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#55 キラー衛星アースエレメント

《嫌い嫌い!》

 ザクッブシュ、キュゥ

【36DP獲得しました】


《嫌い嫌い嫌い!》

 ザクッ、ベコッ

【38DP獲得しました】


《嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!》

 ザシュザシュザシュ

【38DP獲得しました】

【34DP獲得しました】

【41DP獲得しました】


 俺の目の前の魔物が一匹、また一匹、と死滅していく。

 スマホに落ち着いた精霊さんは無事、ダンジョンに連れて行っても大人しかった。

 相変わらず瘴気は嫌いみたいだったが、瘴気以上にスマホのほうが好きだったみたいだ。

 おかげで、”入口までは”ポケットの中で大人しくしていた。

 誤算だったのは、精霊さんは瘴気も嫌いだが、それ以上に瘴気の塊である魔物がもっと嫌いだった。

 精霊さんは魔物を知覚すると、全て岩槍で串刺しにしてしまわれていた。


(なにこの自動キラービット)


 知覚すると即反応、串刺しである。

 おかげで俺は歩くだけで、DP収入をガツガツ得ることができていた。

 便利でいいのだが、生物が一瞬で切り刻まれる様は非常に恐ろしい。

 あの攻撃が俺に向けられたらと思うとぞっとしない。


(魔法を使える敵とは向き合いたくないな)


 なにせ、回避する間もない。

 人間の反射神経では無理だろう。

 下層のほうには、魔法を使う魔物もいるらしいが、俺はそこまでいかないことを心に決めた。

 

(それにしても、変わるものだなぁ)


 数時間前まで逃げに徹していた精霊が、殺戮兵器に早変わりである。

 クロモリといい精霊といい、ダンジョンには大人しかった人を変貌させる何かがあるのだろうか。

 

(俺は変わっていないと思うけど……)


 もし、人のサドっ気を呼び覚ます力があるのだとしたら、リュシルには絶対にきてほしくない。

 昼に精霊と戯れていた、あのままでいてほしいものだ。

 

(さて、こんなところか)

 

 俺は試しに2階まで下りて見たが、変わらず《嫌い嫌い!》で敵は死んでいった。

 素晴らしい攻撃力だ。

 試運転としては十分だろう。

 これで俺がコントロールできれば最高だったのだが、精霊は俺の要望を受け付ける気配はまるでない。


(使わないときは、送り返すしかないな)


 オンオフしかない、殺戮衛星。

 少々使いにくいが性能としては十分だろう。

 今後ダンジョン探索の主力になることは間違いない。

 この火力が何階まで通用するのか、持続力はどれくらいあるのか。

 調べることはいくつもあるが、とりあえず、俺は30分ほどで引き返すことにした。

 何も急いで調べることはないし、今日の稼ぎは十分に得ている。


(密室ガス作戦がなかったら、これで稼いでいたかもなぁ)


 DP消費もなく、ダンジョンを散歩するだけで収入が得られる。

 望むべくもないほど好待遇だが、今の俺はそれでは満足できなくなっていた。


(30分で7500か、少ないな)


 1時間働けば、1万5千DP。

 中堅冒険者でも泣いて喜ぶ高収益だが、俺にとっては物足りない。

 今の俺は1時間作業を行えば、7万以上のDPが得られる身分だ。

 少なくとも8万は稼げる見込みがないと、やらないだろう。

 

(良い身分になったものだなぁ)


 ずいぶんと贅沢になった。

 そういった意味では変わってしまったかもしれない。

 

(いや、昔から怠け者だった)


 贅沢になったのではなく、余計に働きたくないだけ。

 そう考えると、自分は何も変わっていない、はず。


(クロモリや精霊も、変わったつもりはないのかもしれない)


 変わっていないつもりでも、周りの人にとっては全然別人のような変化。

 俺自身にも、それは起きているかもしれない。

 

(今度、聞いてみるかなぁ)


 リュシルくんに変わったと言われたらショックかも。

 そんなことを思いながらダンジョンを抜けたのだった。

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