この前はどうも
ごめん、キッカとオウカ、元嫁のノートPCでまた最初から頑張ってくれ。
「それじゃ、大事にするね」
「ありがとう、たまに見せにくるし、写真も送るから」
「ああ、よろしくな」
俺は玄関で2人と2匹を見送った、なんだかんだスケさんの寂しそうな感じが伝わってくる。
『寂しいからって、ゴーレムの操作をミスって見つかるなよ』
『そんな事で操作をミスするわけがないでしょう』
『寂しいは否定しないんだな』
『ほんの少しですが、寂しいのは本当なので』
アパートの部屋が少し寂しく感じるのと同じくらい、俺は兎達がやらかさないか心配だった、夜にはダンジョンで会うからもう一度釘を刺しておこう。
ダンジョン27階層で大剣を手に入れてから28階層に進み、巨人達と戦ってみる。
サイクロプスや巨大ゴーレムとは戦い慣れているけど、ギガンテスは初戦だし慎重に戦おう。
半日ぶりの兎達は元気にサイクロプスや巨大ゴーレム倒してくれているので、俺はギガンテスに向かって大剣を振り抜いた。
サイクロプスよりも再生能力は低いけど、岩のように硬い皮膚で防御力が高いはずのギガンテスの皮膚を難なく切り割いて骨で止まる。
素早く大剣を引き抜いて再生で筋肉から抜けなくなるのを防ぐ。
弱点をついて再生能力を無くす事が出来ないけど、再生を続けさせて魔力が尽きれば再生しなくなる。
常に魔力が供給されるダンジョン内では、供給量と元の魔力量を上回る速度でダメージを与えるのは大変だけど、手に入れた大剣ならなんとか出来そうだ。
障壁を使ってギガンテスの攻撃を避けながら、縦横無尽に切りつける。
少しずつ再生速度が落ちてきたから、俺の方は攻撃速度を上げるとギガンテスは再生出来なくなって光に変わった。
再生能力が低くても防御力が高くて弱点がないなんて、大剣の魔剣がなかったら倒せたかわからない。
多少の刃こぼれはくらいなら魔力を流して少しすれば直るし、大剣を手に入れていて良かった。
スケさんはリザードマンから奪った武器と、リビングアーマーから奪った大盾を上手く使って、兎達の援護をしながら、巨大な魔物を倒している。
念動とマジックハンドで攻撃回数が俺より多いのは理解出来るけど、普通の剣でギガンテスを切り裂けている、技術の差まざまざと見せつけらてしまった。
兎達もサイクロプスや巨大ゴーレムは相手にならない、キッカが波動咆哮でサイクロプスを弱点の眼を頭ごと吹き飛ばすと、巨体が倒れて光に変わる。
オウカはゴーレムの硬い身体を耳斬撃で易々と切り砕いて、バラバラにして光に変えてしまう。
28階層の探索も問題なさそうなので、次の探索で王城に向かおう。
兎達を帰還させる時にもう一度、向こうで大人しくしているように釘を刺す。
少し寝て翌朝には、ギプスに折れていない左腕を突っ込んで仕事に向かう、なんだか仮病を使っている気分だ。
図書館に着いて事務所で仕事をする、左腕を使えないだけで仕事がやりにくい。
本当は治っているから、気をつけないとつい使ってしまいそうになる。
「おはようございます、あ~、佐藤さん大丈夫ででしたか?」
「おはようございます、渡辺さん、大丈夫ですよ、ちょっと不便ですけど」
「ウサギの男の集団に襲われたんですよね、なんか半グレグループの新しい勢力なんじゃないかって噂があるみたいですよ。
いったい何がしたいんですかね、駅前で暴れて人を襲ったり、佐藤さん以外にも何人も被害者がいるんですよ。
警察に何人か捕まってても、構成員が何人いるか分からないみたいで全員が捕まるまで怖いですよね」
「すごい詳しいね、それ全部ネットとニュースの情報?」
「そうです、少し前に起こった倉庫の破壊もやっぱりウサギの男の仕業だっていうし。
顔が見えないからってやりたい放題ですよ、見かけたら近づかないですぐに通報ってニュースで言ってました」
『なるほど、これがスケさんの言ってた無視も出来なかったってヤツか』
『放っておけば、どんどん周りの監視の目が厳しくなりますからね。
それと変な噂が、権田達に伝わるとどんな行動を取るか分かりません。
こっちとの繋がりを詮索されれば、リッチの事や狼男の事もバレるでしょうね。
一応、権田には偽者の件は手を出さないように連絡してます』
『昨日の件で、ウサギの偽者騒ぎが収まればいいんだけどな』
『あの忍者2人がどれくらいの立場かによりますけど、流石に下っ端という事はないでしょうから、少しは収まるんじゃないですか』
「渡辺さんも、気をつけないとね」
スケさんと頭の中で会話をしながら、渡辺さんとの会話も続ける。
「ですね、帰りに駅前の近くは通るんで気をつけます。
佐藤さんが襲われたから、他の職員さんともなるべく一緒に帰ろうって話してて、佐藤さんも1人で帰ったらダメですよ」
「えっ、俺は大丈夫だよ」
「襲われた佐藤さんが何をいってるんですか、怪我もしてるのに全然危機感がないんですから」
「一回襲われたから次はないかなって」
「そんなわけないじゃないですか、宝くじだって当たる人は何回でも当たるんですよ」
そんな会話をしてる内に、他の職員も来て佐々木さんはギリギリで出勤してきた。
朝話していた通り何人かで帰る事になると、ついでに食事して帰ろうとなった。
結果、帰りが遅くなって余計に危ないんじゃないじゃかと思ったけど、その日はウサギの偽者は出て来なかった。
それから2週間、あれだけ頻繁に暴れていたウサギの偽者は現れなかった。
『あの忍者2人は、それなりの立場だったみたいだな』
『そうですね、今のところ誰かに直接会ってはいないですけど、電話でどこかに連絡はしてたみたいなので、それだけで組織の動きが変わるんですから発言力があるんでしょうね』
「ウサギの男も現れないみたいですし、そろそろ一緒に帰るのは終わりでいいですかね?」
館長の長田さんが、朝会で皆を見渡しながら質問をする。
「そうですね、まだウサギの集団が全員捕まったってニュースもやってないけど、ずっとこのままなのも大変ですし、終わりでいいと思います」
田中さんが同意して、それに俺も他の職員も同意する。
これで気を使わないで帰る事が出来る、病院の診断では打撲の方は全治2週間だけど、骨折は全治2ヶ月だ。
本当は使える左腕を使わないように演技するのは、仕事中だけで十分だ。
偽者の騒ぎも落ち着いてきたし、細身の男と接触してみよう。
馬鹿そうだったし、短気だったから上手くいけば何か情報を話してくれるかもしれない。
スケさんがずっとゴーレムで監視してるから、細身の男の行動範囲や行動パターンはある程度把握している。
ガタイのいい男にもゴーレムをつけてあるので、細身の男と話が終わったら、次に接触しよう。
仕事が終わってから、細身の男が表向き働いている会社に向かう。
忍装束を着ていない細身の男は、IT企業に勤める普通のサラリーマンだった。
会社から出て細身の男が、1人になったタイミングで声をかけた。
「『この前はどうも』」




