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22:毒使い、もっと稽古をつける



「よっ! ほっ!」


「うんうん、やっぱトンファーは回転力からの打撃が正義だね」


「はっ! ていっ!」


「そうそう、捻って打ち付け。連続で出来るように打ち付けから身体を流して繋げられるようにね。もっと速く、もっとスムーズに」



 基本的な動き自体はスキルで補填されてるから、あとは慣れだ。

 というわけで経験がてら魔物を相手にする事にした。



「なんて言うか、その、罪悪感が……」


「魔物相手にそんな事言っちゃダメだよ。駆逐せよ」



 ただいま無抵抗の麻痺ったゴブリンを撲殺中です。

 可哀想? いえ、討伐がお仕事ですから。

 グロい? 廃人『クリーチャーハンター』なめんなよ。あれに出て来る敵なんてマジクリーチャーだから。ゴブリンなんてかわいいもんだ。


 とは言えやってる事は『戦い』ではなく『殺し慣れ』なので私的にはポロリンに慣れる切っ掛けになってもらえばそれでいいんだよね。

 かと言ってこれをやらずに「ふぇ~ボク殺せないよぉ」とか「怖いよぉ」とか言われると、これはもうパーティー解散不可避なのでね。そんなヤツいたら全滅必死です。

 ただの道具屋の息子だった十歳の少年には無茶な仕打ちだと思うけど、必要な事だと理解して欲しい。まぁ慣れるまでは食事が辛かったり眠れなかったりするかもしれない。が、大丈夫。この世界にはポーションあるから。薬に頼れ。



 そんなことをしつつ、防御の練習も行います。

 どちらかと言えば攻撃よりも防御を上手くなってもらいたいです。私としては。



「例えばゴブリンがこう振り下ろして来る。よくあるパターンだよね」


「うん」


「この時ポロリンが防御しようとすれば、避ける・受ける・逸らす・弾くと大きく四つに分かれるんだよ。イメージできる?」


「うんうん」


「で、その動作をした後に攻撃に繋げるか、また防御するかで二択になる」


「……八パターンを考えて防御しろ、ってこと?」


「いや『どう攻撃するか』『どう防御するか』でも分かれるから三〇~四〇パターンになるね」


「む、無理だよぉ」



 だろうね。まあ相手がどんな攻撃してくるか、どんな攻撃が効くかにもよるから、その場その時で違うんだけど。まぁこれは身体で覚えてもらうしかない。

 つーことで今は振り下ろしに対する避け・受け・逸らし・弾きだけを練習しましょ。

 私は木剣でポロリンに向かって振り下ろす。速度はゴブリンの1.5倍くらいで様子見。



「痛っ!」


「衝撃はあってもダメージないでしょ? これ木剣だし。もう一度ねー」


「よっ!」


「最初から振り下ろし想定してちゃダメだよ。私が振り下ろすって分かってから動いて」



 攻撃と防御の訓練をそれぞれ行う。蹴りを組み込んで体術の動きを意識した訓練を行う。その上で私と実戦的な模擬戦を行う。

 そんな訓練を一日の大半使ってやって、合間を見てギルドのFランク依頼を行う。もはや依頼が息抜きのようなものだ。ゴブリンと角ウサギが不憫です。


 何日かやって分かった。

 それはポロリンが非常にタフだと言う事。精神的にね。

 めげないし、食らいついてくる。真剣に強くなろうとしている。



「これ続けたら絶対に筋肉ムキムキになるよね!」



 動機はアレだけど前向きでありがたい。

 ちなみに今現在、華奢で可憐な美少女のままです。

 でも「ちょっと筋肉ついてきたんじゃない?」とか言うと非常に喜びます。



 南門付近での訓練を四日でやめて、北門側でやり始めてみた。

 こっちだとゴブリン・角ウサギではなく、ワイルドコッコ・牙ネズミ・青トンボなどが出るらしい。依頼も一応受けて来た。

 ネズミとトンボはFランク、コッコがEランクだ。

 危険を冒すつもりはない。まずは私の麻痺が効くか調べてから訓練相手にしようと思う。



「やっぱり効くね」


「効いちゃうね」


「どうしよっか。ボクも戦っておきたいんだけど」


「私も回避練習したい。毒らせるだけにしとこうか」



 北門側の魔物は南門側のゴブリン・角ウサギに比べてちょこまか動くのが多い気がする。小柄ですばしっこい。

 ポロリンの練習にはちょうどいいかもしれない。何体も同時に戦うし、多方面からの素早い攻撃に両手のトンファーで防ぎ切れるか。そこからの攻撃で倒せるか。<呼び込み>と<挑発>を織り交ぜながら戦ってもらおう。


 私は私で小柄な敵に対する回避と、衰弱毒にするとどれくらいで死ぬのか検証。だいたいのHPが分かる。

 まぁ私と同じように十秒10ダメージだったら、だけど。人と魔物で違うのか、魔物によっても違うのか、そこら辺は分かりません。


 あ、コッコはシェラちゃんにお土産します。





「これでポロリンさんもEランクですね」


「うわぁ! やったよピーゾンさん!」


「うむうむ」



 北門側で訓練を始めて三日目、登録から七日でポロリンがEランクに上がった。

 FランクからEランクへの昇格条件は『討伐依頼五件を含む、Fランク依頼の二〇件達成』というもので、戦闘職となった冒険者であれば入門編のような扱いだ。非戦闘職や形だけの冒険者であっても上げやすいようになっている。

 これがDランクへの昇格となると『Eランク依頼の一〇〇件達成』となり若干難しくなる。おまけに昇格試験のようなものもあるので、一般的にはEランクまでが初心者扱いされる。

 Dランクが一人前、Cランクがやや強い、Bランクがベテラン、Aランクがヤバイ、Sランクが英雄……って感じかな。


 ホントはもっと早くに昇格できたんだろうけど、訓練第一でやってたからね。

 急いでランク上げる事もないし問題ないでしょう。



「どうする? もう王都行く?」



 ポロリンがそう聞いてくる。

 元々オーフェンに滞在していたのは、スキルを検証する為、冒険者というものに慣れる為、そして王都までの旅費を含めた金策の為だ。

 そこにポロリンの加入があり、ポロリンのスキル検証と冒険者として戦う準備も加わった。

 ポロリンにはそういった事を説明して「とりあえずEランクになったら王都に向かおうか」と言ってある。ワイバーン資金も含めて目的は達したと言っていいでしょう。


 でも、一つやっておきたい事があるんだよね。



「行く前にオーフェンのダンジョンに行ってみたい」


「ダンジョン?」




ドゥーデドゥデーン、ドゥードゥデドデーン

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