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#28 エルフとおしゃべり

 エルフは半精半人と言われる。精霊でもあり、人でもあり、どちらでもない。

 言い方を悪くするとコウモリみたいなやつだ。


 そんな彼らが人里に降りてくることは少ない。

 ただ、冒険者となると多少いる。

 それは、カタログリストから手に入るアイテムを求めてのことだという。

 事実、俺は何度か酒場で目撃したし、酒も運んで会話したこともある。

 彼らは果実酒を好む。

 動物性のものには全く手を付けないが、豆をもっていくと意外と普通に喜んでくれたりする。

 まぁ、偏食なだけで普通の人間ということだな。


 今日俺は、酒場のバイト中に、エルフの女性に果実酒を奢った。


「こちらは俺からのおごりです」


「はぁ?ありがとうございます」


 エルフは素直に受け取って飲んでくれた。


「ところで、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」


「そうなんですか。キャリッシュの酢漬けとヒダ豆をください。あと果実酒も」


「……わかりました。果実酒1つとキャリッシュの酢漬け1つ、ヒダ豆1つですね。少々お待ちください」


 話を聞くために急いで品をとってくる。

 今は少し空いているが、もうしばらくすると混むはずだ。


「果実酒800リップ、キャリッシュ600リップ、ヒダ豆400リップです」


「こちらは奢ってもらえないのですか?」


 こいつ!?


「えぇえぇ、どうぞ」


「では、遠慮なく」


 そういうと、エルフは本当に遠慮なく食べ始めた。

 まぁこれで話を聞ける体制は整ったと考えよう。

 俺はエルフの向かいの席について質問の姿勢をとった。

 ちなみにもともとここに座っていたエルフの相方の人間は、別の卓で違う冒険者と意気投合している。

 

「それで、精霊について聞きたいのですが」


「なるほど」


 ぱくぱく。

 このエルフ、意外と食べるのが早い。


「精霊に魔法を頼むって、どんな感じなのでしょう?魔法名を言うと自動で使ってもらえるのでしょうか」


「かもしれませんね」


 エルフは食べるばかりで、適当なセリフを返してきた。

 うん?


「あなたは、精霊に頼んで魔法を使ったことがないのですか」


「ありますよ」


 パクパク、ゴクゴク。


「ええと、ではかもしれませんね、というのはどういうことでしょう?あなたの体験談を教えてもらえると助かるのですが」


「忘れました」


 パクパク、パクパク、ゴクゴク。プハー。


「……」


「ご馳走様です。それでは」


 そういって、エルフは帰っていった。

 俺はこの日を境にエルフが嫌いになった。

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