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42:毒使い、オークの集落に襲撃する



「「「うわぁ……」」」



 珍しくネルトまでもが感情を露わにしている。

 あの後、オーク三体の足跡を追ってきたら、案の定オークの集落を発見したのだ。

 なんでこんな王都の近くに……と思ったが場所的には新人冒険者たちの探索する森の浅いところと、中堅冒険者の探索する奥地の中間といったところだ。

 非常に中途半端で微妙に分かりづらい位置とも言える。


 で、木陰に隠れたままその集落の様子を見てみた結果が冒頭のセリフである。


 思っていたより集落の広さが大きい。家と言っていいのか木材や枝葉を積み上げて建てられたものがいくつかある。

 そして絶対に家に入りきらないだろうオークの群れ。

 目測で三〇体くらい? もしかすると四〇体いくかもしれん。



「ネルト、あの家とか『グリッド』で見れる? 何体いるか分かる?」


「んーん、届かない」


「ど、どうしますピーゾンさん、これBランクとかAランクの案件だと思うんですけど」



 だよねー。私もそう思うよ。

 はっきり言って私たち三人じゃ荷が重い。この集落の情報だけでも持って帰れば貢献ポイントものだろう。

 ただこれだけオークが増えるってのは何かしら原因があるだろうし、例えば連れ去られた女性が現在進行形で犯され続け、産み続けてるとすれば一刻も早くって思っちゃうんだよね。

 冒険者としては失格なんだろうけど、女としては度し難いって言うか、やっぱこれも前世知識の影響なのかもしれない。一個人の安否を大切にしたり性犯罪に対する嫌悪感みたいなところで。


 とは言え私だって怪我も死ぬのも犯されるのも怖いもんで悩んでるんです。


 すぐに引き返すか、ある程度偵察してから引き返すか、殲滅するか……どうしようかと三人で相談していたところで、オークの別部隊が集落に戻って来た。

 うわ、まだ増えるのか……と思ったが注目すべきはそこじゃない、とすぐに気付いた。



「ピーゾンさん! あれ!」


「担いでる……女の人?」


「うん……! 助けるよ! もう全部倒すから!」


「う、うん!」「ん……!」



 Dランクのオークが約四〇体。私たちに出来ることなんて限られている。

 特に二人には荷が重すぎる。やれるのはポロリンが<挑発>から一~二体同時に相手するのが限界だろうか。ネルトは<念力>で盾を作るのと敵の邪魔をする事くらいだろう。


 必然的に私の負担が大きくなる。それは構わない。

 まずは覚えたばかりの<毒雨>で広範囲を麻痺らせる。『麻痺毒』の<毒雨>は消費MP12だ。そればかり使ってたらガス欠になる。

 おまけにオークを麻痺らせる確率は六~七割。一回だけでは絶対に″抜け″が出る。


 麻痺らなかったオークは魔剣で処理するか、ポロリンが<挑発>する。ポロリン側に行ったオークはネルトの盾を併用しつつ、トンファーで撲殺してもらう。



「――って流れになるよ」


「ん」「りょ、了解っ!」


「悪いけど気構えをさせてる時間もないよ、さっきの女の人が危ない。ポロリンは麻痺らなかったヤツを選別して<挑発>していって。ネルトは基本防御、可能ならポロリンの相手をフォローしてあげて。MPポーションは全部渡すよ」


「ん」「了解っ」


「んじゃいこうか! 【輝く礁域(グロウラグーン)】作戦開始!」


「「おお!」」





 突然の黄色い豪雨。

 私の<毒雨>から始まる突撃は、最初こそ気付かれなかったものの、たちまちオークの集落中に、知られることとなった。

 なるべくオークが集まっている所にダッシュで近づき、<毒雨>による広範囲麻痺。そのまま私が突貫するともれなく私も麻痺るので要注意。しゃれにならん。


 とは言え、麻痺らなかったオークも居るわけで、そいつらは棍棒を振り上げ私に迫って来る。



「<挑発>!」



 目の前のオークが急に方向を変えてポロリンへ。ナイスセクシー。あいつは二人に任せよう。

 他にも麻痺らなかったオークが向かって来る。

 そいつらは回避からの魔剣一閃。首か足かザクッとやる。

 何体か集まっているなら<毒霧><毒弾>でまた麻痺狙い。なんとなくだけど毒弾>毒霧>毒雨って感じで麻痺らせやすい気がする。範囲が広がると効きにくいような。

 そんな事を考えながらも魔剣を振り続ける。



「<念力>」


「ありがとうネルトさん! そっちの一体お願い!」


「ん! でももうMP半分」


「了解! なんとか早めに倒すよ!」



 二人はなんとか保っている。ポロリンは私と特訓してたからアレだけど、ネルトが思いの外連携を意識してくれている。

 ボーッとしてるから心配してたけど頭が良いし、恐怖に竦むこともない。予想外にいい拾い物だわ。


 ポロリンもDランクのオーク相手によくやってる。

 オークは肉厚だから防御力高いし打撃も決して有効じゃないと思うんだけど、防御主体からのカウンターで良いダメージを与えている。その代わり時間はかかってるみたいだけど連撃で補っているようだ。

 何気にトンファーキックのノックバックが有り難い。ポロリンも今頃そう思っているんじゃないだろうか。



 そうして何体も何体も斬り捨てていく。

 攫われていた女の人も住処に運ばれる前に確保できた。

 まぁ確保って言っても周りのオークを麻痺らせただけで、女の人も<毒雨>に巻き込まれて麻痺ってると思うんだけどね。とりあえず近くの地面に寝たままだ。あとで治すから許して欲しい。


 ―――バコオン!!!


 突然聞こえたその音は一番大きな家(?)からのものだ。

 慌てて見れば入口と思われる扉が内側から吹き飛ばされている。

 そしてそこからヌゥと現れる巨体。



「でかっ! 何あれ!」


「わ、分かんないよ! ハイオークか、もしかするとオークキングかも!」


「お肉いっぱい」



 あいつがボスか! あんなのが居たからこれだけオークが集まってたのか!

 しかしヤバイな。

 オークもまだ何体か残ってるのに……。



「ポロリン、ネルト! 女の人を守るように陣取って! オークから守って!」


「ん!」


「ピーゾンさんは!?」


「私はボスを頂くよ! 終わったら援護に行く!」



 そう言い残して、私はボスに突貫した。

 魔剣を肩に乗せ、ダッシュでボスに近づく。

 途中に居るオークは<毒弾>でとりあえず撃っておく。これで麻痺らなければポロリンの<挑発>に任せよう。



「ブルルルルアアアアアッッッ!!!」



 ボスが咆哮を上げ、こちらを睨む。

 身の丈二メートル半、右手には刃こぼれした特大剣。何の動物の皮だか分からないがレザーアーマーのようなものを身に纏う。

 噴き出すように立ち上るのは殺気か覇気か。少なくとも十歳の女の子が戦う相手じゃないな、と自嘲する。



「はんっ! 上等っ!」



 それでも私は前に出るよ。そういうスタイルなもんでね!




ドゥーデドゥデーン、ドゥードゥデドデーン

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