表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

act1 無意識

 act1 無意識


 本部の研修施設は海辺の高層ビルだ。

 お洒落で都会で、バーキング料金がバカ高い。

 運転は未だ止められているので、電車を三本乗り換えてたどり着いた。

 もう、スーツがヨレヨレだ。

 宿泊施設は本社から直ぐの古いマンションで、三階建ての陰気なコンクリートの塊だ。

挿絵(By みてみん)

 荷物は3階の角で南向きの部屋に投げ込み、とりあえず会議室へと駆け込む。午前中は座学でスライド、美味しくない弁当を食べて午後からディスカッションにロールプレイングと、まぁ、新入社員にまみれてワイワイ。コミュニケーション高めの研修担当のお陰で、その辺りは無難にこなす。最終日のテスト、まぁ、テストと言う名の、今期のボーナス査定が問題なわけで。それまでは少しは楽しい。

 私は地方の末端社員なので、親しい人はいない。殆どが私より年下で、明るく爽やかで、私は頷くコケシである。まぁ、皆頑張れ、私は体力と気力を戻すのにがんばるから。

 と、目立たないようにしていたのだが、古株の主婦連中のグループに何故か入っていた。

 何というか、接点ゼロの人達なのである。

 子無しの病持ちの家族無しである。

 子供や嫁姑、住宅ローンやら旦那の話は異次元である。

 頷くコケシが、さらに赤い牛に進化だ。

 多分、リーダーの白川さんが、介護と闘病という私のプロフィールに興味をもった。まぁ、同情かマウント的意味なのかはわからないが、気を使ってくれたようだ。確かに新卒の男女の間に座るのも、スーツのオッサンに混じるのも居心地は良くない。良くないが、ここは凄かった。凄すぎてスルー力が鍛えられそうだ。

 噂話と悪口と社内の人間関係が、とても詳しくなる。

 そんな情報いらんがな。

 と、言う突っ込みはしない。

 今回だけは、病弱設定ありがとうと思う。頷くだけで彼女たちは満足してくれた。懐かしい女子高生のカースト(古)社会を思い出す。

 まぁ、ビックリ情報、嘘かほんとか分からんものを仕入れつつ、初日は終了。白川さん達は主婦ゆえに帰宅。私は宿泊施設へ。

 今日の昼は不味かった。予想以上にヌルヌルの餡掛けに、カチカチの揚げ物、玄米ご飯が固すぎた。お茶も薄くて(泣)

 と、宿泊施設の晩御飯はカレーだった。助かった、不味くなりようがなかった。多少、油っぽいが許容範囲。

 ちなみに一食400円である。お代わりできるので安いのか?つーか徴収するなよ、ケチだなぁ。

 私がお代わりをしていると、向かい側に座っていた可愛い牧野さんが微笑んでいた。

 あえて可愛いと付け加えるぐらいの可愛い女の子である。

 そして、可愛い牧野さんを囲むむさ苦しい野郎ども。体育会系新入社員の岡田と下川である。片方は柔道、片方はラグビー。社長も体育会系なんで新卒はこんなのばっかりである。

「すごいっすね」

「女子力ゼロっすね」

「今度、大食いチャレンジいきましょうよ、絶対イケますって」

「大食いではありません。燃費の悪い私は高級車。故にカロリー摂取行為を妨害すんな」

「今度、揚げ物の美味しいお店に行きましょう、梅さん」

「梅さん言うな、何処の店?」

 という、マッスル二名との会話を聴きながら、牧野さんはニコニコしていた。

 マッスル二名と牧野さんが、私と宿泊施設での班になっている。

 本来は、新卒女子グループと女性、男性で班割りになる。

 新卒女子が2グループと男達が3つ、その他の女性班がひとつなのだが。

 余り物で組んだ。

 のでは無い。

 岡田と下川、そして、牧野さんが私につけられた理由はある。

 私が一応、社内の指導資格を持っていることと、この新卒三人がある意味問題を抱えているからだ。

 問題と言ったが、大したことではない。

 岡田と下川は縁故入社なんで、お偉いさんが気を使ってパワハラタイプの指導者を除外したら、あら不思議、療養中の私になっていただけである。派閥問題の色々もあるらしい。聞きたくない。つまり皆火の粉が恐かったようだ。

