閑話3:娘からの手紙
拝啓 お父さん、お母さん。
私は元気で冒険者やってます。怪我もしてないので心配しないで下さい。
オーフェンの街の人たちは皆いい人たちばかりで、宿屋のシェラちゃんは明るくて元気だし、ギルドのお姉さんや道具屋のおばちゃんも色々と教えてくれる人たちばかりです。
ただ国の職管理局の担当の人が変なので、もし調査とかでそっちに行ったら気を付けて下さい。
あ、そうそう。やっぱり私の職は危険視されていたらしくて、早くもその担当さんが挨拶に来ました。この早さで調査・報告するのは異例みたいです。
とりあえず冒険者になる事は承知してもらったので、国で囲われるって事はないみたいです。
でもなるべく早めに王都に行ったほうが良さそうなので、もう少し冒険者の仕事に慣れたら向かうつもりです。その前にまたお手紙書きます。
あと、パーティーメンバーが出来ました。
私と同じく固有職に就いて悩んでいたポロリンという道具屋さんの子供です。一緒に冒険者になって王都に行くつもりです。
王都に行ったら定宿か借家をみつけようと思います。そしたらそっちからの手紙も来そうだしね。今から楽しみです。
追伸
ワイバーンを倒していいお金になったので出ていく時に借りた金貨五枚を同封しておきます。散財するつもりはないですけど王都で暮らせるくらいには溜まったので安心して下さい。
ただワイバーンのお肉をもらい損ねたのがショック……。あのお肉でお父さんの料理が食べたかったなぁ。しばらくお父さんの料理が食べられないのが残念です。
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「うおおおお! 俺の料理を食べさせてやるぞ! オーフェンまで行って作ってやる!」
「あの子ったら金貨は貸したわけじゃないのに! あげたのよピーゾン! 返すことなんてないの!」
「なんていい子なんだ、うちの娘は!」
「……ちょっと落ち着け、ソルダード、ピエット」
俺はファストンの武具屋ベルダだ。
何やらピーゾンから手紙が届いたとかで馴染みの食堂に来てみればこれだ。
俺だってピーゾンの事は心配してたんだぜ? だがよ、こいつら見てたら何か冷めちまうよ。
「いいかお前ら、手紙をよく読め。大事なのはそこじゃねえ」
「なんだベルダ。他には……あっ! この管理局の担当ってヤツか! こいつもしかしてピーゾンに変な事を……!」
「た、確かに変な人って書いてあるわ! 大変! 国が敵に!?」
「国だろうが何だろうがピーゾンを害する輩は承知しねえ! 俺は相手になるぞ!」
「私だって! 一緒にピーゾンを守るのよ!」
「違う違ーう! そこも大事なんだが国が調査するのは当たり前だ! むしろ野放しよりマシだ!」
手紙にも書いてあったが異例の早さで目を付けられたって事だな。
それだけ【毒使い】を危険視してたと。
でもそれは俺たちよりもピーゾン本人の方がよく分かってる。あの日のピーゾンの様子で俺はそう確信した。……少なくともこの夫婦よりは現実を見てるはずだ。
だが裏を返せば、何かが起こった時に国がすぐに動ける体制にあるってことだろ?
国だって固有職のピーゾンをみすみす死なせたくないはずだ。だからいざとなれば国が助けに入るはず。
冒険者として活動するなら危険はつきもの。それが少しは緩和されるんじゃねえかと、俺は少し安心したくらいだぜ。
「そうは言っても……あっ! このポロリンって子か! 男か女か書いてない! もし男だったらどうする!? 男女二人でパーティーだと!? マズイマズイマズイ!」
「まあまあまあ! そうだったらいいわね! 是非とも一緒に来てほしいわぁ! アルス以外で初めてじゃない、同い年の男の子なんて!」
「いやいや勘弁してくれ! 危険を潜り抜けた男女二人の行く末なんて……ダメダダメダダメダ! お父さんは許しませんよ!」
「いやそれはいいけどよ、俺が言いたいのはそれでもねえよ」
固有職で冒険者になってパーティー組むのに苦労するだろうとは思ってたさ。命を預ける仲間に全てを打ち明けられるかってな。
でもまさか他にも冒険者になろうって固有職がたまたまオーフェンに居るとは……これは運が良いと俺は思うぜ。
王都まで行けば全国から固有職が集まるんだから組めるかもな、とは思ってたがな。
「なんだベルダ。もう他に注目するポイントなんてないだろ」
「ワイバーンだよ、ワイバーン! なんで倒してんだよ! あいつまだ冒険者になったばっかだろ! 倒せるはずねえよ!」
「ああん? お前ピーゾンが嘘ついてるとか言うのか!」
「ピーゾンは嘘つく子じゃありません!」
「違ぇよ! お前らめんどくせえ!」
俺はこの親馬鹿……もとい馬鹿親どもに、コンコンとワイバーンの強さ、怖さを説明してやった。
Bランクの魔物でファストン村に現れでもしたら総出で逃げるレベルだと。間違っても新人冒険者の一人二人で勝てる相手じゃないと。
だからベテラン冒険者がたまたま一緒にいたか、国の役人が援護に入ったか、そうでもなけりゃいくら【毒使い】だって倒せる相手じゃねえんだってな。
「……つまりうちの子はスゴイって事だな!」
「やっぱり天才ね! ピーゾンは!」
……もう何も言う事はない。




