四人とも別ゲー転生
※何度でも言います。
これはこの作品限りです。
続きはありません。
俺は主人 公!
雑な名前で、どこにでもいる前髪で目を隠した、平凡なギャルゲー主人公!
こんなんで前を見られるのか? って疑問だったけど、前髪が取り払われたみたいにハッキリ見えるって、この体はスゲーな!
面白くって、ついつい前髪を伸ばしたままだよ!
あとデフォルトネームが無いタイプのゲームだったから、変な名前になっちまった様だ!
ははっ、ウケる(白目)
……に、転生しちゃった小市民です。 はい。
ガキの頃に女の子からフラれて、そのショックで前世思い出して、周囲の名前や容姿から俺が誰か分かった衝撃。
ギャルゲー主人公になれた嬉しさと、女の子からフラれた悲しさ。 どっちを優先すれば良いか分からなくなって、少しおかしくなったのは秘密な?
え、死に方? 部活の悪い先輩に無理矢理イッキ飲みを強要されて、急性アルコール中毒ですよ。
未成年の飲酒及び、飲酒の強要はダメ、絶対!!
それで現在は前世で中坊の頃に、こっそりやってたギャルゲー主人公と来たもんだ。
世の中不思議なこともあるもんですね。
でも更に不思議なのは、高校ですよ。
今校門の前に立っているんですけどね? あのゲームで高校名は、こんなのだったかな~ってね?
『私立 戸麗華高校』
受験の時も思ったけど、近場で進学出来るのはここだけだったんだよ。
ゲームと全然違う。 ここは本来の進学先じゃないと思う。
俺、この姿でどっか迷い込んだのかな? いやいや、そもそも俺自身が混入物だしなぁ。
……まあ良いか。 ギャルゲーみたく、俺に彼女ができれば嬉しいんだけどなぁ。
なんて妄想してないで、急いで入ろうか。
~~~~~~
どうも、ボクです。
名前?
言わなきゃ駄目ですか?
う~~、分かりましたよぉ。 言えば良いんでしょ?
えっと、総総 受と言います。
名前から推測できますよね?
そう、主人公総受け系LGBTゲームの、その主人公です。
いつも弱気な様子と、人の目を避けようとした不審者ヘアーが、イケナイ心をくすぐります。
いつもは隠れている怯えた目が、前髪の切れ間からチラッと見上げてくるのを見たら、ついつい攻めたくなるよね?
それでいて、時折出てくる生意気と言うか反発心と言うか。 そんな発言でク○ガキ感を見せて、聞く人を余計に煽れますね!
良いですよねぇ総受け。 普通のゲームなら攻略対象が攻め受けで別れていて、主人公キャラの解釈が別れてファンの間で戦争に~なんて、あまりならないから平和なんですよ。
まあ誰と繋がる(……じゅるり)のが公式かで戦争したり、逆転妄想する異端者との戦いが有ったりで、完全に平和だったとは言えませんし、前世は貴腐人として…………あ。
はい、バレましたね。
男体化した元女です。 小さかった頃に、犬からお尻を咬まれた瞬間。
ばっと前世を思い出して、怪我を心配して呼ばれた名前を聞いて、分かったわけですよ。 こんな名前の男の子なんて居ないし。 特定は簡単ですよ、うへへへ。
そう言った事でして、以後お見知り置きを。
……御美尻…………おっと、失礼。 ぐへへ。
そんな、大好きな作品の主人公になれたんで、思いっきり楽しみたいな~。
なんて考えていたんですけど、なんか変なんですよね。
攻略対象である幼馴染の親友と、全く出逢えぬまま高校ですよ。
名前が『私立 戸麗華高校』となっていて、記憶と違う。
あのイケメン達と逢えないのは、とても不満です。 耳元で、良い声で囁いて欲しかったのに……。
まったく。 この世界はどうなってるんでしょうかね?
まあ、登校してみれば何か解りますかねえ?
~~~~~~
おはようございます!
オレ……こほん。
ワタシの名前は花咲 茜っ。
茜の花言葉は「私を思って」とか「媚び」って意味!
ひどい名前だけど、元々を考えれば仕方ないっちゃ仕方ないんだよね。
オレ、実は元百合男子! 現在は百合ゲー主人公の体で、これから始まるかも知れない百合ライフにドキワクですぜ!
TS百合は百合にあらず? こまけーこたぁ良いのよ!
外見が女の子同士で、仲良くしてる姿を眺めてるだけで、ごはん5杯行ってた身だからな!