 そして、可愛い牧野さんは、新卒女子同士の諍いの末である。彼女が悪いというよりも、彼女を好きになった男がストーカーになり、警察にご厄介になった。これが発端。

 まぁ、色々あって彼女は同期から浮いてしまった。

 裏事情は白川さんが、あること無いこと喋り倒してくれた。

 と、噂なんて話半分。つまり大したことではない。

 牧野さんが実は裏表のある嘘つきな女の子であったとしても、私には関係ない。関係ができるのは、被害にあってから。それまでは、何も思うことはない。あえて思うとすれば、素晴らしいアイラインだ。テクニックを教えて欲しい。ついでにジェルライナーは何処のメーカー?

 食事が終わると談話室にて、本日の反省とちょっとしたアンケートを書いて終了。解散である。

 宿泊棟はマンションを改造しているので防犯とプライバシーはキチンとしてる。

 女性は3階、男性は1階、2階は談話室と食堂、管理者のスペースとなっている。

 外出は自由だが、部屋に外部の人を入れるのは不可。緊急時以外は男女の部屋の行き来もダメである。

 あくまでも研修や会議での宿泊なので、飲酒も大っぴらにはダメである。

 そして、岡田と下川は先輩どもと悪い遊びにくり出し、私は大量の薬を飲んで寝る事に。問題は牧野さんである。

 食後のレクリエーションなんぞが自由時間にあって、女子会みたいなものがあるのだ。

 私は療養中なので、薬をがばがば飲んでお休み三秒である。だが、牧野さんは本来なら参加なのだ。

 さらに、私は病気故に個室待遇である。普通は三人部屋で、レクリエーションも彼らとだ。

 無理だよね。

 牧野さんとトラブルになった者と同室ではないが、その同室の二人とはコミュニケーションがうまくいってない。

 本来なら食後のレクリエーション時間に相互理解を深めるのだが、私の前に彼女に着いた指導役が相次いでチェンジ。故にホイホイ仲良くしろよとも言えない。指導役が指導してないと言う訳で、彼女に非がある訳ではない。噂は彼女に非があるとしても、噂は噂である。

 その噂にしても聞いてみると、災難だねぇというものだ。

 白川さん曰く、一人はパワハラとみなされてアウト。どうやらストーカー騒ぎの余波が理由らしい。

 イイオトナガ、イジメだってよ、バカじゃね。

 次はセクハラ、これも噂の範囲内なので本当かは謎。

 既婚者でちょっかいを彼女にかけたらしい。部署移動の末、嫁と子供に出ていかれたとか。

 本当ならササレロ。

 そして、次は周囲との軋轢を増加させて煽るというしょうもないタイプで人事に地方へ飛ばされた。

 人事の人もストーカー騒ぎのせいで牧野さんとは密に連絡を取り合っていた。ストーカー問題は企業的にもイメージダウンになりかねない。

 んで、牧野さんは、メンタルが強いという事を証明した。

 つーか、トラブルメーカーのお世話じゃない。地雷処理だろコレ、私ができるわけないだろー。

 面倒なので本人に直接聞いた。

 三人部屋は大丈夫?個室に変更もできるのよ。談話室で会話に加わる必要もないけど、表面的な会話だけでも同室者とできると気も楽になるよ。つーか、今日はどうだった?

「西原先輩は平気そうですね」

 意味わからん。

 それは、私がボッチでも平気と言う意味なのか、どのグループでもそこそこ馴染めるからなのか。牧野さんに対する態度についてなのか。

「私も大丈夫です。気にしてませんし」

 なるほど。

「先輩と一緒ならレクリエーションも大丈夫だと思います。できれば、研修もご一緒させてもらえませんか?無理にとは言いませんが、私以外の人達が大丈夫じゃなさそうで」

 おおぅ、まぁ、そうですか。

 と、言うことで明日からの研修のグループやらなんやらの変更書類を出した。

 **

 翌日からは牧野さんプラス野郎二人で組むことになった。

 つーか、何でそうなる。私が牧野さんにつくだけなんじゃ?

