04:毒使い、装備を整える
両親と相談した翌日、私はすでに家を出ていた。
あまり長居すると出て行きづらくなるし、【毒使い】が長期滞在するのも風聞が悪いだろう。食堂的に。
王都方面に向かうのはもちろんなんだけど、村で出来る事は出来る限りやっておく。
まずは冒険者ギルドだ。
都市や街のように支部はないけど、出張所はある。
「あらピーゾンちゃん、どうしたの?」
「こんにちは。仮登録に来ましたー」
「ええっ!ピーゾンちゃん冒険者になるの!?」
受付のおばちゃんがカウンターに座ってるだけの簡易的な出張所。村のギルドなんてこんなものだ。
おばちゃんも村では顔なじみなので、よく挨拶とかする。
私が食堂でお手伝いしているのも知っているので、冒険者になると言ったら驚いていた。
ギルドカードを作る際にどうせ職登録する事になるので、私が【毒使い】になった事を説明した。もちろん秘密にしといてね、とは言ったけど。
おばちゃんも食堂に時々来るから私の気持ちは分かってくれたらしい。若干涙ぐんでたし。
出張所では冒険者ギルドへの正規登録はできない。
支部がある所でしか無理なのだが、出張所でも仮登録証の発行はできる。
これがないと街に入った時の身分証明にならないので、村で入手する必要があったのだ。
おばちゃんに軽く別れの挨拶をし、再び涙ぐむおばちゃんを後目に出張所を出た。
次は武具屋だ。
「らっしゃい!……ってピーゾンじゃねえか。どした?」
「えっとですね……」
武具屋のおっちゃんはガタイの良いヒゲマッチョ。こちらも食堂の馴染み。
ここでも冒険者になる事と固有職に就いた事を説明する。
【毒使い】とは言わない。ここでは固有職ですよと言う必要はあっても、職の詳細まで言う必要がないからだ。
でも固有職だって秘密にしといてね、とは言っておく。一応。
「まじかぁ……ピーゾンが出て行くなんてなぁ、ソルダードの奴もしんどいだろう。……ぃよし!俺が立派な冒険者に見えるように装備整えてやんぜ!まかせときな!」
おっちゃん、お父さんと仲良しなんだよね。うちで使ってる包丁とかもおっちゃんの手作りだし。
独身だからか私の事も娘扱いしてて、随分と可愛がってもらったもんだ。
少し気落ちした後に無理矢理笑顔を作ったおっちゃんは、腕まくりして装備の陳列棚に向かう。
装備品は職によって決まる。
【魔法使い】が剣を持てても、装備する事は出来ない。
装備してない武器で攻撃してもかすり傷すら付けられない。ダメージ皆無だ。
もちろん物理的に考えればありえない事だけど、この世界では常識である。
んじゃ【毒使い】ってのはどんな武器が扱えるのかって話しになるんだけど……
「えっ……まじかよ……剣も杖もナイフもダメ。斧、棍、弓……ダメか」
「えっと他には何かある……?」
「鎌?ワンド?槍?ダメか……なぁピーゾン。冒険者やめたほうが……」
何も言えない。
武器適正が何もないとは思わなかった。膝を付きたくなる。
ステータス的には戦闘職だよね?非戦闘職なら武器持てないのも分かるんだけど……。
もしかして【毒使い】って【薬師】的な何か?毒専門の【薬師】的な。
いやいや、そしたらスキルの【毒弾】とか訳わからないし。あれ多分【火弾】とか【水弾】みたいな攻撃魔法でしょ。
とりあえず何も武器を持たないってのもアレなので装備出来る刃物の中から鉈をチョイスした。
包丁とノコギリと迷ったんだけど、薪割りで使ってたし。木剣も非戦闘員用として装備できるんだけどさすがになぁ……。
ただ使ってたやつと違って刃渡り四〇センチくらいの大型サイズ。
これで何とか武器っぽく見えないかなーと期待している。おっちゃんは白い目で見ているけども。
気を取り直して防具も見てみるが、やはりと言うか重装備……鎧とか金属系、盾も無理だった。皮鎧もダメっぽい。
でも服やローブ系の軽装備は大丈夫そうだったので、なるべく丈夫な冒険者っぽい服を選んでもらった。地味な色合いだ。
「お代はいいぜ……なんて言うか、せっかくの門出だってのにちゃんとした装備させてやれなくて申し訳ないと言うか……武具屋として恥ずかしいと言うか……」
「あー、気にしないで。大丈夫!大丈夫だから!鉈強いから!」
思わずフォローしてしまった。そしてタダにして貰ってこちらが申し訳ない。
とりあえず気まずかったので、元気を装って苦笑いで退散した。
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名前:ピーゾン
職業:毒使いLv1
装備:武器・鉈(攻撃+0)
防具・布の服(防御+2)
皮のブーツ(敏捷+1)
布の外套(防御+1)
HP:21
MP:25
攻撃:13
防御:3(+3=6)
魔力:10
抵抗:4
敏捷:32(+1=33)
器用:20
運 :4
スキル:毒精製Lv1(衰弱毒)、毒弾Lv1、毒感知Lv1
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ドゥーデドデーン、ドゥードゥデドデーン