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61:毒使い、遠征に出る



 三日後、私たち【輝く礁域(グロウラグーン)】は宿場町にいた。


 リーナのスキル考察を終えた翌日、遠征の為の買い出しを行い、その翌日には朝からギルドに直行。目的地であるベット湿地でこなせそうな依頼を見繕って、早速出発した。


 東門から出て街道をひた歩く。

 馬車は使わない。理由はそこまで遠くないというのもあるし、お金がもったいないというのもある。が、私的に一番の理由は『その方が冒険者っぽい』という事だ。

 周りに自然しかない街道をパーティーメンバーとひたすら進む。

 時々街道まで現れる魔物を倒しつつ、警戒しつつ、和気藹々と進む。

 ああ、実に″冒険者″じゃないか。


 ……まぁそんな風に思ったのは最初だけだけどね。

 そりゃずっと歩くのはつらいし、暇だし、車が欲しくなる。せめて音楽プレイヤーが欲しい。

 転生して十年、未だに心はアジャストしていないらしい。


 街道は途中でいくつも分岐しており、曲がればどこかの村などに繋がっているのだろう。

 私たちの目的地はまっすぐだ。

 街道は馬車で通った場合、だいたい一日分の距離ごとに宿場町がある。この道も同じ。

 私たちは初めての野営を挟み、二日目にして宿場町に着いた。


 初めての野営の感想? 特にないです。

 テントは魔法の鞄に収納してきたし、立てるのも楽チンな冒険者仕様だ。一泊だけだから食事も出来合いのもので、作ったりもしていない。一応焚火はしたから途中で狩った魔物の肉を焼いたくらいだ。

 夜警も三時間ずつくらいしたけど問題なし。強いて言えば暇でしょうがなかったくらい。



 とにもかくにも、この日は一日ぶりの酒場での食事と、大部屋ではあるものの夜警せずに眠った。初めて宿場町のありがたみを感じたと思う。


 この先に街道はない。街道は湿地を避けるように左右にぐるっと伸びている。

 あとは道なき道を少し進めばもうベット湿地。

 ここからでも、すでに見える景色は水溜りばかり。

 背の低い草原と葦の群生。ぽつんぽつんと背の高い木もあるのが余計に目立つ。


 そうして私たちはベット湿地に足を踏み入れた。



「依頼はマッドスパイダー、リングスネーク、七色スズラン、ポレギの実、あと……」


「ママリミ草ですね。ママリミ草は毒草なんでピーゾンさんお任せです」


「了解。問題はホークアイで蜘蛛と蛇が見つかるかだけど……」


「んー、草が邪魔」


「だよねー。もうちょっとデカイ魔物の方が逆に良かったかも」


「マッドスパイダーもリングスネークもEランクですからね。Cとは言わないまでもDランクの討伐依頼があれば良かったんですけどね」



 とりあえず<毒感知>とホークアイでなんか見つかったら行く感じかな。

 いざ進みましょう。



「んー、足が重い」


「地面がゆるいですよね。沼っぽいのは避けても泥が靴裏に付いちゃいます。こまめに泥をとらないと動きに支障が出ますよ」


「私のウサウサブーツがががが」



 真っ白なモフモフが台無しなんだが?

 あとでネルトに″洗浄″してもらおう。





 初日の探索にて依頼の八割方は終了。宿場町まで戻って明日に備える。

 今回の遠征は三日間を目論んでいる。

 もちろん依頼数が足りなければ延長もありえるけど、無理そうなら大人しく依頼失敗とするつもりだ。



「明日は北側の川沿いに行ってみましょうか」


「南側は草の背が高いですからね。探索が難しそうです」


「ん。でも人が」



 そう、私たち以外にもベット湿地に来ている冒険者パーティーが何組も居る。

 どうやら広い湿地の奥のほうには強い魔物やダンジョンがあるらしい。まぁそこへ行く人はここの王都寄りの宿場町じゃなくて、ぐるっと湿地を回った別の街道沿いの宿場町なんだろうけど。


