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#24 閑話 中堅者たちの噂話

カランコロン


 今日も酒場の鈴はなる。


「よう、チック。今日もいっぱいどうだい」


「ハグーか。いいね、飲もう飲もう」


 とくにここ、魔神アクバアルのダンジョンのある街『イドラ』の酒場は冒険者であふれかえっていた。

 チッグとハグーも色んなパーティを渡り歩く傭兵型の中堅冒険者だ。

 

「最近はどのパーティがやりやすい?」

「勢いのあった例のパーティも欠員がでたらしい」


 情報交換を交えながら、あーでもないこーでもないと愚痴をこぼすのがいつものやりとり。

 今日はその中の話題の一つに、少しだけ目新しいものが混じった。

 

「ハグーよ、どうやら先週、新しい堕ち人がきたらしいぞ」


「ほぅ、今回は間が空いたな。しかし、また増えたか。ワシは、あんまりあいつらは好きになれんよ」


「ハグーはいつもそれだな。オラだって特に好きというわけじゃあないが、堕ち人は善かれ悪しかれ影響が大きいだろ。特に去年のあいつらなんて、もうオラたちを抜いていったじゃあないか」


「サトーだっけか。あいつらは早かったなぁ。チッグは何度か一緒に組んだらしいじゃあないか」


「おうよ。色々と口煩くはあったが、悪いやつらじゃなかったぞ。他よりも休憩時間が多いわりに稼ぎが多くてな。また組みたいもんだ」


「ワシだって腕がいいのは認めるよ。ただなんだ。あいつらの言う効率とやらがなぁ。どーにも肌にあわねえんだ」


 ハグーはドンっジョッキを机に置いた。


「怪我無く殺せりゃあ、なんだっていいじゃねぇか!ワシはメンバーにだってケガはさせねぇよ。周りに迷惑かけなけりゃ、好き勝手やれる。それが冒険者ってもんだろ」


 チッグは深々と頷き同意を示す。


「ハグーの言う通りだ。そこが口煩くていけない。ただまぁ、連中もわきまえてるよ。最近はDPSがどーたらこーたらは言わなくなってきたし、連中の中で完結してるなら、まぁ、いいじゃねぇか。それこそ周りにゃあ迷惑かけてねぇしさ」


「ふむ。……んで、今度の堕ち人はどうなんだ」


「なんでも男が2人きたらしい。片方は剣もって走り回ってるからすぐわかる。剣に火がつきっぱで危なっかしいが、よく笑ってんな。なんでも、もう5人で組んで5階に挑んだらしいぞ」


「今度のやつはやるじゃねぇか。んじゃあ、もう片方は?」


「もう片方か。そっちは、うだつがあがらないらしい。浅いところであーでもないこーでもないと言ってちっとも進みゃしない。なんでも2階に入れただけでニヤニヤしてたとか」


「ふん。できるやつと、そーじゃないやつか。天秤はとれてんな」


「ダメなほうは、今度バイトをはじめるってさ。自分てものを弁えてるから、マシなんじゃねぇか?やべぇやつは他のルーキーを巻き込みやがるからな」


「今年の頭にきたやつらか。ワシはあいつらには心底頭にきたなぁ」


 ハグーはドンっジョッキを机に置いた。


「まぁまぁまぁ。ギルドマスターも今度は気を付けてるから、あぁはならねぇだろ。今回はルーキーどもにしっかり情報回してるしな」


「ならいいんだ。今度も繰り返すようなら、ワシがぶちのめしてやる」


「そんときゃあ、オラも手伝うさ。まぁ、大丈夫だろ」


 なぁなぁなぁとチッグがなだめると、ここで酒場に流れる曲が変わった。

 どうにも、2人が贔屓にしてる楽士に変わったらしい。

 先ほどの話題もそうそうに、一目見ようと2人は席をたつ。

 

 そしてこれ以降、しばらく堕ち人の話題が出ることはなく、すっかり2人は今日の話を忘れてしまうのだった。


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