問題は、オレ自身が主人公の女の子になっちまったから、自分と女の子の誰かと生百合が拝めない程度っ!
どっかのラノベで尊死で転生! なんて書かれてて「バッカでー、そんな死に方しないっつの。 もっと見てぇよー! はーーー、尊い尊い」になるだるぉ!?
とか思ってた本人がKONOZAMAですわ、あっはっはっは!
…………いやぁ、本当に尊いお姿を拝見してしまうと、昇天する(注)んですね。
それと前世を思い出すきっかけなんて、産まれて数年……公園にて女の子達がおままごとの役で、夫婦役を奪い合ってるのを見てたらだよ?
わたしがお母さん役なの! ちがう、ワタシがお母さん役なのぉ! お父さん役をやってよ! やだー、お父さんはそっち!
なんて押し付けあってるけど、夫婦になるの自体は嫌がってない所が、鼻血ものだったなぁ。
オレの百合男子精神は筋金入り。 それを実感したね、うん。
閑話休題。
現在登校中。
この現実にはなんと、通学できる範囲内に、大変美しい百合の花園がありませんでした。
なのでせめてもの気持ちを込めて、近場で1番女子のレベルが高いと評判の、この高校へ進学。
『私立 戸麗華高校』とか言う所。
この体と小中で重ねてきた経験から、とても綺麗な百合力を発揮できる自信が、ワタシにはありますっ。
初登校だから特別に気合いを入れて、寝る前のお手入れフルコースを朝に!
しかも長めのサイドポニーでしっかりキメて、艶出しもバッチリっ!
もちろん主人公名物アホ毛も完備っ! 仲良くなった子から、髪が跳ねてるとブラシをかけられ、その時の女の子どアップスチルが特大インパクトよっ!
化粧とバレないよう気をつけながらの、ナチュラルメイクも忘れずに!!
お姉様、大親友、可愛い妹。
誰かと良い関係を結べると信じて、いざ運命の地へっ!!
……うーん。 しつこいと言われるかもしれないけど、ひとりも攻略対象と逢わないって、どうなってんだこの世界。
そんな疑念が全然無くならない。
~~~~~~
なんでこの姿で、2度目の高校生活を送らなくちゃいけないのよ……。
あ、私は天満 光と言います。
名前負けですよね(鼻で笑う)
いえ。 そもそもですよ。
私には産まれる直前から、前世の記憶が有ります。 恐ろしく静かで、手のかからない子として少し心配されました。
前世の記憶はブラック企業で過労死した、今思い出すだけでも泣けてくるやつですが。
じゃあ今は何者だって訊かれたら、私はなぜか高校の頃にやってた乙女ゲームの主人公です。
そんな頭がおかしいんじゃないかって、心配されるような存在です。
でも事実なんですよ。
成長して鏡を見るたび、スチルで何度も見たあの顔に近付いていく自分。
いやでも思い出にあるあのキャラクターに。
まあ、この転生した世界にその学園は、なぜか有りませんでしたけどね。
ゲームで見たのは、いわゆるお金持ちの御子息御息女が通う所。
そこで主人公ちゃんは沢山の悪意害意に負けず頑張って、素敵な彼氏が出来て幸せいっぱい夢いっぱい。
そんなベタ展開の乙女ゲーム。
地獄で生きていけるほど、私は根性なんてありません。
あったらブラック企業を辞めてます。
なので最高の気分です。
あんな所ではなくて『私立 戸麗華高校』と言う場所を選びました。
卒業したら、実家のパン屋を継ぐべく、そっちの専門学校が進路になるでしょう。
パン焼きで朝が早くなっても、閉店は定時。 売り切れればもっと早くなる。 最高じゃないですか。
学業なんて面倒だけど、でも今の戸籍上では行かなきゃならない。
嗚呼……私の穏やかで静かで豊かな日々は、まだ遠い。
そうだ、登校しても出来るだけ教室のすみで目立たず、ひっそりと過ごそう。 うん、そうしよう。
~~~~~~
入学式の前に、各教室で大切な物を配るらしい。
この高校に在学中の上級生、又はOBOGが家族や知り合いに居る者が、それを自慢気に語っていた。
普通は大切な物を配るにしても、入学式後……下校前のHRだろうに。
はしゃいでいる同級生をぼんやり冷めた目で見ている、何も知らない新入生達も多い。
「おらー、新入生ぇ全員、席につけ!」
そんな待ち時間も終わり、ガラリと扉を尻だけで器用に開閉した教師が、黒板の前に立つ。
しかしその教師の顔はおろか、姿さえまともに見られない。
それはなぜか?
