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企画参加作品など短編

異界からのゲンシーン

作者: 鷹羽飛鳥

 シュー ルー


 不思議な音がすると、壁に穴が開いたり木が切り倒されたりする。四角い箱から4本の足が生えたみたいな魔物が暴れてる。

 こんな魔物が、いつからともなく現れるようになった。

 数えたように6日おきに現れる魔物は、異界からやってくる荒神らしい。おいらたちにとっては、恐ろしい魔物だ。

 家が壊されるだけじゃない、人だって殺される。

 力のないおいらたちにできるのは、祈ることだけ。

 巫女姫様がおいらたちの祈りをゲンシーンさまに届けてくださる。

 ゲンシーンさまは、魔物よりも高位の神様なんだそうで、おいらでは近付くこともできない魔物を簡単に引きちぎってしまう。

 大きさはおいらとあんまり変わらないのに、さすがは神様だと思う。

 だからゲンシーンさま、早くおいでください。




 雷が落ちて、ゲンシーンさまがおいでくださった!

 え? ゲンシーンさまが手を前に…地面に何か刺さった! 魔物の舌!? 目に見えない速さで舌を伸ばしてたんだ! え、それをたたき落としたんか!? さすがはゲンシーンさま!

 ゲンシーンさまは、地面に刺さった舌の先端を踏んづけると、両手で引きちぎった。すごい。ちぎれた舌はシュルルルル…って音立てて戻っていったけど、もう舌は出さなかった。効かないってわかったからなのか、ちぎられて痛いからなのかは、おいらにはわからないけど、魔物はゲンシーンさまに蹴倒されて踏まれて、動かなくなって消えた。




 街中から歓声が上がった。ゲンシーンさまは、周りを見回した後、巫女姫さまの祈りを受けながら天に昇っていった。

 ゲンシーンさまがいらっしゃれば、魔物なんか怖くないね!

 我がシャド王国に魔物が現れるようになってずいぶんになります。

 その魔物は、遙か異界の物が命を持ったもので、文献によれば“ツクモガミ”というのだとか。

 異界は、この世界より高位の世界らしく、我らの武器ではツクモガミを傷付けることすらできません。

 ツクモガミを倒せるのは、同じ高位の世界におられ、ツクモガミよりも更に強い神格を持つ神のみ。

 王家に連なる巫女たる我、ウィー・ド・リームの祈りだけが、異界の神の降臨という奇跡を起こせるのです。

 7日に一度、異界との門が開きやすくなるらしく、ツクモガミが現れます。

 けれど、その時こそ神に祈りが届く時でもあります。

 我が祈りにより、つかのま降臨なさる神は、お姿も揺らいでおられますが、決して幻などではありません。

 ツクモガミのあらゆる攻撃をものともせず、武器もなしにひねり潰しておしまいになられるのです。

 我らは、幻神とお呼びして崇めています。

 今日もまた、鋼の舌を持つ四つ足のツクモガミを、舌を引きちぎってお鎮めになりました。


 「幻神よ、今日もご降臨に感謝いたします」

 ツクモガミを滅ぼすと、幻神は我が感謝の祈りを受けて宙へと舞い上がり、そのまま異界にお戻りになられます。異界との門が開いている時間は、ごく僅か。

 幻神は、その僅かな時間に降臨され、お戻りになるのです。その神々しさ、力強さは、正に神の名にふさわしい。

 元々、幻神降臨の代償には我が身命を捧げる覚悟でした。

 しかし、幻神は、最初の降臨の際、贄は不要と仰せになったのです。せめて心からの感謝の祈りを捧げねば。

 ツクモガミの体は、幻神様が平らげるらしく、残ることは滅多にありませんが、今日は引きちぎられた舌の先端が残されていました。

 その先端は返しのように曲がっており、舌の側面は触れれば指が落ちるほどに鋭く、我らの道具では切るどころか曲げることさえできそうにありません。

 幻神は、これを無造作に握ってちぎり取ったのです。やはり異界の神は、我らの想像を超えたお力をお持ちです。

 幻神よ、これからも我が国を守り給え。

 挿絵(By みてみん)


 また、夢を見ているらしい。

 誰でも経験あんだろう、“これは夢だな”ってわかる夢。わかってても自分で夢を終わらせることなんてできゃしないから、付き合うしかない。

 そんな夢、一般的には滅多にないことみたいだが、俺はほぼ週1回ある。

 これがまた続きものみたいな夢で、ちゃんと前回から話が繋がってるから驚きだ。




 夢の中では、俺はヒーローだ。世界の救世主みたいに扱われてて、街で暴れてるバケモンを華麗にぶっ飛ばすと夢が終わる。

 毎回必ず登場している美少女がいて、俺はその娘の声に呼ばれて現れ、その娘の応援を受けながらバケモンと戦い、その娘に見送られて消える。ていうか、そこで目が覚める。

 ガキの頃見たロボットアニメみたいだ。

 律儀に週1回敵が攻めてきて、倒す。一度に何十体もで攻めてくりゃ勝てんのに、わざわざ1体だけで攻めてくる。お前ら本気で勝つ気あんのかって話だよな。

 さしずめ、レギュラーで出てくる美少女はヒロイン枠か。ピンクの髪にぱっちりした目、童顔のくせにやたらでかい胸と谷間を強調してるみたいな露出度の高い服。周りの奴らと比べて、1人だけあからさまに服装が違うんだもんな。しかも毎週同じ服だ。

 まったくアニメかっての。

 会社でこんな話したら、オタクかなんかと思われちまう。

 しかも、最初の時に「私をあ・げ・る」とか言いやがった。

 俺はロリコンじゃねえし、オタクでもねえってんだ。でかい胸にも興味はねえ。女はAカップに限る。

 なにがゲンシーンだよ。上杉謙信も武田信玄も嫌いじゃねえけど、ネーミングが安直なんだよ。




 今日の敵は、巻き尺のバケモンかよ。先週は哺乳瓶のバケモンだったか? センスねえってんだよ。

 どうせなら、バーかなんかでしっとりした美女とよろしくやる夢でも見せてくんねえかな。もちろん、胸はAカップだ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 貧乳派の幻神様がもうおかしくてたまりませんでした(笑)最初、構成がよくわからなくて感想を読んで理解しました。前書き・後書きの使いかた、面白いですね! [一言] 夢幻企画の参加作品を片っ端か…
[良い点] 拝読しました。 本人は夢のつもりでも、実際には異世界に行って活躍しているのですね。 それぞれの視点で描かれていて、背景が解りやすかったです。 面白かったです。
[良い点] はじめまして。家紋様の夢幻企画より参りました。 あがめ奉られるカミサマと、実際のゲンシーン様の落差よ…。しかもまさかのアンチ巨乳とは…!面白かったです。 [一言] 前書きと後書きってこん…
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