 私たちが探索しているのは広大なベット湿地の西側……王都寄りの方だけで、そこはDランクや下手するとEランクパーティーでも行けそうなレベルなのだ。

 初遠征で無理はしたくないという安全第一方針である。


 私たちと同じようなDランクパーティーや、奥側から流れて来たパーティーも居るわけで、そこそこの頻度で他パーティーと遭遇する。

 いや、ホークアイで確認して遭遇しそうになったら離れるんだけど。


 背の高い草が生えていれば探索はしづらいけど他人に見られる心配が少ない。

 背の低い草しかなかったり川沿いだと遮蔽物がないから、その逆だ。

 ま、今日は安全第一なので川沿いにしますけどね。常時『気配察知』してるわけじゃないんで、蜘蛛や蛇に襲い掛かられるとつらいんです。



 翌日、湿地探索二日目。



「<毒感知>……お、多分また蜘蛛」


「多いですね」


「マリリンのおみやげ」



 依頼のマッドスパイダーはすでに指定の五体を狩り終え、討伐証明部位の顎を回収済み。もちろんマリリンさんから頼まれた魔篩板もね。

 ただこの湿地にはEランクのマッドスパイダー以外にも蜘蛛系魔物が多いらしく、同じくEランクの高足蜘蛛やDランクのクリアタランチュラなんかも居る。

 総じて毒持ちらしく私の<毒感知>に引っ掛かる。クリアタランチュラなんか透明のプラスチックみたいな見た目だから普通に見つけるのは難しいと思うんだけどラッキーだね。



「うわぁ……」


「いい加減慣れなさい」


「う、うん……」



 ちなみにポロリンは蜘蛛が苦手らしい。確かに魔篩板は蜘蛛の体内だからグロいんだけどね。気持ちは分かるが、あいにくと私は『クリハン』でグロ耐性あるし、ネルトは淡々と解体する。何なら足を焼いて食おうとしている。さすがに私もそれは無理だ。

 ポロリンも男の意地(笑)を見せ、頑張って倒し、頑張って解体している。

 時々「ひぃっ」と言うのが可愛らしい。男の意地(笑)。



「ん。レベル上がった」


「おお、ナイスニート」


「スキル覚えた」


「なぬっ!?」


「ピーゾンさん、目がギラーンってなってるよ」



 ネルトがレベル20になった。これだけ乱獲してるし王都周りの魔物より強いしね。

 あ、そう言えばこないだのロックリザードは私にしか経験値が入らなかったんだよね。

 なぜ二人に入らなかったのか。ネルトはともかくポロリンは30mほど離れていたらしいんだけど、それでも入らない。

 パーティー人数、距離、その他にもどんな形で戦闘に参加してたのかも″寄生″の判断基準になるのかもしれない。

 全く戦闘に参加せずに経験値が入るのは知っているから、それでも″戦闘区域″に入ってないといけないとか? まぁ分かんないけど。


 とりあえずネルトの能力をチェックする。


―――――

職業:ニートの魔女Lv20(+3)

スキル:生活魔法Lv3(+1)、空間魔法Lv3(+1)、念力Lv4(+1)、室内空調Lv2(+1)、瞑想(New)

生活魔法=着火・給水・乾燥・洗浄・照明・手当(New)

空間魔法=グリッド・ホークアイ・空間斬り(New)

―――――


「あ、やべっ」


「ん?」


「何がです? 空間斬りですか?」


「これちょっと調べないと……」



 まず<念力>と<室内空調>は範囲や大きさが変わった感じで、それは良い。

 新しく覚えた<瞑想>は動かない状態だとMP回復増進。既知スキルなので私でも知っていた。ニートらしいスキルだね。

 <生活魔法>の『手当』は切り傷などの軽傷を癒す。回復魔法以下だけど回復要員がいないから結構貴重。ありがたい。


 で、問題は『空間斬り』だ。



「試しにその草むらにスキル使いながら杖で横薙ぎしてみて」


「ん。……『空間斬り』」



 杖術など戦闘系のスキルを持ってない、ネルトの横薙ぎ。

 ただ振るっただけの杖は、ズバッと草むらを刈り取った。



「おお」


「うわっ! 杖なのに剣より斬れてるんじゃないですか!?」


「だね。ネルト、消費は?」


「12」


「高っ!」



 でもそれだけの価値はあるか。木とか岩とかも斬れるだろうしね。

 範囲は振るった杖より少し長いくらい。杖の先端から1mくらいかな? 杖本体に当たった草は残ってるから杖自体に作用しているわけではなさそうだ。

 これは要練習だね。というか無暗に使いたくないなぁ。フレンドリーファイアしたら一発で死ぬわ。


 魔物相手でも胸とかに当てたら魔石も消滅させちゃうだろうしね。

 ネルトの戦闘スタイル的に、後衛まで切り込んで来た魔物に対して迎撃で使うのが正解だろう。


 この後、空間斬りの恐ろしさを懇々と語った。

 ポロリンはかなり引いてた。

 ネルトも分かってくれたらしい。使いどころをかなり限定しないといけないからね。


 やっぱ怖いわ、<空間魔法>。そしてニート。




ドゥーデドゥデーン、ドゥードゥデドデーン

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