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だから、条件を教えてくれよ

 「その為に企画は絶対に成功させたい、だから組織も辞めて仕事に集中してるんだ」


 重たい話の後の、ヤル気満々の剣聖に、俺の方が感情が追いつかない。


 それに剣聖から聞いていた話なら、別に組織を辞めなくても企画が成功するまで休む事も出来たはず、それくらいの自由は許されそうだし。


 「なんで組織を辞めたのか分からないって顔してるな」


 スケさんどころか剣聖にまで心を読まれた、スケさんは四六時中一緒だから仕方ないけど。


 「そんなに顔に出てたか?」


 「ずっとウサギを被っていた方がいいんじゃないか(笑)、隠し事には向いてないな。


 組織を辞めたのはケジメってやつだな、お金は仕事も始めてなんとかなるし、頭の魔道具もこれ以上期待は出来なさそうだしな」


 「いや、ウサギの被り物はもう捨てたから、あんなの持ってて捕まったら借金100億だぞ!


 俺は助けた側なんだぞ、本当なら表彰されたっておかしくないのにテロリストの主犯として指名手配とか納得出来んぞ」


 「あはは、災難だよな、たぶん庭番の仕業だと思うけど、頭も酷い事するよな」


 「全然笑えない、俺を仲間に入れたかったんじゃないのか?


