
6時間で800位は稼げるでしょうが、マスターの能力を全項目成人レベルまで上げるのに、2000は必要になります。
スキル取得のポイントも必要なので、次の新月までに集めようとしたら間に合うかどうか‥‥』
なんだろう、実態のないはずのスケさんがチラチラと俺の様子を伺っている様に感じる、いつの間にそんな芸当を覚えたのか。
「わかった、出来るだけ頑張るよ」
『それでこそマスターです、一緒にワタシのレベル上げお願いします』
覚悟を決めて3階層へ、少し進むと見慣れたネズミが出てきた。
襲いかかって来たのを、タイミングを合わせて蹴り飛ばす、ネズミは壁に当たってヨロヨロと立ち上がった。
1階層のネズミなら、今ので倒して光に変わっていたのに少し強くなっている。
しかし、ヨロヨロで動きが悪くなっているのは間違いない、俺は近づいてバットをゴルフスイングしてトドメを刺した。
転がったネズミが光に変わって魔石が残る、魔石を変換したら1ポイント、1階と変わらない。
攻撃が2回必要だった事を考えると、効率が悪くなった気がする。
「1階層の方が良かったんじゃない?」
『まだ小動物型1匹です、階層が変わって別の魔物が出る可能性もあります』
「それもそうか、Gや昆虫型はスケさんに任せるなら、そっちの強さの検証よろしく」
『わかりました、右に進むと小動物型が2匹です、昆虫型の方はワタシが見つけ次第排除します』
スケさんの案内通りネズミを見つけて、ネズミが動き出す前に走り出して1匹を蹴る。
勢いにのった蹴りはネズミを強く壁に叩きつけて、ネズミは立ち上がる事なく光に変わる、もう1匹が飛び掛かってくるの避けて、着地した瞬間にバットを振り下ろす。
ネズミは2匹共魔石に変わった、1階層より少し強く蹴れば一撃で大丈夫そうだ、バットの威力は流石だと思う。
「ポイントはやっぱり1ポイントか‥‥」
『昆虫型も1ポイントでしたね、強さは少し強くなってました』
「いつの間に倒したの?」
『知覚範囲が広がりましたので、念動が届く範囲に入った時に潰させて頂きました』
「スケさんと念動のセットって、便利過ぎない」
『念動スキルのレベルが1なのが不満ですね、魔物を見つけても範囲に入るまで待たないといけません。
範囲に入って来るかは魔物次第なので、見つけても見逃すのがもどかしいです』
俺を誘導しながら進んでるから、Gを見つけても此方から念動の効果範囲に入る様には動けなかったのか。
「先にスケさんの念動スキルをレベル上げようか」
『いえ、マスターの能力向上を優先させましょう』
「なんで?、念動の効果範囲が広がれば効率が良くならない?」
『上がれば効率は良くなりますが、念動スキルはユニークスキルに分類されるのでレベルを上げるのに10000ポイント必要です』
「スケさんもユニークスキルだけど、100ポイントでレベル上がったよね?」
『ワタシのは名付けのバグですね、ユニークになっても必要ポイントは元のコモンのままなんです。
念動スキルは後回しです、マスターの強化が終わったらワタシのレベル上げもありますし』
スケさんの中で念動の優先順位は低いみたいだ、もどかしいけど困ってはいないんだろう。
「スケさんのレベル上がると、知覚範囲が広がる以外何かあるの?」
『スキルによってはレベルアップ時に技能を覚える事がありますが、ワタシの場合はスキルスロットが増えましたよ』
「スキルスロットって何?」
『ワタシがスキルを覚える事が出来る機能ですね、今は二つスキルスロットが空いています』
「それって凄くない?、何かスキル覚える?」
『そうですね、ワタシ自身がスキルを覚える事がユニークである理由でしょうね。
それと、今は新しいスキルを覚えるつもりはありません。
スキルが覚えれるといっても数は有限、覚えたスキルを消せるかも分かりませんし』
スケさんが少しドヤってる感じがする、確かにスキル選びは大事だな。
『最初はマスターの体力と筋力を上げましょう、それで探索が捗ります』
「わかった、ポイントは手に入れたら直ぐに割り振ろう」
体力にポイントを振って、少し体が軽くなった気がしながら歩き出した。
『次の角を曲がったとこに、小動物型の初めての魔物がいます』
そっと角を曲がって見えのは角の生えたウサギ、大きさはネズミより少し大きいくらい。
草食動物だと安心していたら、物凄い速さで突っ込んで来た。
「うお、危ない」
ネズミよりも速くて驚いたのもあり、避けるので精一杯で反撃は出来なかった。
『手伝います』
そういって、スケさんが念動でウサギの動きを止める。
「ありがとう、助かった」
俺は動きの止まったウサギにバットをフルスイングした、ウサギは地面を跳ねて転がって動かなくなる。
ウサギが光に変わって残された魔石はネズミのよりも一回り大きい、それでも4ポイント。
「やっぱり割に合わない気がする」
『問題ありません、魔物の数は1階層よりも多いですし、ウサギもワタシが手伝えば倒せます。
マスターの能力値が上がれば、効率は良くなるはずです。
今も倒した魔物のポイントは体力と筋力に振っています』
「本当だ、いつの間にか体力+1(73%)、魔力+1、筋力+1(51%)、知力+1になってる」
『どんどん行きましょう、今日中に全項目+4にします』
「わかった、でも、無理はしないからな」