be tron… (more than…ミハルver.)
「ごめん、今週も帰れない。」
たった一言の留守電を、ため息とともに何度聞いたのだろう。
最近は、ミハルが出られない時間を狙ってかけてくる。
彼が上京してから1年が経とうとしていた。
毎週のように帰って来ていたのが、今や月に1回あればいい程度。
心変わりに気付かないふりをするのも、だんだん疲れてくる。
ミハルは、敢えて返信するのをやめた。
沈黙を保つスマホを睨んで、3日か過ぎた。
そんな中、気分転換で参加した友人との飲み会で、
たまたま隣に座ったのがキヨシだった。
「キヨって呼んでな!」
と、屈託なく笑うキヨシに、ミハルは少し苛ついた。
……彼が関西弁を使わなくなったのはいつからだろう。
そう思ったら、この無防備な笑顔を歪めてしまいたくなった。
「私だけの呼び方で呼びたい。
…そうだ!ヨッシーってのはどう?」
衝動的に、つい、口から出てしまった。
言ってしまった自分に正直びっくりしたが、
そのことを悟られたくなくて、無理やりカンパイすることで誤魔化した。
だが、これをきっかけに、キヨシとの距離が一気に縮んだ。
寂しかったミハルに、流れを止める事は不可能だった。
「ごめん、来週も帰れない。」
ある日の飲み会の途中で、彼からメールが鳴った。
……もう電話すらかけてこないのか。
身体の奥から何かが込み上げてくる。
それを、必死に、ビールで更に奥へ追いやった。
「ミハル?どうしたん?今日はペース早やない?」
気付くといつも隣に座っているキヨシが、ミハルの顔を覗き込んでいる。
キヨシが自分に好意を持っているのは薄々気付いていた。
ー どうせ彼も…
ー ヨッシーなら…
少し酔ったミハルの中に、ふと心のはずみが生まれた。
「今夜、ヨッシーの部屋に泊りに行っていい?」
気が付くと、ミハルは、そう呟いていた。
こうなるつもりはなかった。
ちょっとからかうだけのつもりだった。
ちょっと寂しかっただけだった。
だが、身体を重ねるたびに、キヨシの存在が大きくなっていく。
ミハルを気遣って、彼の事を一切聞かないキヨシが、
好きのオーラしか感じないのに、それを一切口にしないキヨシが、
ミハルとって居心地のいい場所になっていた。
「今週末は帰るよ。」
久々に聞く彼の声に、ミハルはまだときめく。
「今夜は来るん?」
いつものキヨシの声に、罪悪感を感じつつ、心が和む。
揺れ動く。
二人の間をふらふらと。
ただ、着地点は見えているように思えた。
ー 僕のものになればいいやんか、と、言わへんかな…。
ー 僕だけのミハルになってぇや、と、言ったらええのに…。
我ながらずるいな、と苦笑いしながら。




