スケさんの備忘録
ワタシの意識がはっきりとしたのは、マスターに名前を頂いた時からです。
世界の管理機構によって、ステータスがなかったマスターの後付けステータスとしてのスキル、それが最初の記憶です。
サポートスキルとして、魔物から経験値得られないマスターにポイントという形で成長を助ける、それが仕事だったのですが。
マスターはちょっと残念な方なので、ワタシに名前を付けたのです、後にマスターの記憶を共有して物に名前を付ける方が要る事を知りますが、それでもスキルに名前を付けるのは、珍しいと思います。
お陰で、ワタシはサポートスキルからアシストスキルに進化して、知覚能力とスキルスロットを手に入れました。
知覚範囲はそこまで広くなかったですが、スキルでありながら初めて人の五感に近い感覚を体感したのは感動でしたね
それから、最初のスキルスロットは強制的に念動に決まりました、五感のうち一番足りなかった触覚を補う為の取得です。
念動の範囲はレベル掛ける魔力値m、一度に動かせる動かせる物はレベル掛ける2個まで、丁度両手がある感じに似ていて、触覚の代わりというのも頷けます。
持てる大きさや重さは、マスターの筋力値レベル10%㎏、最初はコーヒーを作るのも苦労しました。
マスターはダンジョンには興味があるくせに、攻略しようとしないヘタレで、ワタシは何の為に生まれて来たのか、存在目的を失いそうでした。
そんな時に、マスターの職場の女性からもたらされた吸血鬼の情報は興味深いものでした。
意識がはっきりとした日から、知識というモノに貪欲になった気がします、そして、知識を現実と照らし合わす瞬間が堪りません。
吸血鬼がワタシの知識の中にある吸血鬼と同じか、違うのか知りたくて好奇心が止められなかったのです。
ワタシは吸血鬼を捕まえないかと提案しましたが、マスターに断られてしまいました。
ダンジョンと一緒で気になっているのに、自ら動こうとしないマスターに、ワタシの好奇心を少し分けてあげたいくらいでした。
そこに、またもや職場の女性と話した事で、ワタシに取って都合の良い方に話の流れが向かいます。
被害者の唯一の共通点から、マスターは自分の娘様が心配になっていました、そんな確率は低いのですが、提案を押すチャンスと畳み掛けました。
マスターは思ったよりもあっさりと吸血鬼を捕まえる事を了承、ついでにワタシの知る吸血鬼の情報を話し、ダンジョンにも入る事も了承されました。
まさに一石二鳥というやつでしょうか、後はどうやってダンジョンを先に進んで行ってもらうかですが、それは無用な心配でした。
マスターはおかしい、ダンジョンのある世界でも戦闘狂の部類に入ると思います。
ワタシが探索の手助けをして、魔物へ誘導しているとはいえ、休みなく戦い続けるのは異常です。
どこの世界に、1時間や2時間で魔物を何百匹と倒す人がいるのでしょうか?
ワタシがアシストスキルになって最初にダンジョンに入った時は、ワタシが昆虫型の魔物ビックローチを見つけ次第潰して得たポイントの方が多かったのに。
ダンジョンに入る理由を与えたら、ワタシと同じくらいのペースで魔物を倒しています。
まだ弱いケイブラットでも、ステータスから見たら普通じゃあり得ない量です。
それなのに普段の言動は弱気、チグハグな人だと思いました。
煽ったのはワタシですが、毎日6時間休まず戦い続けて、ダンジョンを進んで行く。
ワタシの知識の中のダンジョン探索は、一度入ったら何日も探索をするのは普通ですが、なるべく魔物は避けるもので、戦いを避けられない時に数人掛かりで魔物を倒すもの。
ダンジョンに入っている時間は短くても、内容は濃過ぎるくらいです。
低階層ならともかく、5階層を過ぎてからも1日1階層のペースで進むのも普通じゃない、マスターの探索時間は1日6時間。
何日もダンジョンに入り続ける向こうの世界の人でも、1日1階層は早い方なのです。
ワタシが無理だと思いながら提案した条件も、予定よりも短い時間で達成してしまいました。
お陰で神眼も取得出来て、吸血鬼捜査の時間に余裕が出来ました。
結果は吸血鬼ではなく寄生蟲でしたが、そこからもマスターはワタシの期待を超えていきます。
マスター本人は、無理はしないと言いながら、無茶苦茶は戦い方をしてダンジョンを進み、見ず知らずの人間の為に命をかける。
ワイバーンと戦った時は、ワタシが手を出さなかったら死んでいてもおかしくなかったほどです。
ワタシが危険な攻撃は防いでくれると信じてたような事を言っていたが、危険な攻撃以外は受けるつもりなのが信じられません。
案の定、脚を貫かれ背中に深い裂傷を追ってしまいました、それ以外も細かな傷が身体中についています。
回復魔法を使っても痛みは暫く残ります、怪我をするのは怖くないのでしょうか。
流石にこの時は、ダンジョンから帰る事を勧め、治癒魔法の話をした事を後悔しました。
次の日には、落ち着いていたので安心しました、ダンジョンの先に進むにはどうすればいいか考えています。
マスターはあれこれ考え過ぎてるくらいが、丁度いいのかもしれません、ワタシもマスターの為になるスキルでも調べておきましょう。
マスターの出した答えは能力値を上げる事でした、シンプルですが確実な方法ですね。
普通の人から、遠ざかる方法は嫌いなマスターにしては思いきったと思います。
ワタシも調べていた呪魔法を教えました、自分に使うような魔法じゃないので、知らなかった効果を知れたのは嬉しかったですね。
そして、24時間のダンジョンは驚きました、魔物のリポップ時間の心配なんて普通はしません。
階層の移動時と少し休憩する時以外は、ずっと戦い続けるマスターくらいです。
少しでもマスターの役に立とうと、魔物を倒したのに引かれたのは、納得が出来ません。
予定よりもポイントが多く獲得出来たので、おかしなマスターに置いて行かれないように、ワタシ自身とスキルのレベルを上げたのに、また引かれた気がします。
吸血鬼事件の原因となった寄生蟲を退治して、治癒魔法で無事に被害者も助ける事が出来ました。
その過程でマスターには、予想外の事がそれはマスターが解決する問題です。
後日、問題の娘様と話をされて落ち込んだマスターに。
『マスターは、ワタシの事も信じてないですか?』
と聞いてしまいました。
「スケさん、今、そういう事聞くのは意地悪過ぎないか」
確かに、スキルであるワタシには意味のない質問でした、意地悪のつもりはなかったですが。
『失礼しました、和ませようとしたんですが失敗でしたね』
なんとなく言い訳をしてしまいました。
「わざとやってるだろ、しかし、娘まで元嫁みたいに嫌な気持ちにさせるなんて、全然成長してないな、俺は」
マスターが悲しそうな顔をしていますが、ちゃんと成長してると思いますよ、ワタシは。




