41:毒使い、乱獲を始める
我々には金が必要だ。
揃えきれていない装備品、毎日の宿代・食事代、日用品もろもろ、パーティーホーム資金、ネルトの食事代、ネルトのおやつ代……などなど。
我々には金が必要なのだよ!
依頼成功報酬、それもそうだけど倒した魔物はちゃんと剥ぎ取りして、ギルドの買い取り窓口に持ち込む。ぶっちゃけそっちのほうがお金にはなる。
本当に金目的ならダンジョンに潜るところなんだけど罠が怖いしね。私がスーパー回避したところで二人が死んでしまう。
そんなわけで適度に強い魔物をなるべく多く倒したい。
第二目的として、我々には経験値が必要だ。
特にネルトはまだレベル1だし事故が怖い。何気にポロリンもまだ一桁だからね。レベルアップを図りたいところ。
職業レベルもそうなんだけど、スキルレベルも上げたい。これもやはりネルト優先なんだけど私もポロリンも。だからなるべくスキルを使おうと思っている。
スキルレベルを上げる方法は様々だ。
職業レベルと共に上がる場合、使用回数(熟練度?)によって上がる場合、何かしらの条件で上がる場合……とある。
何かしらの条件って言うのは、例えば【鍛冶師】の鍛治レベルであれば『ミスリルを一定品質で打てたら〇レベルになる』とかがあるらしい。
私たちの場合みんな固有職で、未知のスキルが多いからどうやってスキルレベルが上がるのかは分からない。私のスキルはワイバーンを倒して膨大な経験値と共に上がったから、それが職業レベルによるものなのか、熟練度によるものなのかよく分からないんだよね。<毒感知>は熟練度っぽいけど。
まぁ深く考えてもしょうがないんだけど、念の為、なるべくスキルを使って魔物を倒しましょうという事だ。
「というわけで私は<毒感知>と<毒弾><毒霧>をなるべく使うよ。ポロリンは<呼び込み>と<挑発>、ネルトは無駄撃ちでも<空間魔法>のグリッドで探索と<念力>で魔物にちょっかいを出す。ポロリンの後ろからね。タンクは基本ポロリンで行こう」
「了解!」「ん」かっくん
「森の浅いところだとコボルトくらいしか出ないから依頼は最悪帰り際にでもやるとして、とりあえず奥に行っていい感じの魔物が出るところまで進もうか」
依頼を受けたのは平原に近い森で出る魔物や薬草・毒草類だけ。
奥に行く途中でゲットしてもいいし、それまでに見つからなければ帰り際に集めればいい。
ある程度森の奥に入って、出来ればDランクのイノシシあたりが出るくらいの場所が理想かなぁ。そこで周りに冒険者が居なければ<呼び込み>祭り実施です。
♦
森は木々が密集しているところもあれば、ある程度拓けているところもある。
川が流れていたり、ちょっとした滝になっているところもある。そこら辺を目印がてらに戦場として<呼び込み>しまくった。
コボルトとか角カエルも出て来たけど、ブラックウルフの群れが釣れた時には少し驚いた。
こいつらはEランクなんだけど嫌われ者だ。基本的に群れだし、その群れの規模でランクが上がる。七体以上でDランクだったかな?
