16階層に進む事にした
好奇心に火を着けた事だけが心配だった。
『特別な方法ってなんなんでしょうね』
案の定、スケさんはあの高校生達が言っていた話に興味を引かれたみたいだ。
「効率的な練習方法を、誰かが教えてくれたんじゃないの」
『そんな訳ないでしょう、マスターは本当に馬鹿なんですか』
「馬鹿ってなんだよ、高校生なんてちょっとした切っ掛けで成長する事もあるだろ」
『成長期に一気に記録が伸びる事はあるかもしれませんね、でも、それには努力も必要でしょう。
マスターには、彼らが努力をしている様に見えましたか?』
「見えなかったな」
『そして彼らから使えないはずの魔力の反応、特別な方法と関係がない訳ないです』
「それでどうしたいの?」
『面白そうなので調べましょう』
やっぱりそうなったか、気になるって言ってたから間違いないと思ってた。
「調べるってどうやって?」
『明日も試合があるって、織田少年が言っていました、競技場を見張っていれば、あの3人に会えるはずです』
「残念だけど、明日は仕事だから無理だな」
『そうでしたね、マスター無しではせっかくレベル10になって知覚範囲が広がったのに、自由に調べる事も出来ないなんて‥‥』
念話を取得する時に、スケさんは自分のレベル10まで上げて、知覚範囲は約10㎞になったらしい。
10㎞もあれば俺の周辺に死角はないのに、スケさんはそれでは満足出来ないみたいだ。
「次の休みに付き合ってあげるから、それまで我慢してよ」
『新しいスキルを取得して、何か出来ないか考えます、ポイントを使用してもいいですか、マスター」
「俺が魔眼を取ろうとしたら、無駄使いだって反対したのに」
『ワタシのは無駄使いじゃないですが、仕方ありません、マスターも好きな魔眼を取得して下さい』
やった、スケさんの許可が取れた、どんな魔眼がいいか迷うな。
スケさんが選ぶスキルが、無駄じゃなかった事を証明される前に選ばないと、またダメ出しされるかもしれない。
格好よくて、強くて、俺でも使いこなせる魔眼がいいな、地味過ぎてもスケさんに馬鹿にされそうだし。
俺は唸りながらどんな魔眼にするか悩む、別に魔眼以外のスキルでもいいんだけ、攻撃魔法とかはなんとなくピンと来ない。
この日は軽くダンジョンで身体を動かして、満足した気分で眠りについた。
翌朝、スケさんはもうスキルを取得したらしく、不慣れなスキルを使いこなす為に、朝のコーヒーを久しぶりに自分で入れた。
俺はまだどんな魔眼にするか決まってないのに、スケさんの行動力には頭が下がる。
どんなスキルをどれくらいのポイントで取得したのか聞いてないけど、俺の分のポイントは残してくれているはず。
娘からはまだ素っ気ないメッセージが続いているが、今だけは新しいスキルのお陰で暗くならないですみそうだ。
昨日はお疲れ様とだけ、返事を返して支度をして家を出る、バスの中でも仕事中でも考えて、あっという間に帰りの時間が来て、やっと取得する魔眼が決まった。
取得するのは重力の魔眼、石化や閃光も格好いいけど、応用力がないし間違った発動した時が怖い。
その点、重力の魔眼は発動しても周りからは気づかれないし、応用力にも期待が出来る。
取得ポイントが50000ポイントと他の魔眼より高いのは、それだけ強スキルの証拠だと思う。
ちょっと高ポイントなので、スケさんが自分のスキル操作に気を取られてる内に、さっさと取得してしまう。
無事に俺の魔眼は取得出来た、そして、残ポイントが10000ポイントを切っていたのに驚いた。
確か残ポイントは300000ポイント以上あったはずなのに、俺が50000ポイントだからスケさんが250000ポイント近く使ったという事だ。
せこいと思われても、俺がドキドキしながら高ポイントの魔眼を取得したのに、スケさんの方が多くポイントを使ってたなんて。
朝は自分の事で、スケさんがどんなスキルを取得したのか聞き忘れたけど、ちゃんと説明して貰わないといけない。
俺は部屋で帰ってスケさんに話しかける。
「スケさんは何のスキルを取得したの?」
『マスター、急になんですか、ワタシは今忙しいんですが』
いつもより反応が悪いスケさんに、俺はもう1度同じ質問をする。
「だから、スケさんは何のスキルを取得したの?」
『そんな事ですか、ワタシはクリエイトゴーレムと極魔導というスキルと、神眼をレベル6に上げましたよ。
答えを聞いて唖然とする、ユニークスキルを二つも取得して、神眼を2レベルも上げるなんて、スケさんだけズルい。
俺だって、もう1つくらい魔眼を取得しないと不公平だ、目は二つあるんだから、左右違う魔眼を取得出来たら格好いいじゃないか。
ポイントがないから、今日の夜はダンジョンでポイントを稼いでやる。
強くなりたいわけじゃないし、どうしても魔眼が必要なわけじゃないけど、そういう問題じゃないんだ。
「俺だって、もう1つ魔眼を取得するからな、スケさんもダンジョンでポイント稼ぎ手伝ってよ」
『何に対抗心を燃やしてるか分かりませんが、ポイントを稼いだり、ダンジョンを進むのは歓迎します。
但し、後で後悔してもワタシに当たらないで下さいね』
「大丈夫、じっくり選ぶから高ポイントだからって文句いうのは無しだからな」
『40過ぎたおっさんが大人気なく魔眼を欲しがるなんて』
「なんとでも言ってくれ、毎日ダンジョンに転移させられてるんだし、楽しみくらいあったていいだろ。
そこにおっさんとか関係ないんだよ、スケさんは浪漫ってのが分かってないな」
『スキルのワタシに浪漫を語られても困ります。
今のスキルが上手くいけば、情報収集の問題は解決しますのでワタシにポイントは必要ありません。
貯めたポイントはマスターが使っても大丈夫ですよ』
「クリエイトゴーレムと極魔導だっけ、それで何が出来るんだ?」
『まだまだ試作段階なので、完成したらマスターにもお見せします。
マスターと共有した記憶を元に考えたので、楽しみにしてて下さい』
クリエイトゴーレムは今やラノベでは便利スキルとかして常識だからな、作品によっては生産スキルを兼ねてたりする。
でも、スケさんはクリエイトゴーレムはクリエイトゴーレム、あくまでゴーレムを造るスキルって言ってたし。
俺の記憶を元に考えたって言ってたのに、全然想像出来ない、柔軟な思考は年をとる毎に苦手になってくるな。
完成したら見せてくれるんだし、それまで待ってればいいか。
「今日のダンジョンで、重力の魔眼を使ってみたいんだけど、どの階層がいいと思う?」
『マスターがダンジョンに行くのに、積極的なんて珍しいですね。
15階層まで問題ないんですし、この際先に進むのはどうですか?』
「何気に物理じゃない攻撃方法が初めてなんだよ、仕方ないだろ。
初めて使うスキルなのに、新しい階層なんて危なくない?」
『大丈夫です、元々マスターさえやる気なら、いつでも進めた階層なんです。
魔眼のあるなしなんて関係ありません、魔眼が使えなければ、いつも通り物理で殴って下さい』
「わかったよ、俺の魔眼が浪漫だけじゃなく使える事を証明してやる」
俺はスケさんに上手い事のせられて、16階層に進む事にした。