 今の俺からの印象は最悪なんだけど、本当は処分しようとしてない?」


 「まぁ、邪魔になるなら処分もあり得るけど、勧誘する方法は好感度だけじゃないからな」


 「弱味を握るって事かよ、その方が裏組織らしい気もするけど、捏造された弱味ってどうよ」


 「お前は帰還者だからな、それだけの価値があるって事だろ。


 それに他の裏組織に比べたら、随分と庭番はマシな方だぞ、日本政府も公認だからな」


 剣聖がニヤリと笑うのに、やっぱり国にも絡んでる事にため息が出る。


 「俺達みたいなのって、知らないだけでいっぱいいるんだろうな、他にも裏組織とかはあるんだろ」


 「裏組織っていっても、全部が能力持ってるってわけじゃないし、国が抱えてる能力者だっている。


 正確な人数は分からないけど、覚醒者は300万人に1人って話だな。


 帰還者は1500万人に1人らしいから、自分の価値をちゃんと理解しろよ」


 「そんな事言われても、俺は普通に生きて行ければそれで十分なんだけど」


 「欲のないおっさんだな、その気になれば幾らでも普通の人より贅沢な生活が出来るんだぜ。


 例えば回復能力で偉い人間を治してやれば簡単に金儲け出来るのに、庭番で聖女にそういう仕事が来てたぞ」


 「そういうのは面倒くさい、1度治したら次から次と切りがなくなる、治さなくなっても文句を言う奴が出てくるんだ」


 「よく分かってるじゃないか、聖女も面倒くさそうに愚痴ってた事があるな。


 本当にやりたくない時は、頭が適当に断ってくれるから後腐れはないらしいけど、庭番の収入源の1つだから仕事は多いな」


 「お前の妹も世話になったんだよな」


 「そうだな、聖女には感謝してるぜ、料金は頭持ちだからって全力で力を使ってくれたらしいからな。


 でも、それからちゃんと働いて頭に金は返したぞ、貸し借りは出来るだけでしない主義なんだ」


 「その考えは偉いな、俺も貸し借りなしに憧れるけど、借りの方が多い気がする。


 剣聖にも借りがあるけど、返せる予定がないしな」


 「お前が俺に借り?何か貸したか?」


 「最初に襲ってきたから、会社帰りに相手させてるのはチャラだし、剣も壊れたら新しいのを渡してるからいいだろ。


 だけど、俺の事を黙っててくれた事と、顔見せして受け入れてくれた事は借りだと思ってる。


 結局、生きてたのはバレちゃったし、指名手配までされてるけど、俺に出来る事はしてやるつもりだな」


 「そんなに事で借りとか言ってたら、借金だらけじゃねぇか。


 気にするなよ、俺は俺のしたい様にしてるだけだ、貸したなんて思ってない」


 「俺なら、妹さんを治せるかもって言ったら?」


 剣聖の雰囲気が変わり、やや殺気の籠った目で俺を見た、剣を握る手にも力が入っている。


 「悪い冗談なら命はないぞ、俺も俺の家族もやっと覚悟が出来たんだ。


 目を覚まさないまま6年だ、そろそろ楽にしてやるべきなのかもって、だからせめて何を思ってるのか聞いてやりたくて、今の企画に取り組んでいる。


 下手な希望なんていらない、それが分かっても同じ事を言うのか?」


 怒らせるつもりはなかったけど、本当の殺気を放つ剣聖は別格だな、能力値が10倍近いのに、確実に切られる予感がする、しかし。


 「悪いな、俺も妹さんを直接見てないから絶対に治せるとは言えないし、見たらやっぱり無理ってなるかもしれない。


 そうしたら、せっかく覚悟したお前を余計に傷つけるかもしれないけど、もしかしたら治せるかもしれないんだ」


 「なんでお前も自信がない感じなんだよ、分かった1度だけ妹を見てもらう。


 ただし、両親にぬか喜びさせたくないから、面会時間外になるけど時間は大丈夫か?」


 一応、殺気は消してくれた剣聖が時間を確認してくる、何度も仕事終わりに戦って俺が10時過ぎには絶対に帰るのを知ってるからだ。


 「大丈夫だ、悪いな借りを返すっていいながら、無理矢理な感じになって」


 「別にいい、俺だけなら今さら一回くらいどうって事ない」


 6年の間に何度も色んな方法を試したんだろう、家族からすれば藁にもすがる思いもあったんだろう。


 『スケさん、本当に大丈夫なんだろうな、大丈夫そうに言ってるけど、ダメだったら剣聖落ち込むぞ』


 『見てみないと分かりませんけど、状況を聞く限りは可能性はあります』


 『聖女って人が全力でやって、魔道具まで使ったりしてるのに大丈夫か?』


 治せる可能性があると言い出したのはスケさんだ、それを剣聖に伝えただけで、本当に治せるのか俺も分からない。


 スキルについてはスケさんの方が詳しいし、スケさんには鑑定視もあるから信じるしかない。


 俺よりも剣聖の方が不安なはずだ、バレてるかもしれないけど、俺が不安な態度をとるわけにはいかない。


 剣聖の車に乗って、県内でも一番大きい病院に着いた、病院には庭番の息がかかっているのでどうしようかと悩んでいたら、剣聖に。


 「病室には防犯カメラはないから、俺が病室に入ったら、見つからないように来い」


 と言われて、スケさんの案内と隠密、透過を駆使して剣聖のいる病室に忍び込んだ。


 「本当に多芸な奴だな、いったい何個能力を持ってるんだ?」


 最後に窓を透過するのを見せたので、剣聖が呆れたように言ってくる。


 「能力の詳細は教えないけど、16個だな」


 「やっぱり帰還者は能力が多いんだな、10個以上あるのは勇者と暗殺者しか俺は知らないけど、3個以上が普通だからな。


 さっそく妹を見てもらおうか、もし本当に治せたら、俺はお前の言う事を何でも聞くぜ」


 「馬鹿かお前は、俺は借りを返す為に来たんだから、もし治ったら喜ぶだけでいいんだよ」


 俺は剣聖の肩を叩いて、剣聖の妹の横に立ってじっと見つめた、実際は俺と視覚を共有しているスケさんが鑑定視を使っている。


 『どうなんだ、スケさん』


 『予想通りでした、マスターが条件さえ満たせれば治せる可能性はあります』


 『そっか、その条件ってなんなんだ?」


 『レジェンド(伝説級)スキル、蘇生魔法を覚えます。


 その為に必要なスキルをダンジョンで取得出来る様に頑張りましょう』


 だから、条件を教えてくれよ。

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