今回は六体だったから私たちとランク相応だったんだけど、さすがに初見だしネルトからすれば格上だ。
私は麻痺毒の<毒霧>を解禁し、数体の狼を麻痺らせながら戦った。二人には抗麻痺薬を渡してあるので私が自爆したら使ってもらうという感じ。
またブラックウルフには100%毒させる事ができないと分かった。これも収穫。まぁ何度か<毒弾>打てばいいだけなんだけど。体感六~七割って感じかな。
そうして倒しては剥ぎ取りと繰り返す。
結構なペースで倒せていると思う。みんなレベル上がってるし。
MPの関係で休みながらだけど、一番MP使うネルトが『MP回復増進』のローブ着てるからね。マリリンさんありがとう、助かってます。
ある程度<呼び込み>で倒したら少し場所を変えてまた同じルーティーン。
と、何度か繰り返していた時だった。
まず私の『気配察知』に引っ掛かる反応、そしてネルトのグリッドで森の奥に居る存在を確認をする。
「オークかぁ……」
「ん。三匹いる」
「群れ? いや集落でもあるんですかね?」
オークは成人男性よりも背の高い、二足歩行のイノブタだ。ゴブリンと同じように棍棒を持っている。ランクは単体だとD。
危険なのは群れで居る場合が多い事と、人間の女性を攫い、それによる繁殖力が高い事。その為見つけたら徹底的に殲滅するのが推奨される。ついでに肉が美味い。
さてどうしようか。
集落があるなら潰したいんだけど、こちとらEランク二人とFランク一人だからね。本来なら無謀なんだよ。
でも経験値的にもお金的にも味的にも美味しいんだよね。
「どうする? 集落を探して叩くか、あいつらだけ叩くか」
「叩くのは決定なんだね……」
「食べたい」
協議の結果、とりあえず三体を倒す。それで集落を探してみて、みつかったらその規模で決める、という事になった。
で、割とあっさり三体を倒せた。
ポロリンは、やはりオークのパワーに驚いたらしい。そして何故か<挑発>をかけずともオークが襲って来たらしい。これはオークの性欲センサーに反応したためと思われる。
「うそでしょ!? ボク男だもん! 狙われるわけないよ!」
などと意味不明な供述をしているが、私はそうだと確信している。むしろオークが狙わないわけがないと。
なぜこの期に及んで自分は男だと言い張るのか。
なぜ自分が本当は女だと認めないのか。
「ねぇ、ポロリンってチ〇コついてんの?」
「ついてるよ! て言うかチ〇コとか言わないで!」
「『グリッド』……チ〇コついてた」
「まじか」
「ちょっと、ネルトさん何してんの! グリッドで覗くのやめて!」
「大きめのチ〇コだった」
「ばかな」
「なな何言ってんの!? 女の子がチ〇コとか言っちゃダメだから!」
うーん、ミニスカチャイナでもそうは見えないんだけどなぁ。
不思議だ。まさか本当に男の子だったなんて……。
「ピーゾンさん! ジッと見ないで!」
そう言って恥ずかしい表情で身体を隠すポロリンは非常にセクシーだった。
ちなみに王都に来てからここまでの間で、レベルアップやスキル習得をしている。
特に今日のスパートが効いてるんだけどね。やはりポロリンの<呼び込み>は素晴らしいという事だ。ナイスセクシー。
新規取得のスキル及びレベルアップしたスキルはこちら。
・ピーゾンLv21(+2)
毒精製Lv3(+1):『腐食毒』追加
毒弾Lv3(+1):弾速・飛距離上昇
毒霧Lv2(+1):噴射距離上昇、噴射時間5秒
毒雨Lv1(New)
毒感知Lv4(+1):感知範囲拡大、感応上昇
・ポロリンLv13(+6)
挑発Lv2(+1):効果時間延長、ヘイト効果上昇
呼び込みLv2(+1):効果範囲拡大
セクシートンファー術Lv2(+1):アーツ『トンファーキック』習得
魅惑の視線Lv1(New)
・ネルトLv8(+7)
念力Lv2(+1):効力増大、効果範囲拡大
「トンファーキック……魅惑の視線……」
「元気だしなよ、ポロリン」
「ん」
本格的な検証は後日としたけど、分かっている限りではこんな感じ。
・腐食毒:″非生物″を腐食させる。″生物″には不可。植物には効くから森で使う時は注意。
・毒雨:前方45度くらいの扇状、5~30mくらいの距離まで毒の雨を降らせる。5秒くらい。
・トンファーキック:蹴撃による打撃ダメージに加えノックバック効果。
・魅惑の視線:対象一体に対して『混乱』の状態異常をかける。
「ちゃんとしたトンファー技が欲しかった……」
「そのうち出るよ、ポロリン」
「ん」
ドゥーデドゥデーン、ドゥードゥデドデーン