 彼女のアシストに入ると思ったら、こいつらと外されたでござる。少人数グループ組まされてる時点で駄目でしょ浮くでしょ。

 まぁしょーがない、と言うことで。

 浮いてる三人を馴染ませるべく、彼らを引き連れて必要な研修カリキュラムを回る。

 コミュニケーション力は、元々低い訳ではない彼ら。橋渡しがあれば、けっこういけた。

 仕事面では三人とも卒がない。

 むしろ私の方が残念である。

 彼らのフレッシュな脳細胞は楽々と仕事をしている。羨ましい。

 問題の周囲との協調はといえば、微妙である。

 体育会系二人が牧野さんをヨイショしてるように見えちゃうのもまずいのだ。

 実情は、まぁ可愛い女子をチヤホヤしない男はいない。

 私も可愛い女の子とか犬とか猫とかは好きなので、もう、しかたねーか。とか、次の新入社員の可愛い子が出現したら終わるしいーか。とかで、流すことにした。

 何も起きなければ、多少の齟齬は気にしない。

 この研修の間だけのことだ。彼らの職場でのメンターはいるわけで、私は僻地の職場でお気楽にストレスフリーで過ごすのだ。

 無責任?

 学生時代なら、表面上の平穏も難しいけれど、大人はねぇ。

 その分、本気で争い事になるとえらいことになるけど。

 私を担当にしたのも、アグレッシブなタイプじゃない上に病気なんだよ、という周知のせいで、周囲も躊躇する。という狙いもあるんだろう。

 ありがたいありがたい。

 思ったよりも順調だった。余計な情報に目をとられなければ、彼らは将来性のある元気な新人そのもので。

 疲れきった、少し厭世的な自分からすれば輝く存在でしかない。

 だが、大概のトラブルは油断すると、目の前にあったりする。スキップしながら目の前に。

 発端は宿泊施設の掃除だ。

 今回は研修人数も多かったし、二週間ちょっとの長期間だ。4日で終わるはずが、ついでに他の講習やら研修をぶっ込んだらしい。おいおい。

 なんで研修期間中に休日があるわけで、外出する者以外は施設の掃除に駆り出された。清掃業者はどうしたんだよ。

 まぁ日頃の感謝をこめて半日掃除する事になったんだが、二階の管理室の奥から段ボール二箱のガラクタが出てきた。

 ガラクタの内訳は、レクリエーション用の遊具だ。

 まぁ、バドミントンやらバスケットボール、オセロに古びたトランプと、雑多な感じだ。

 皆で掃除して、それなりに会話もとれるようになっていたので、今夜はこれで遊ぶ事になった。

 いい大人なので辞退しようとしたら、牧野さんが珍しく乗り気だったので、これはっ!と、私も参加することにした。薬のんで、夜更かしできるかな?

 と、私も久しぶりに子供にかえるのを楽しみにしていた。

挿絵(By みてみん)

 その晩、外出組を交えて談話室でゲームや何やらを広げて遊んだ。

 ここまでは本当に楽しかった。

 野郎共も素面ではしゃいだ。

 牧野さんも、ポツポツではあるけれど、回りと会話もできていた。

 私は薬のせいで眠くなっていたので壁際の椅子に座って皆を眺めていた。大小3つのテーブルに24人、管理の人は台所スペースで仕事中。椅子には私と、いつの間にかぐったりしている岡田がいた。飲んで帰ってきて騒いだせいでダウンしたらしい。

「若くても死ぬから、脱水に気をつけろや」

「了解っす、梅さん。何か薬あります?」

「梅さんじゃねぇ、小梅だ。それに西原で呼べや、先輩を敬え」

「いや、俺の婆ちゃんが梅って言いましてね、つい懐かしくて」

「ブッコロス、つーかなれなれしいなぁ岡田くんよ」

「梅さんは婆ちゃんに似てるっす」

「お前の母ちゃんなら我慢するが、さすがに婆ちゃんは傷つくぞ」

「いや、その喋りと態度が似てるだけですって、俺の母親は、滝川さんに似てます。超コワイっすよ」

「女史に言っとくわ」

「梅さんヤメテ」

「だからよ、西原先輩だ。んで、婆ちゃん子の岡田くんよ、無理やり酒飲みとかじゃないよな。研修中に何かあったら報告よろしく。下川は、まぁ、大丈夫か。大館さんと気があってるようだしな」

