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be tron… (more than…ミハルver.)

作者: ふくのすけ
掲載日:2020/06/11

「ごめん、今週も帰れない。」


たった一言の留守電を、ため息とともに何度聞いたのだろう。

最近は、ミハルが出られない時間を狙ってかけてくる。

彼が上京してから1年が経とうとしていた。

毎週のように帰って来ていたのが、今や月に1回あればいい程度。

心変わりに気付かないふりをするのも、だんだん疲れてくる。

ミハルは、敢えて返信するのをやめた。


沈黙を保つスマホを睨んで、3日か過ぎた。

そんな中、気分転換で参加した友人との飲み会で、

たまたま隣に座ったのがキヨシだった。

「キヨって呼んでな!」

と、屈託なく笑うキヨシに、ミハルは少し苛ついた。

……彼が関西弁を使わなくなったのはいつからだろう。

そう思ったら、この無防備な笑顔を歪めてしまいたくなった。


「私だけの呼び方で呼びたい。

…そうだ!ヨッシーってのはどう?」


衝動的に、つい、口から出てしまった。

言ってしまった自分に正直びっくりしたが、

そのことを悟られたくなくて、無理やりカンパイすることで誤魔化した。

だが、これをきっかけに、キヨシとの距離が一気に縮んだ。

寂しかったミハルに、流れを止める事は不可能だった。


「ごめん、来週も帰れない。」

ある日の飲み会の途中で、彼からメールが鳴った。

……もう電話すらかけてこないのか。

身体の奥から何かが込み上げてくる。

それを、必死に、ビールで更に奥へ追いやった。

「ミハル?どうしたん?今日はペース早やない?」

気付くといつも隣に座っているキヨシが、ミハルの顔を覗き込んでいる。

キヨシが自分に好意を持っているのは薄々気付いていた。


ー どうせ彼も…

ー ヨッシーなら…


少し酔ったミハルの中に、ふと心のはずみが生まれた。

「今夜、ヨッシーの部屋に泊りに行っていい?」

気が付くと、ミハルは、そう呟いていた。


こうなるつもりはなかった。

ちょっとからかうだけのつもりだった。

ちょっと寂しかっただけだった。

だが、身体を重ねるたびに、キヨシの存在が大きくなっていく。

ミハルを気遣って、彼の事を一切聞かないキヨシが、

好きのオーラしか感じないのに、それを一切口にしないキヨシが、

ミハルとって居心地のいい場所になっていた。


「今週末は帰るよ。」

久々に聞く彼の声に、ミハルはまだときめく。

「今夜は来るん?」

いつものキヨシの声に、罪悪感を感じつつ、心が和む。

揺れ動く。

二人の間をふらふらと。

ただ、着地点は見えているように思えた。


ー 僕のものになればいいやんか、と、言わへんかな…。

ー 僕だけのミハルになってぇや、と、言ったらええのに…。


我ながらずるいな、と苦笑いしながら。

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