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背伸びをして出掛けた

 「スケさん、身体の調子がおかしいんだけど」


 『健康状態に問題はないと思いますが‥‥』


 「解ってるはずだよね、なんで教えてくれなかったのかな?


 スケさんがちゃんと教えてくれたら、朝、バスの手摺を壊さなくて済んだと思うんだ」


 『それは老朽化していたと、バス会社の方も仰ってましたよ‥‥』


 「なんで言い逃れが出来ると思ってるんだよ、ステータスは俺にも見れるんだよ」


 『ワタシは悪くありません、約束を守っただけです』


 「約束?」


 『マスターが危なくなったら、ステータスを上げる約束でした』


 確かにそんな約束をしたような気がする、でも。


 「俺のステータス全能力値+4096になってるんだけど、呪魔法を使っても+40だぞ。


 そりゃ、手摺を壊すし、グラスも割れるよ、あの時は酔ってたし、権田に動揺して力加減を間違ったと思ったけど。


 誰かを怪我させてからじゃ遅いんだからな」


 『そうですね、ワタシが間違っていました、責任を取ってワタシも呪魔法を取得します。


 効果はマスター程じゃないですが、100分の1の10分の1で、マスターのステータスになるはずです』


 スケさんのスキルスロットは有限、スケさんはスロットを無駄にしない様にスキルを選び、ユニーク(固有級)で揃えている。


 そんなスケさんが、レア(希少級)の呪魔法を取得するって言うなんて、俺も取得してるので俺のステータスを下げる以外の意味はない、本当に反省しているのかな。


 「ちゃんと反省してるならもういいよ、俺が力加減を気をつければいいんだし。


 呪魔法以外でも、ステータスを下げれるスキルを見つければいいんだよ」


 俺がそう言うと。


 『実はもうスキルは見つけてあります、ワタシとしてはあまりオススメ出来ないスキルですが。


 ポイントも足りますし、取得しますか?』


 と返ってきた、ものすごく対応が早い、あらかじめ用意していたとしか思えない、反省は気のせいだったようだ。


 「オススメ出来ないってなんで?」


 『呪魔法と違って下がったステータスが元に戻らない、使い捨てみたいなスキルなんです』


 「そんなスキルもあるのか、別に俺はステータスが戻らなくてもいいんだけど」


 『マスターならそう言うと思ってました』


 俺はスケさんが見つけてくれたレアスキルサモンエッグ(召喚たまご)5000を取得する事にした。


 「召喚系スキルで少しポイントが高いけど、サモンエッグってレアなんだな」


 『召喚魔法はユニークですよ、サモンエッグとは全然違います。


 召喚魔法は召喚数✕レベル数の、契約を結んだ魔物を喚び出す魔法です。


 召喚者の能力合計値+10%と同じ能力合計値までなら好きな魔物を召喚出来て、高ランクの魔物ほど契約は難しくなります。


 契約の為の召喚は1日1回しか出来ませんが、何度でも召喚が出来ますし、契約後に解約も可能です』


 「良い事ばかり並べ立てて、まるで保険の勧誘か、結婚相談所みたいに聞こえるな」


 『スキルにデメリットなんてないのが普通なんでず、スキルにデメリットがあるのは、スキルの等級以上の効果がある場合が殆どです』


 「サモンエッグはレアだからデメリットがあるって事か」


 『サモンエッグはデメリットだらけです』


 俺はスケさんの説明が終わる前に、サモンエッグを使ってみた。


 手のひらの上にソフトボールくらいの卵が現れ、何をすれば孵るのかが自然と理解出来る。


 下がったステータスが戻らないと言っていたのは、能力値を糧にして卵が孵るからだろう。


 卵が俺からどんどん能力値を吸収していく、あれ、なんだか目の前が真っ暗に‥。


 『‥‥ター、‥スタ‥、だ‥‥うぶ‥‥‥か?


 マスター、大丈夫ですか、しっかりして下さい』


 頭の中に響くスケさんの声で目を覚ます。


 「あれ、いったい何が?」


 『マスターは本当に馬鹿なんですか、なんで最後まで話を聞かないで勝手に召喚したんですか。


 しかも、止める間もなく能力値を全部注いでしまうなんて』


 目を覚まして寝ボケた返事をした俺は、スケさんにすごい怒られた。


 「全部?」


 ステータスを確認すると能力値は全部+0になっていた。


 『後付けステータスじゃなかったら、死んでましたよ、ワタシの想像を超える馬鹿でしたね、マスターは!!』


 危なかった、40男がアパートで孤独死なんて笑えない。


 「本当にごめん、俺が死んだら、スケさんも消えちゃうもんな。


 それで、問題の卵はどうなった?」


 『そういう事じゃないんですが、もういいです。


 卵なら、マスターの足元にありますよ』


 なぜか不機嫌さが増したスケさんに言われて足元を見ると、卵がガタガタと震えていた。


 「なにこれ?何が産まれてくるんだ?」


 『わかりません、サモンエッグから出てくる魔物はランダムなんです。


 糧にした能力値が多い方が高ランクの魔物が産まれ易いらしいですけど、ハズレもあるみたいです』


 「ハズレの魔物ってなんだよ、ガタガタしてるのは産まれそうなんだよな?」


 『それはマスターが能力値を注ぎ過ぎたからです、全能力値16384ですからね、最上級の探索者が命をかけてサモンエッグなんて使わないので震えてるんじゃないですか』


 「じゃあ、いつ産まれるんだ?」


 『能力値を注いでから1日です、明日の夜には孵ると思います。


 それよりも早く能力値を上げた方が良いですよ、今のマスターは、只のおじさんですから』


 「確かに身体か重い、これが元の俺なんだろうけど少しは+能力値があった方がいいな」


 『いえ、せめて20階層を攻略した時の能力値が必要です』


 「なんでだよ、せっかく能力値を下げたのに」


 俺がそう言った瞬間、目の前の景色がダンジョンに切り替わった。


 そして、俺を見下ろすサイクロプスとチョロチョロと舌を出しているヒュドラ。


 一瞬で血の気が引いていくのが分かる、急いで能力値を+512まで上げて、サイクロプスとヒュドラと戦った。


 障壁を利用して立体機動をして、サイクロプスの目の前まで間合いを詰めて、斧の一振でサイクロプスの目を切り裂く。


 暴れ回るサイクロプスをヒュドラに誘導して、サイクロプスがヒュドラを棍棒で叩き潰す間に、次々に重力の魔眼でヒュドラの首の動きを止めていく。


 ヒュドラの全ての首を斧の間合いに固定して、数振りで再生する前に切り落とし、ヒュドラを倒して。


 残ったサイクロプスの頭上まで障壁を駆け上がり、斧で頭を断ち割った。


 サイクロプスとヒュドラが光に変わっていく、ダンジョンの20階層、階層ボスの前に転移する事をすっかり忘れていて焦った。


 ポイントも余っていたし、能力値を上げるのが間にあったから、サイクロプスとヒュドラを倒す事が出来た。


 能力値が低いとスケさんも戦いを手助けする事が出来ない、俺とスケさんの能力値は共有してるからな。


 今日は色々と疲れたので、ボスだけ倒して部屋に帰って、まだガタガタと震えている卵をタオルに包んで押し入れにしまった。


 翌朝起きて、いつもの様にコーヒーを飲みながらスマホを確認。


 娘のメッセージを読んで癒され、身体の調子を整える為に背伸びをして出掛けた。

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