「ジム仲間っす、大学も同じ」

「オネェチャンの店に通いすぎないよーに注意しとけよ。大館さんは離婚結婚それぞれ三回の猛者だから、見習わんでいい見本だから」

「梅さん、やっぱり婆ちゃんの生まれ変わり?」

「お前、イッペンシネ」

「チャンポンが効いたっす、虹色の液体が口から出そうすっよ」

「バカだろ、息苦しさは?急性アル中やったら、まずいから」

「多分、そのあと食べたラーメンが脂っこかった、豚骨っす」

「お前なぁ、ほどほどと言うことを社会人として学ばんかい」

「豚骨に分厚いチャーシューが扇状に、替え玉はお代わり自由っす」

「何処の店だ?」

「お薬くだちゃい」

「可愛くねーから」

 薬箱は管理人部屋にあるので、そのまま部屋を出た。

 時間にして10分位か?管理人室で帳簿を付けていた管理の人その2と世間話をしてたのだ。

 そして、胃腸薬を持って帰ると、すでにトラブルになっていたのである。

 **

 なんじゃこりゃ。

 牧野さんと戸田ちゃんが喧嘩している。

 戸田ちゃんは、新卒グループのリーダーって感じの勝ち気な女の子である。コミュニケーション力バカ高って感じ。明るいねぇってほのぼのしちゃうっていうの?

 その二人が髪の毛引っ張りあって、片手でひっぱたきあっている。

 興奮がすぎたのか、意味のある罵りは聞こえない。代わりに悲鳴のような叫び声をあげている。

 つーか、まわりは呆然と見てるだけ。

「男子、見てないで引っ剥がせ、今だけセクハラとは言わんから。牧野さん、やめなさいっ」

 私の大声に、周囲の男女含めてやっと我にかえったと言う感じで動き出した。

 それからは阿鼻叫喚。ガキの喧嘩並みに皆で大騒ぎだった。

 組付き合った二人は、絶対に止めないという感じで攻撃を続けるし、引き剥がそうと下川達大きな男が近寄るが、どこを持って引き剥がせばいいんだと軽くパニック。テーブルは押し出され、椅子はひっくり返り、止めようとする者は右往左往。岡田は吐きに行ったか。

