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16:毒使い、麻痺とか検証する



 ワイバーンと変質者に会った翌日。

 いつものように出掛けようと宿の入口に行くと、受付で座っていたシェラちゃんの表情が曇っていた。


「おはよーシェラちゃん、どうしたの?」

「あ、お姉さんおはよーです。あーえーっと、何でもないです」


 そんないかにも「何かあります」って顔されてもなぁ。

 お母さんにでも怒られたのかな? しっかり者のシェラちゃんが怒られるイメージないけど。


「……やっぱ、帰ってきたらお姉さんに相談あるです。ちょっと聞いてほしいです」

「ん? まぁ分かったよ。とりあえず行ってくるね」

「はい、いってらっしゃいです!」


 少し元気になったシェラちゃんに見送られ宿を出た。

 私に相談するくらいで解決するんならまぁいいか。聞くだけ聞きましょう。



 その後、いつもの道具屋でおばちゃんから抗麻痺薬を買う。

 五個で銀貨三枚(約三千円)。高いのか安いのか……。


「まぁた初心者らしからぬ物を……」

「念の為です」


 適当に濁しつつ、冒険者ギルドへ。

 いつものようにウサギと毒草採取の依頼を受け、いざ街外。





「あー、<毒感知>の反応が全然違うわー」


 森へと向かう時から使い始めた<毒感知>が昨日までの反応とは違う。

 Lv1からLv2に上がった時は感知距離が10mから20mに変わっただけだけど、Lv3の今は多分30mの距離に加えて、いくつか違う反応も混じってる。

 行って確かめるしかあるまい。


「……ん? いつもの毒草と違う? これも毒草なのかな?」


 近づいてみると、いつも採取している毒草の他にも何種類かの草花が反応していた。

 感知に色がついてるわけじゃないけど、反応する色が違うというか、感知の感覚が違うというか、とにかく何種類かの草花が別々に感知できる。


「とりあえず一種類ずつ持って帰って見て貰おうかな。で、いつもの毒草の反応はっと……」


 ああ、採取ばっかしてるわけにいかないんだ。

 戦闘の前に確かめておかないと。

 まずはLv2になった<毒弾>から……


「うわっ、何これ……あ、選べるのかな?」


 右手のピストルの先に出すボール。それを作る前に一作業入る感覚がある。

 どうやら<毒精製Lv2>で追加された<麻痺毒>と従来の<衰弱毒>が選べるようだ。

 毒の種類を選ぶ→スキル発声→ボールを作って発射 って感じかな?

 まずは<麻痺毒>で行ってみましょ。


「麻痺で……<毒弾>!……はやっ!」


 出たのは黄色の野球ボール大の麻痺毒。ただ速度が今までと全然違う。

 これまでが150km/hの剛速球だとすると、多分200km/hくらいじゃないかと。

 シュン!って感じ。これ近くで撃たれたら私でも避けられないわ。

 これでLv2とか……。先が怖くなるね。


 一応、衰弱毒の方でも試してみたけど速度は同じ。

 ただ衰弱毒の<毒弾>が消費MP2だったのに対し、麻痺毒の<毒弾>は5だった。

 随分上がるなぁ。まぁ今はMP100以上あるから問題ないけど。

 あ、<毒感知>はLv3になっても消費MP1のままです。使い放題。


「あとは麻痺の効果の検証と……<毒霧>かぁ」


 なんか嫌な予感がするんだよね。<毒霧>って。

 一応、左手に初級解毒ポーションを持ち、右手を前に出す。ピストルではなく手のひらを前に出す感じで。


「衰弱毒の……<毒霧>!……おおおお」


 ブシュウウウウ!って音はしないけど、そんな感じで右手から霧が出る。紫色の殺虫剤を噴射してるみたい。

 ……三秒くらいかな? 噴射し続けて止まった。

 紫の霧もそれで消えるっぽい。良かった。ホントの霧みたいにその場でしばらく残るとか、風下に飛んでくるとか考えてたよ。

 消費MPは……これも5か。


「これ、噴射したまま薙ぎ払えるのかな?」


 <毒弾>が単体攻撃だから<毒霧>は範囲攻撃かも。

 うまくすれば何体かの敵に一発で毒らせるかもね。消費MP考えると三体同時なら<毒霧>のほうがお得なのかな?

 まぁ相手の抵抗値もあるだろうから考えるだけ無駄か。

 高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処しよう。


「麻痺毒バージョンの消費MPも調べたいけど……麻痺毒の検証してからにしよう」


 さすがに怖い。万一自分が麻痺ったらマジで終わりそうだ。





 それからゴブリン相手に麻痺毒の<毒弾>で何回か試してみた。

 結果、全てのゴブリンが一発で麻痺った。やはり抵抗値が低いのか、私の魔力値が上がったせいなのか。衰弱毒も試したけど100%毒った。

 ワイバーン戦の前だとここまでじゃなかったんだけどね。やっぱ魔力値か……運の可能性も微レ存。今『運:24』だし。


 で、麻痺ったゴブリンを放置してみた。

 放置している間に別のゴブリン相手に敏捷アジャスト名目の回避練習を行い、毒草を採取し、お土産用にウサギを狩り、新反応の草花を採取し、またゴブリンを毒殺し、解毒ポーションで麻痺毒が治らない事も確認し、ゴブリン相手に<毒霧>の練習をし……


 ……まだ麻痺ってた。

 やっぱ永続なのかもしれん。このゴブリンは放置して明日また見に来よう。


 となると、やっぱ麻痺毒の<毒霧>を試すのが怖い。

 誰かそばに居る状態じゃないと使いづらいなぁ。


 ……あっ、おっさん監視してるじゃん!


「おっさーん! 居るー?」


 シーンとした森には木々のさざめきと風の音が……。

 居ないのかよ! いや、居ても滅多に顔を出しちゃいけない監視員ルールなのか?

 まぁ考えてみれば報告もあるのに四六時中見張るわけないのか。

 はぁ、肝心な時に使えない変質者だ。


「とりあえず今日はこんなもんかな。帰るか」





「これはペルロン草、こちらはツリート草とセセランの花。どれも錬金素材ですね」

「あーこれが……」

「いつもの毒草はネネリ草と言って解毒ポーションの材料になります。こちらは麻痺草や痺れ草、抗麻痺薬や様々な薬の材料になりますね」


 どれもFランクやEランクの依頼ボードで見た名前だ。現物は知らなかったけど。

 そっか、麻痺草とか言われてるのがこの草花だったのか。

 ということは麻痺毒が使えるようになったから、その薬に対応した毒草が分かるようになったって事かな? まぁギルド的には毒草じゃなくて麻痺草とかなんだろうけど。

 ……つーか、毒草で解毒ポーションが出来てたのか。錬金恐るべし。


 束で持ってきたわけではないので納品して依頼報酬……というわけにはいかず。まぁ依頼自体受けてないんですけど。とりあえず持ち帰る事にした。

 明日正式に依頼を受けてその時一緒に納品しよう。


 さて、宿に帰りますか。

 ……あ、そう言えばなんか相談がどーのこーの言ってたな。




ドゥーデドゥデーン、ドゥードゥデドデーン

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