ファンタジーは身近に潜んでいたようだ
これは、完全にスケさんにハメられたな。
物陰に隠れてスケさんを問い詰める、スケさんは驚く程あっさりと白状した。
『見て下さい、ワタシの自信作です』
俺の目の前に、体長2㎝の透明なゴーレムがスケさんの代わりに胸を張っている。
この大きさが、スケさんが作れるゴーレムの最小のサイズらしく、体はガラス製でほぼ透明、目を凝らさないと見えない。
スキルを取得した日から試行錯誤して作ったガラスゴーレムで、すぐに一ノ瀬少年達を捕捉、観察をし。
一ノ瀬少年達が言っていた、特別な方法が練習方法ではなく、薬によるモノだと突き止めた。
そして、スケさんの興味は薬に移り、一ノ瀬少年達からゴーレムを使って薬を盗みだして調べた。
結果は、体内の魔力を無理矢理使って、脳のリミッターを外し身体能力を向上させる薬で、依存性まであり、魔力が枯渇すれば死んでしまう、ヤバい薬だった。
一ノ瀬少年達から、魔力の反応があった謎は解けたが、次は誰が薬を作ったのかが知りたくなって調べ始め。
ゴーレムはスケさんの好奇心を満たす為に、増産されて、現在は34体がスケさんの知覚範囲外を動き回っている。
薬の製作者はなかなか見つからず、一ノ瀬少年達を見張らせていたゴーレムに残りの薬も全て盗み、依存性を利用して、薬の出所を探ろうとしていた。
一ノ瀬少年達は薬が無くなって焦り、薬のお金を工面する為に万引きをした所を、たまたま俺が通りかかったらしい。
本当にたまたまか怪しいけど今は置いておこう、まんまと一ノ瀬少年達を囮に使って、今、薬を配っていた人達の所に来たと。
『はい、たった34体では情報を集めるには足りず、彼らに囮になってもらうしかありませんでした』
『スケさんの知覚範囲と、それ以外をカバーするゴーレムが34体もいたら十分だと思うけど』
『見つからないをコンセプトに作ったので、小さい分移動範囲が狭いんです。
だからもっと数を増やし、移動範囲を改善するつもりです』
スケさんの情熱が怖い、ゴーレムも一長一短があるみたいだ。
『クリエイトゴーレムってこんな小さなゴーレムも作れるんだな』
『それは極魔導のお陰ですね、極魔導は魔法の改良スキルなので、色々と役に立ちました』
『なにそれ、物凄いチートじゃない?』
『単体では何の意味もないスキルですし、改良にもポイントを消費しますので、そこまで万能ではないですよ』
またポイントを使ってたのか、でも、コストがかかるスキルなんて普通の人は使えないかもな。
『それで、これからどうするつもり?』
『彼らを助けますよ、ワタシのゴーレムの操作の練習の役にたった上に、囮にまでなってくれたんですから。
助けた後に少し話をきいたら、帰してあげますよ』
『何を聞くんだよ?』
『人体実験をするつもりはないので、薬を使用した感想を聞いて、強化薬の中毒も何とかしようと思いまして』
薬とかテレビの中だけの話だと思っていたのに、こんな身近な所で被害者がいるなんて。
『助けるのはいいけど、俺こんな事になってると思わなかったから、仕事帰りのままで身バレとかしたくないんだけど』
『仕方ないですね、少し待って下さい』
そういうと、フヨフヨとウサギの被り物が浮いて近づいて来た。
『これを被るの?、こんなのよくあったな』
『イベントか何かで使ったんじゃないですか、他にもパンダとクマがありましたけど』
『ウサギでいいよ‥』
どれを選んでも同じだし、取りあえず顔が隠せればいいかな。
俺はウサギの被り物を受け取って被った、埃っぽいしカビ臭い、これ体に悪くないかな、想像以上に視界も悪いし。
我慢できなくて、洗浄スキルを1000ポイントで取得して、ウサギの被り物を綺麗してしまった。
突然ウサギが現れてざわつくゲームセンター内。
「誰だテメぇ、変なモン被りやがって」
一ノ瀬少年達を囲んでいた1人が、近づいてきてウサギに手をかけた瞬間、俺は足を払って転がした。
受け身も取れずに腰を押さえる男を踏みつけて、前に進む。
そして問答無用で全員を叩きのめした、最後にどこから持ち込んだのか分からないソファーに、座っていた男の襟を掴んで立たせて。
「『聞きたい事があるんだけど、これ以上痛い思いしたくなかったら、素直に教えてくれないかな?』」
スケさんが考えたセリフを伝える。
「こんな事して、ただで済むと思ってるのか?」
「『誰かの後ろ楯でもあるのか?』」
「はははっ、信じられないだろうけど、俺らには魔法使いがついてんだよ」
魔法使いって、あの魔法使い?、ハリー・○ッターで有名な魔法使いか。
「『魔法使いか、嘘ついても良い事ないぞ』」
「嘘じゃないさ、この薬だって、その魔法使いがくれたんだからな」
「『この薬だけで、魔法使い?、ただの麻薬じゃないか』」
「それは粗悪品だろ、本物はそんなもんじゃない、起きろお前らぁ」
男が取り出した薬を叫びながら飲み込んだ、男の声に反応して、倒したはずの奴らが起き上がる。
「『それが魔法使いの証明か』」
男達の目が赤く光る、まるで魔物だ、理性が残っているように見えない。
隅で一ノ瀬少年達が震えている。
「そこのお前達そこから動くなよ、怪我しても責任は取らないからな」
大きな声で、動かないように釘を刺す、一ノ瀬少年達は声も出さずに首を縦に振っていた。
『残念ですが、もう一度倒さないと、話も聞いてくれそうにないですね』
唸り声をあげて襲いかかってくる男達は、痛みを感じないのか倒すのに骨が折れる。
文字通り、両手両足の骨を綺麗に折って、動けない様にしてやった、痛みを感じなくても、これなら問題ない。
「お前、なに者なんだよ、ゾンビを使った奴らをこんな簡単に倒すなんて」
「ただの知りたがりのマスターだ」
『皮肉ですか?、しかし、魔法使いが作った薬がゾンビですか、笑えませんね』
「薬に選ばれないとゾンビみたいになるからな、だけど、俺は違う、薬に選ばれた人間なんだ」
『たぶん、他より少し魔力が高かっただけでしょうね、それだけで選ばれた人間とか憐れです』
スケさんの言葉とは裏腹に、本当に選ばれたみたいにゾンビ人間とは違って、理性を持ったまま体か一回り大きくなって、服が筋肉の膨らみで破けている。
「どうだ、魔法使いにもらった薬の力は」
「正直、あまり羨ましくはないかな、俺はゾンビにも化け物にもなりたくないし」
「馬鹿が、俺はウサギだろうと全力で叩き潰す」
そう言って、太くなった腕を全力で振り下ろしてきた、俺はそれを軽く受け止めて、がら空きの腹に拳を叩き込んだ。
男が胃の中のものを吐き出しながら転げ回る、理性と一緒に痛みも残っていたみたいだ。
ゴロゴロと転がる男股がって動きを止める、上から見下ろして。
「『これ以上痛い思いをしたくなかったら、知ってる事を全部話せ』」
男は今度こそ本当に怯えて、知ってる事を話し出した。
吸血鬼の次は魔法使いか、俺が思ってるよりもファンタジーは身近に潜んでいたようだ。