 やっと捕獲した牧野さんの両手を握ると、さっさと部屋から連れ出す。

 ブルブルしてる彼女に深呼吸をさせてから、息を吸うより吐く方に注意を促しながら私の部屋に入れた。

「吸いまくらないで吐く、そう手足の温度は感じられる?大丈夫、落ち着いて。ここは誰も来ない。はい、吐いて」

 しばらくすると、顔色が普通になった。

 私をちゃんと見返すと、口がへの字になる。

 泣くかな?と、思ったが泣かなかった。

「さて、これ飲んで待つが良いのだ。私は後片付けしてくるから」

 エナジードリンクのブドウ糖入りカロリー高めの缶を握らせる。

「私」

 牧野さんは、缶を両手で持つと言いかけた。

「私は」

 先が続かない彼女の肩をたたく。

「落ち着いてからでいいよ、喧嘩ぐらい誰でもすることだ」

 彼女は床に視線を落とした。

「それに二人ともへなちょこパンチだったみたいだしね」

 毛根は多少ダメージを受けたようだが、心理面の方が辛いだろう。

「まず拳の握りがなってない。引っ掻く方が相手にダメージが、まぁダメージはいかんよな」

「そ、ですね」

 返事が返ったところで持ってる缶をこっちで開ける。

「飲んで糖分補給、カフェインで又、興奮しちゃうか?まぁいいよねー飲んでて」

 顔色を確認してから、部屋を出た。

 まぁ暴れる事はないと、思いたい。早めに戻ってこよう。

 指導役だけで談話室に再集合。

 個別に話を聞く前に、何があったのか当事者以外に聞くことにしたのだ。

「戸田ちゃんは聞きしに勝る気の強さだね」

 どんよりとして誰も喋らん。仕方がないので話を振ってみる。

「牧野さんも見た目と真逆で超アグレッシブ」

 私の感想に、指導役のベテランである大滝女史が疲れたように笑った。

「唐突になのよ、それまでは仲良くとまではいかなくても、二人とも普通だった」

 話を聞くに、それまではオーソドックスにトランプをしていたりボードゲームをしたりと、お淑やかにしていた。それが唐突に立ち上がってのキャットファイト。

 ビックリして皆反応できなかったらしい。

「まったく予兆なし?直前を見てた人は?」

 私の問いに、皆、首を振った。

 私と同じく、彼女たちのテーブルから指導役が離れたちょっとした隙だったのだ。

「指導役二人ずつで組んでなるべく自分の担当以外の人と状況を確認してください。ってこんな感じでいいですか?」

「助かるわ。今回の新卒はトラブル続きで正直ね、牧野さんの相手も頼んでいい?彼女、貴女の方が話すと思うわ」

「了解です」

 本社の人間は信用されてないわけか。

 それに、これが初めてじゃない?

 と、なれば穏便に無かったことにしたいわな。

 事情を聞き込みに向かう人達に、岡田への薬を渡す。調子が悪そうだったら、医者へ連れてってくれと頼む。これ以上のトラブルはごめんだ。

 んで、部屋に戻ると空の缶と落ち着いたいつもの牧野さんがいた。

 喧嘩の時は顔色も表情も、酷かった。不細工とかじゃないが別人みたいだった。

 元に戻ってて安心や、あの顔はアカン。

 そして、私が何か言う前に、彼女の方から簡潔に話した。

 戸田ちゃんの友達がストーカー野郎だったっていう下地。

 そして、それ以来二人は嫌いあっている事。

 でも、軽い好き嫌いのレベルで、いつもならお互いに無視で終わる事。

 近寄らなければ、又は会話しなければトラブルにはならない。

 迷惑をかけて申し訳なかった。

 と、謝罪した。

 そうなると、私の質問は2つだ。

 今回は軽くとはいえお互いに殴り合いになった。それも一応は時間外とはいえ、研修施設内でだ。相手を訴える、又は何らかの会社に対しての働きかけをするならば、ペナルティ込みで今回の事を報告するようになる。あくまでも個人トラブルとして処理する気ならば、こちらも時間外として処理するが、どうする?

 嫌な聞き方だが、はっきりさせるしかない。

 牧野さんは相手が訴えるならば、同等に対処する。相手が下らない諍いとして終わりにするなら、それでいい無かったことにすると言った。

 書面におこすかな、等と私は考えながらもうひとつの質問をした。私にはどうでもいい話だが、何が原因だったのか?である。

「つまらない事です。戸田さんが覚えていて、私が覚えていなかった。それだけです」

「何を?」

「さぁ、私は知らないですし、その前にビンタを一発もらいましたから」

 なるほど。

 **

 再び談話室に戻る。

 部屋に送り届けると、同室の子らも何とか平常心に戻ってた。牧野さんが詫びから入ったのもよかった。

 私は牧野さんだけなので一番に戻ったようだ。

 眠気も失せたし、念のために目眩の薬を追加した。それから談話室の片付けを始めた。

挿絵(By みてみん)

 ジュースとお菓子の残骸を処分し、テーブルと椅子を戻す。

 途中になった遊具をまとめると段ボールに入れる。

 喧嘩の舞台のテーブルは、もうゴミだらけだ。ゴミになった雑誌やら濡れた色々をゴミ袋にまとめる。

 と、散乱したトランプの向こう。

 窓際の絨毯に、黒い板が落ちていた。

 木製の四角い板でひっくり返すと、文字が焼き付けられていた。

  トーキングボード、もっとメジャーな言い方をすれば、ウィジャボードだ。

  降霊術や交霊術等に使われるボードで、ボードゲームの一種でもある。

 日本ではコックリさんか?

