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また最初から頑張ってくれ

 『確かにまとまりがないな、変な名前になる自信あるかも』


 『馬鹿な事を言ってないで、病室に戻りますよ』


 スケさんから話を振ってきたのに、なんか俺が悪いみたいに話を打ち切られた。


 『取りあえずこれで、大分疑いは薄くなったと思います。


 真分身も解けてしまってるので、早く戻らないとまた疑われますよ』


 『完全に疑いが晴れたわけじゃないんだ』


 『さっきの男が残念なだけです、全員が馬鹿ではないでしょう』


 『それはそうだよな、あんなのばっかりじゃ組織なんて成り立たないよな』


 さっきの戦いで、病室に寝かせていた真分身は消えてしまっているから、忍者達に関係なく早く戻らないといけない。


 真分身は魔力で作ったクローンでスキル以外は記憶や思考、身体能力も全く同じ、2体同時に作る事が出来ない事が弱点だ。


 細身の方の最後の断裂は使われる前に、真分身を使って回避したから、病室の俺は消えてしまった。


 死体を調べられたり、魔力が切れて消えてしまったらどうしようか悩んでいたら、ガタイのいい方が闇魔法みたいな能力で消してくれたから助かった。


 元々は真分身を使うつもりはなかった、適当に戦ったら姿を消して別人と思わせ、戦いのどさくさに紛れて、新しく改良したゴーレムを付ける事が出来れば良かった。


 たまたま細身の方が短気で、死んだ事にした方が動き易いと思って作戦を変えて上手く行った感じだ。


 ゴーレムは細身の方にちゃんと付けれたし、今の所は運も味方して順調にいってる。


 俺はそっと病室のベッドに潜り込んで、朝まで眠りについた。


 翌朝、退院手続きをして帰る時に娘が迎えに来てくれた、折れた左腕を心配そうに眺めて体が痛くないか聞いてくる。


 実はもう治っているので、心配してくれるのが嬉しいのと同時に申し訳なく感じる。


 家まで一緒に帰ってくれると言われたが、兎達が居るのでお断りしようとしたのに、夜勤明けの元嫁まで来て変な疑いをかけられたので、一緒に帰る事になった。


 スケさんはこういう時には助けてくれない、得に今は共感視を使ってゴーレムを通して情報収集してるので静かだ。


 「怪我して大変だから手伝ってあげようっていうのに、家に来ないようにするなんて怪しいよ」


 「まぁまぁ、九郎だってまだ若いんだから隠し事ので一つや二つくらいあるわよ。


 でも、もし彼女とかがいるなら、これから誘い難くなるかな」


 「だから、そういうのじゃないって言ってるだろ。


 凛さんも一つ上なだけで年寄りぶらない、見た目は全然俺より若く見えるんだから。


 凛さんの方こそ、なんで新しい彼氏の一人も作らないのか不思議だよ」


 「じゃあ、なんで最初について行くのを断わったのさ、ちょっと前から何か感じとか変わったし」


 「それは私も思ったぞ、前より少し若くなったというかなんというか」


 「な、何も変わってないだろ」


 そんな会話をしながら部屋の前に着いて、先に部屋を片付けると言ったのに2人は待ってくれなかった。


 「ちょっと待って‥‥‥」


 無理矢理入って来た2人の目の前に、玄関で迎えに出て来た兎達が首を傾げて座っている。


 「「かわいい」」


 2人に抱き上げられる兎達、兎達の素早さで逃げ切れないわけないので、普通の兎のフリをしてくれたんだろう、本当に賢い兎達だ。


 「お父さん、この兎どうしたの?この前来た時は居なかったよね?」


 「最近飼ったのか、名前は?」


 兎達は2人に抱かれながら愛嬌を振り撒いている、どこであんな仕草を覚えたんだろう。


 「美月が抱いてる白い方がキッカ、凛さんが抱いてる黒い方がオウカだよ。


 先月の始めくらいから飼い始めたんだ、このアパートはペット禁止だから隠してたんだ」


