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#6 ライフラインと魔法文明

 案内してもらった食堂はそれなりの人数であふれていた。

 安くおいしいものが食べられるらしく、ビギナーに人気あるみたいだ。


 ギルマスは食堂のおばちゃん達のところへ案内すると、俺のことを紹介してくれた。

 これで、これから1か月無料で飯にありつけるらしい。

 食堂のパス券がもらえると思っていたら、アナログ顔認証式か。ある種新鮮だ。

 堕ち人が少ないからできることとはいえ、ファジーすぎる。


「水は水差しから適当に飲め、空になったら入れてもらえる」


 食堂だが、不思議なことに水道は一切なかった。

 基本的に水は魔法で生成するものらしい。

 食堂のおばちゃん達は全員水魔法を使い手なんだそうな。

 確かに人が簡単に出せるなら、わざわざ水道を引く必要はない。


 しかし、そうなると疑問がでてくる。


(トイレは一体どうなっているのだろう?)


 水が引かれていないなら、どうやっても流せない。砂だろうか?

 後程案内してもらおう。


 食堂のメニューは1択で、イモ+シチュー+肉だった。

 味付けは塩ベースだったが結構おいしい。

 シチューには野菜が豊富だし、イモも淡泊ながら食べやすかった。

 ギルマスと2人で面を合わせながら食事をとった後に、さっそくトイレに案内してもらう。

 食堂内に2つあり、どちらも男女兼用とのことだった。

 トイレはこちらの文字でトイレと書かれてあり、外見は普通。

 しかし、ギルマスがドアを開けると、果たしてそこには

 

 『地面に穴があるだけの小さな個室』


 しかなかった。


(……トイレ?)


「なんで堕ち人どもは、どいつもこいつも妙な反応を返すんだろうな」


 砂のトイレぐらいまでは覚悟していたのだが、穴だけはさすがに予想していなかった。

 なにもなさすぎるのは逆にインパクトがある。


 やれやれといった態で、ギルマスは「出すもの出して穴に入れりゃあいいんだよ」のたまった。

 聞くと穴のそこにはスライムがいて、そいつが全部食べてくれるのだそうな。

 効率的だが、なかなかのカルチャ-ショックだ。

 スライムをそういう使い方するとは……。

 某有名RPGのあいつらが頭に浮かぶのだが、今後は見方が変わりそうだ。


「え、ええと、尻を拭くものはないんですか?」


「共用のものなんてあるわけないだろ、気持ち悪い。」


 気持ち悪いときた、使い捨ての概念はなさそうだ。

 トイレには文化に違いが詰まっているなぁ。トイレだけに。


「洗浄の魔法を使うか、自分で持ち込め。」


 洗浄の魔法リングはDPで安く買えるそうだ。

 シャワーも服も洗浄の魔法で済むらしい。魔法便利すぎだな。

 要所要所で科学のはるか先を行く。


「一応、風呂屋は近くにあるぞ。高級娯楽施設だから高いがな」


 しかし、要所要所では科学の遥か後ろを走るらしい。風呂が高級て。

 古代ローマですら一般人が安く利用していたはずなんだが。

 魔法のせいで、便利不便が極端に2極化している気がする。


 トイレであまり長話をするのも変なので、説明が終わるとさっさと離れた。

 トイレの次は寝床だ。

 2Fへ連れていってもらうと、個室がいくつも連なっていた。

 2階は全て寝室になっているらしい。

 うち一室に案内され、中を見ると3畳間にポツリとベッドだけがあった。

 本当に寝るだけの場所だ。


「鍵はこれな」


 そういって、石の閂を指さす。結構大きい。


「か、鍵は魔法じゃないんですね」


 急に原始時代がやってきてびびる。


「高いからな」


 鍵開け魔法を無効にするドアは高級宿にしかないそうな。

 それ以外のドアは、どうやっても鍵開け魔法の前に敗北するらしい。

 敗北するのが確定なら、いっそ鍵はつけず物理的に塞いでしまえという回答が目の前の重い石の閂だった。


「魔法って(いたちごっこのせいで)思ったより不便ですね」


「なんで便利だと思ったんだ?」


 なんででしょうね、憧れのせいかな?

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