独り言です
「えっ、なんでそんな事に‥‥」
『ワタシのせいですね、ダンジョン側のスキルを取得したので、マスターとダンジョンの繋がりが強くなりました』
「そうなんだ、仕方ないの‥‥かな」
『ワタシとしては、マスターにダンジョンでポイントを稼いで貰ってスキルレベルを上げて欲しいですね。
いつまでも、狭い知覚範囲では不便ですから』
「気楽に言われてもな、昨日は夢だと思ったから平気だったけど、魔物を殺すのとか抵抗が」
夢だと割り切れば平気だけど、現実だと思うと気持ちがついて来ない。
しかも、いきなり転移されたせいで裸足だ、ネズミもGも裸足で蹴って、裸足で踏まないといけない。
『昨日まで出来ていたなら、今日も大丈夫です、それに進まないとかえれませんよ』
そうだった、今日は引き返す階段もない、帰るにも出口を見つけないと。
「やるしかないのか」
俺は大きなため息を溢した、スケさんは記憶は共有しても気持ちは共有してくれない。
『ワタシも手伝いますから、どんどん進みましょう』
「出来たら、Gはスケさんが倒してくれますか?」
『昆虫型の魔物ですね、マスター達に嫌悪されていますが、何故そんなに嫌うのか分かりませんね』
「そこら辺は刷り込みとか、思い込みとか色あるんだよ」
『固定観念ですか、大丈夫です、昆虫型はワタシが対処します』
良かった、取りあえずGを裸足で踏みつけるのは回避出来た、ネズミを蹴るのも嫌だけど、全部任せるのも申し訳ない。
『後から、昆虫型が来ますね、潰します』
スケさんの宣言と同時に振り返ると、Gが潰れて気持ち悪い体液が‥‥。
本当に任せて良かった、少し経つと消えるとはいえ裸足でアレは無理だ。
「スケさん、Gが来るのよく分かったね」
『当然です、知覚範囲なら360度死角はありませんから』
「この洞窟の幅なら、スケさんの索敵ってかなり有利じゃない?」
『そうですね、たぶん探知スキルの様なモノがアシストスキルに含まれていたんでしょう。
でも足りません、マスターの世界ではワタシの知覚範囲は狭すぎます、まるでマスターの部屋です』
「さりげなくディスるなよ」
とにかくスケさんが有効なのが分かったから、洞窟の様なダンジョンを進んで行く。
マッピングもスケさんがしてくれるから、迷いながらも同じ道を何度も回る心配はない、有能過ぎる。
俺もネズミを何匹か倒している、出来ればやりたくないけど、見つかると襲って来るんだから仕方ない。
『昨日よりも多くポイントが貯まりましたね、どうしますか?』
「もうそんなに貯まったの?、昨日よりも時間は経ってないけど」
『はい、昆虫型はワタシが倒してますし、小動物型とも多く遭遇する道を選んでますから』
有能は撤回します、スケさんはポイントジャンキーです。
『それで、ポイントはどうしますか?出来たら、ワタシのスキルレベルを上げて欲しいです。
現在118ポイントあるので、100ポイントでレベルが上がります』
「わかった、いいよスケさんのレベル上げて、ここまで楽出来たのはスケさんのお陰だし。
残りのポイントは貯めておいた方がいいの?」
『新しいスキルが欲しいなら貯めるのもいいですが、ワタシはマスターの能力の向上をオススメします』
「能力の向上?」
『1ポイントで、前に説明した体力、魔力、筋力、知力を1%向上出来ます』
「それって、100ポイントあったら能力が倍倍で増えていかない?」
『そうですね、最終的にはレベルアップよりも大変な事になりそうですが、ポイントが反映されるのはマスターの後付けステータスなので大丈夫です。
現在のマスターは全項目に+1の状態なので管理機構がミスに気がつくのはずっと先でしょうね。
気がつかれても、マスターからワタシを取り上げる事は出来ないので、放置で問題ありません』
「結構、管理機構ってミスが多いな、それで後付けの+1ってどんな感じなの?」
『ステータスが1の人なんて普通はいないので、一番近いのは生まれたての赤ん坊ですね。
生まれたての赤ん坊でも、才能がない項目以外は2~5はありますけど』
俺って今赤ん坊の力を借りてる感じなのか、確かに倍倍で増えてもそれなら、暫くはそんなに凄い事にはならないか。
『それでも、プラスには代わりないので、能力を向上させるのはオススメです』
そして、俺はスケさんに勧められて、体力に10、筋力に8を振り分けた。
出口が見つかるまで、ポイントは取得する事になるし、ポイントの優先はきっとスケさんのレベル上げになると思う。
ダンジョンに転移させられてから、3時間くらいでやっと出口が見つかった。
あれから、更に271ポイント手に入れて、200ポイント利用して、スケさんがレベル3に上った。
俺の能力にも残りを使って、体力+1(50%)、魔力+1、筋力+1(39%)、知力+1になっている。
ほとんど実感はないけど、気持ち体が軽い様な気がする。
そして、俺は念願の出口を通って部屋に戻った、3時間歩き回って足の裏は真っ黒で、風呂に入って着替えをして、床を掃除した。
時計を見て午前4時だった時は悲しくなった、少し寝たら起きて図書館に行かないといけない。
スケさんは、知覚範囲が広くなったと喜んでいるが無視して寝よう、どれくらい広くなったのかきになるけど、俺にはスケさんと違って睡眠が必要なのだ。
翌朝、久しぶりに目覚ましで起きた、スマホのアラームをセットしておいて正解だった。
朝のコーヒーは、スケさんが用意してくれる、俺より美味しいし、その点は今までよりも楽になったと思う。
しかし、これから毎晩ダンジョンに転移させられるのか、だとしたら体か持たないぞ。
「どうしようかな‥‥」
『マスター、大丈夫ですか?』
「これから、毎晩ダンジョンに転移させられると思うと心配でな」
『転移先はダンジョンに最後にいた場所ですから、次から帰ろうと思えばすぐに帰れますよ。
今回はトイレとの繋がりから、マスターへの繋がりに変わったので出口を探さないといけませんでした。
それと出口は次の階層への入口にもなってますので、帰りたいと思えばダンジョンに転移する直前の場所に先に進みたいと思えば次の階層に行きます』
「帰ろうと思えば帰れるのは、安心したけど、俺ってずっとこのままなの?」
『ダンジョンをクリアするまでは、このままでしょうね。
大丈夫です、マスターにはワタシがついています、一緒に頑張りましょう』
俺は働く前からどっと疲れた気がしたけど、机の上のスマホで時間を確認して慌てて、コーヒーを飲み干して出掛けた。
バスで娘からのメッセージを確認、今日は小言じゃなく昨日のお礼が書かれていて、そのメッセージのお陰で、図書館に着くまでに気持ちを落ち着かせる事ができた。
事務所で作業をしていると、スケさんが部屋よりも多い本の量に驚いて。
『気になる本があったら、読んでもいいですか?』
「今はダメ、帰りに借りてあげるから我慢して」
と、会話をしていると。
「おはようございます、佐藤さん、今誰かと話してました?」
「おはようございます、渡辺さん、えーと、俺の独り言です」