教師が大きな段ボール箱を2つ、縦に重ねて持っているからだ。
教師の様子に疑問を抱きつつも、指示に応じる生徒達。
そこには上記の4人も含まれる。
「よし、これからお前達に、この高校で最重要な物を配るぞ。 いや、列ごとで取りに来なさい。 それぞれの中から1つずつだぞ」
教卓の上に段ボールを置き、無造作に開封する教師。
その手つきは熟練で、どれだけの段ボールを開けてきたのだろうかと悠久なる思考へ…………おっと、今は関係ない。
その作業を終えた教師が、生徒達を眺める頃になってようやく、顔を確認できた。
なんとこの教師、特徴が特に無い。
七三分けに光って目が見えない黒縁眼鏡、平均的な身長体格に地味なスーツ。
声も男性教師ならこんな感じかな~? と思い浮かべると「ソレ!」等と言われそうな、地味ボイス。
これで分からないならば、文科省役人で画像検索すれば、多分分かる。
人物名も有るが、そこは大人の事情的に伏せさせて頂きます。
生徒達は教師の指示通り、2つある段ボール箱に入っている小さな箱を取っては、着席していく。
それが全員済んだのを確認し、見た目からは想像できない大声を張り上げた。
「これはこの高校で最も重要な物!」
身振り手振りまで交えて演説を打つ姿に、大多数の生徒は見事に引いた。
「それを使いこなす事こそが、使いこなして行く者を育てる事こそが、この高校最大にして唯一の目標!」
熱血、ひたすらに熱血である。
「今お前達が手にしているそれは、まだ可能性でしか無い! 具体的に言えば、スターターデッキだ!
悩み抜き、育て上げ、最強のデッキに組み上げてみせろ!!」
デッキ? 事情が分かっていない生徒達の眉に、一斉にシワが寄る。
「ソレを常に身に付け、授業を含めた普段の生活や対戦の成績でポイントを貯め、購買にあるカードガチャに全てを注げっ!!」
ガチャと聴き、一部の生徒の目が変わる。 ギラギラしたり、濁ったり、死んだ魚みたくなったり。
彼らは恐らく、重課金者だろう。 お疲れ様です。
「最強のカードバトラーを目指せ、若人よ!!!」
演説の〆に上体を反らし、両手まで掲げる姿はまるで『手を洗おー!』と訴えるポスターの如く。
…………いや、本題はそこではないか。
彼は宣言した。
トレーディングカードゲームで遊べと。
最強のカードバトラーになれと。
その単語を聞いて、ハッとした生徒達は、手元にある箱2つを慌てて開ける。
片方には、透明なアクリル製と思われるカードゲーム用箱型カードケースと、カードの束が。
もうひとつには、よく分からない板状の機械と、金属製で大きめのカードケースが。
ケースには、ベルトを通して固定できるよう、小憎らしい細工が施されている。
ちなみに気が短かったり、中身が何か知っている者達は、演説が始まった途端に開封を始めていた。 このせっかちさんめ。
「機械の板は、お前達の生徒手帳を兼用したガチャポイントカードでもある。 無くすなよー?」
演説の熱が冷めたのだろう。 ずいぶんと落ち着いた口調で、淡々と通達してくる。
この注意事項に、慌てて制服の胸ポケットや内ポケットへ仕舞い込む生徒が続出。
「大きい機械のカードケースは、見た目より多く入るからな。 ガチャで引いたカードをとりあえず入れておく場所として。
また、対戦相手に合わせたデッキ構築が出来るよう、ストック場所として活用するように。 以上」
今この瞬間に“黄金の世代”と後世で呼ばれた、カードバトラー達のひしめく楽園が産まれたと言う。
再度警告!
プロローグっぽいですが、読み切りで絶対に続きません!
やらかした感満載ですが、見逃して頂けると万々歳でございます!
んで、4人の中でトレーディングカードゲーム三昧な日々に、1番はっちゃけてデュエル狂いとなったのは天満光だったり……。
(注)尊死が現実で発生するかは、作者は未確認でございます。 真に受けないようお気をつけ下さい。
最後に
眼鏡教師<ここはカードゲームで、世界の秘密に迫る世界だったんだよ!
ΩΩΩΩ<な……なんだってーー!!