 「そうなんだ、お母さん、家ってペットOKだったよね?」


 娘が少し考えて元嫁に確認する、いくらペット可でも兎達は飼えないと思うけど。


 「ペットは問題ないけど、どうするつもりなの美月?」


 「このアパートが本当はペットが飼えないなら、家で代わりに飼えばいいかなって」


 やっぱりか、そう言うんじゃないかと思った、俺は元嫁と顔を見合わせる。


 「いや、それは」


 「なんで?お父さんの所は本当は飼っちゃダメなんだから、家で飼った方がいいじゃない。


 この子達いい子だし、私ちゃんとお世話するよ」


 娘が言ってる事も間違ってはいない、ちゃんとお世話をするかは置いておいて、元嫁の家で飼ってくれるなら譲った方がいい。


 ただし、それは兎達が普通の兎だったらの場合だ、元嫁からは俺に任せるというアイコンタクトが飛んできた。


 『スケさん、どうすればいいと思う?』


 『マスター、ワタシは忙しいんですけど』


 『それはわかってるけど、キッカとオウカを娘が飼いたいって、断る理由が思いつかないんだよ』


 『聞こえてましたから知ってます、別に預けてもいいんじゃないですか?』


 『キッカとオウカは普通の兎じゃないんだぞ、何か問題があったらどうするんだ』


 『大丈夫ですよ、キッカもオウカも賢いですし、力の使い方も上手です。


 逆に美月様や凛様の近くにいたら、いいボディーガードになりますよ。


 2匹は召喚の魔物なんですから、帰還の場所を決めておけば、いつでも喚び出せます』


 『スケさんはキッカとオウカを可愛がっていたから、反対すると思っていたのに』


 『弟子の旅立ちは快く見送るものです』


 とにかく、スケさんは預けるのに賛成みたいだ、元嫁も俺に任せるスタンスの割にはオウカを離そうとしてないし。


 俺とスケさんの相談は俺が悩んでいるように見えているんだろう、娘の視線が不安そうだ。


 「わかった、俺の代わりキッカとオウカをよろしく頼むな」


 「やったぁー!ありがとうお父さん、お母さんもありがとう」


 娘が喜びながらキッカを抱き締める。


 「美月、そんなに強く抱き締めたら、キッカが可哀想よ」


 兎達はそれくらいは平気だけど、スキンシップの加減は2人に任せよう。


 「キッカ、オウカ、美月と凛さんを頼むな」


 俺がそう言うと、キッカとオウカが頷いてそれぞれ、娘と元嫁の耳の裏に鼻を近づけた。


 『契約を更新したようですね、美月様と凛様の所にキッカとオウカの意思で派遣出来ます。


 やはり賢い子達です、基本は召喚された時にいた場所に帰還しますけど、何かあれば美月様と凛様を守れる様にマーキングしたんでしょう』


 『そんな事も出来たんだな』


 『普通の召喚の魔物には出来ませんよ、キッカとオウカが優秀なんです』


 間違ってないけど親バカ発言だな、ちょっと寂しくなるけど、ダンジョンに行く時は召喚するし、娘と元嫁の安全は守られるし、良かったのかな。


 「あっ、キッカとオウカの遊び道具だから、これを持っていってくれ」


 思い出して古いパソコンを指したら、2人から白い目で見られた。


 「お父さん、なんで兎がパソコンで喜ぶのよ」


 「九郎、私もそれはないと思うわ、帰りにペットショップに寄って何か探すから大丈夫」


 「いや‥、本当にキッカもオウカも、パソコンが気にいってるんだって‥‥」


 俺が食い下がるから。


 「わかったわ、私の使ってないノートPCがあるから、それを見せてあげる。


 流石にそんな重そうな物持って帰りたくないわ」


 言いたい事は分かるけど、俺のパソコンは兎達が少しずづ、自分用にアップデートしてたから兎達も少し悲しそうだ。


 ごめん、キッカとオウカ、元嫁のノートPCでまた最初から頑張ってくれ。

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