57:毒使い、ドナドナされる
予定より若干早くなった帰り道を私たち九人は歩いている。
ロックイーターが出たことを報告しないといけないし、シャボンとトトゥリアなんか疲労困憊だしね。
逆に焼き肉パーティーやって正解だったかもしれない。おかげで多少気力が回復してる。
そんな二人にサフィーが話しかけている。
「―――そしてヒュンヒュンと避けていたと思ったらズバーッと首が落ちましたわ! さすが護衛パーティーのリーダーと言ったところでしょう! まぁワタクシの速さには敵いませんけれどね! オーーッホッホッホ!」
武勇伝めいたものを語り、女子二人も楽しそうに聞いている。これで元気づけているのだろうか。
しかし私はジト目でサフィーを見るけどね。てめえこの野郎と。
「ポロリンさん、今度お茶でもご一緒しませんか?」
「あ、俺、いい店知ってるよ! 今度どうかな?」
一方でディオとマックスがナンパしている。
どうやら身近に居る美人のリーナとサフィーは家柄もあり手が出せないらしい。
そこに現れた超絶美少女に食いついたようだ。
「え? えっと、一応言っておきますけど、ボク男ですよ?」
ポロリンも男友達として誘われているのではなく誤解されていると気付いたらしい。
その言葉に男子だけではなく女子たちも反応。一斉にポロリンを見つめる。
「男!?」「うそだっ!」「そんなっ!」「信じられない!」「……(白目)」
「ピ、ピーゾン様、本当ですか? ポロリン様が男子と言うのは……」
「ホントだよ。チ〇コついてるらしい」
「なんとポロリン様にチ〇コが……」
「チ〇コなんかついてるわけありませんわっ!」
「グリッド……やっぱチ〇コついてた」
「うわああ! もうやめて! それ以上言わないで!」(美少女憤慨ポーズ)
「しかもけっこう大きい」
「ネルトさん!!」(美少女憤慨ポーズ)
初めての郊外魔物討伐。強敵との遭遇。それに加えて誰よりかわいい男の子というショックを受けた生
徒たちは、トボトボと東門に向けて歩いた。
心身ともに堪えた演習だったと言える。
♦
東門に戻ると集合時間より早いものの、何組かのグループはすでに帰還していたらしい。
リーナが代表して「Sクラス第1班もどりました」と教諭に報告している。
私たちはギルド職員のもとへ行き、帰還報告とロックリザードの件を報告する。
「ロ、ロックリザードですか! 詳しい経緯と場所を教えて下さい! 調査申請をしなければ!」
職員の人も驚いていた。やっぱ森のかなり深く、むしろ山とかじゃないと出ないらしい。
素材はどこに出せばいいかと尋ねると、護衛依頼の報告と一緒にギルドの買い取り窓口で、との事。
ついでにギルドに帰ったらメモを渡してくれと頼まれた。職員さんは護衛の帰還報告で東門から動けないので調査を申請するよう先にギルドに伝えて欲しいとの事だ。
んじゃとっととギルドに戻りますかね。
と思っていたら第1班の六人が報告を終えたらしい。
「ピーゾン様、ポロリン様、ネルト様、本日はありがとうございました。大変勉強になりました。また何かの機会にお会い出来ると嬉しいです」
「うん、ちゃんと護衛できたか微妙だけどみんな無事で良かったよ。リーナもお疲れさま」
「オーーッホッホッホ! 貴女方はちゃんと護衛をしておりましたわ! 及第点を差し上げます! 今度ワタクシが指名依頼してもよろしくてよ! オーーッホッホッホ!」
「お、おう。サフィーさんもお疲れさん」
ほかの四人にもお礼を言われた。疲れてるっぽいけど達成感のある顔つきだ。
みんなと握手で分かれたけど、ポロリンと握手する時の反応が微妙だった。
触れちゃいけないものに触れるみたいな。手も腕も華奢な女の子なんだよねぇ、ポロリン。
♦
冒険者ギルドで依頼報告。とりあえず護衛依頼の報酬をもらう。
お値段金貨五枚(五〇万円)。高い! さすがは金持ち学校!
そしてメモを渡し、ロックリザードの件を報告する。
「また貴女たちは……なんで王都近郊で大物をサクッと倒してくるのか……」
受付嬢さんは頭を抱えながらそう呟く。
そんな事言われてもねぇ。被害者ですよ。私たちが悪いみたいに言わないで下さいな。
ロックリザードの買い取りは窓口では無理なので、解体室へと向かう。
オークキングの時にもお願いしたおじさんだったので、ここでも「またお前らか」みたいな扱いされた。
ちなみにお値段は金貨一八枚。ワイバーンが三〇枚だったからそれより安い。
やっぱワイバーン丸ごとと、ロックリザードのぶつ切りでは価値が違うか。全部は持ってきてないしね。肉も食べられないだろうし、血もないし。
しかし結構な稼ぎになったのは事実。
お小遣いとか抜かして、パーティー資金は金貨六〇枚ほど。富豪ですな。
これもうパーティーホームにしちゃった方がいいのでは?
「うん、装備とか考えても結構いいとこ住めそうですよね」
「ん」かっくん
「とりあえずベット湿原に行ってマリリンさんにお土産したいから、そこから帰ってきたら物件探そうか」
「ベット湿原はいつ行きます?」
「うーん、野営が絡むから明日は準備に当てて、明後日かな。早い?」
「ボクは大丈夫ですよ」
「ん。だいじょぶ」
そんな感じでその日は宿へと帰った。
……しかし予定とは確定した未来ではないのだよ。
♦
翌朝、宿での朝食を終え、さあお店を回ろうかという所で見知った顔が近づいてきたのだ。
それは無精ひげを生やした、見るからに変質者と思えるおっさん。
「よお、おはようさん」
「変質者のくせに部屋に侵入しなかっただけ褒めてあげるわ」
「朝から辛辣すぎるんだが?」
職管理局の監視員、私担当のアロークのおっさん(三二歳)だ。
とてもこれが国の役人とは思えない。
「悪いけどちょいと付き合ってくれ」
「えー」
「頼み事なんだが半分強制みたいなもんだ。諦めてくれ」
「うわぁ、三人で?」
「だな。まぁピーゾン一人でもいいんだが、三人のほうが良いだろ」
「やだー、なんか嫌な予感するー」
「アハハ……ボクは構いませんよ。どうせ今日はオフですし」
「ん。買い物と食べ歩き」
そして有無を言わさず私たちの前を歩きだす。
何なんだよもう。半分強制の頼み事? 頼んでないよね絶対。
「で、要件は?」
「着いてから説明する。さすがに天下の往来じゃ無理だ」
「じゃあ目的地は? 管理局?」
「いや、王城」
「「王城!?」」「?」
ドゥーデドゥデーン、ドゥードゥデドデーン