 ちょっと違うのは、ウィジャボードは一人で操作してもいいのである。また、コインではなく専用のプランシェットに手を置いて意味を読み取るのだが、まぁ、詳細はどうでもいい。

 遊具の一つとしてはマニアックだが、売られているものだし、ここにあっても不自然とまではいかない。

 ただし、盤面が見たこともない手作り感があって、ちょっと興味を持った。

 占いのお店で売っている木の板に印刷物を貼った物ではない。

 表面は滑らかなので、模様を焼き付けたあとに塗装しているのだろうか。

 そして、ふつうはyes、noとmaybe、それにhello、good-byeにアルファベットと数字が描かれている。

 だが、これは日本語、五十音と数字、になっていた。

 鳥居が無いので作法はウィジャボードで良いのだろうか?

 プランシェットを探すと、カーテンの下に落ちていた。

 位置からすると、争い事になったテーブルにトランプと共に置かれていたように思える。

 私は占いが好きだ。

 美しいカードや不思議な呪文、色鮮やかな水晶を見たり集めるのがだ。

 子供の頃の楽しい時間を感じられるから。

 公言したことは無い。

 しかし超常現象を信じるか?

 これは別問題。

 信じたいけど信じない。

 信じられたら、薬も減るだろうに。

 脱線したが、おおよそ彼女達がしていたことが解ったと思う。

 ウィジャボードとトランプ。

 牧野さんと戸田ちゃん、その他の誰か。

 ウィジャボードは一人でもできる。でも、一人ではしない方がよい上に、記録係を置くようにとなっている。

 暫くして、聞き取りをしていた人達が戻ってきた。

「どうでした?」

「牧野さんは?」

「くだらない口喧嘩がエスカレートしただけのようです。戸田さんに異存がなければ、お互いに謝罪して終わりにしたいと」

 まぁ、けっこう冷静でしたと言うと、滝川女史は呻いた。

「こっちはダメ、興奮してて」

「同室の人は?」

「荷物ごと避難した。怒りがおさまらないらしくて、喚いてるから」

「誰か見てます?」

 指導役の一人が残ったようだ。

「興奮が続いて、体調が危ぶまれるようなら、家族に連絡した方が良いでしょう」

「ちょっと待ってよ、西原さん。そんな大事?」

 呻く女史の代わりに、他の指導役が慌てたが。

「まぁ、念のためですが、他に何だか様子がおかしい人はいました?」

 私の問いに、男性の指導役が問題なしであると答え、他のテーブルの者達もおおよそ何がなんだかという感じだけで、異常はないとの答え。そして、諍いの前後は見ていなかったとも。

「こっちは、少し変かな」

 新卒女子グループの聞き取り組から、手があがる。

「泣いてるのが二人、理由を聞いても本人もわからんとか」

「それじゃその泣いてる子にも監視プラス、興奮が継続して身体症状が出そうだったら、帰宅か診療でよろしく」

「理由は?」

「集団ヒステリー、もしくは自己暗示でしょうか、素人ですので間違っていたら、まぁ、謝ります」

 予想外の答えだったらしく、皆、黙った。

「ストレス耐性の低いタイプが、集団生活をし、リーダー的な存在が恐慌をきたしていると、影響を受ける場合がある。まぁ、一晩寝れば治るかもですが、悪化すると過呼吸、痙攣、失神する場合があります。様子見ですね」

「戸田と仲が良かったか?」

 指導役同士で話始めたが、女史が復活して口を開いた。

「本部に報告だわ、それに戸田を落ち着かせないと」

 その言葉に被せるように社内携帯が鳴る。

 嫌なヨカーンと、誰かが間延びした言葉を吐く。

 そして電話に出た女史が、キュウキュウシャーと怒鳴った。

 まぁ、だいたい悪い予想は当たるものだ。

 ボーナスは下がったな。

 結局、戸田ちゃんは過呼吸やらなんやらで救急車に乗ることになった。

 しくしく泣き出してた子らも一緒である。

 研修は中止になった。

 **

 来週から職場復帰だ。

 車の運転も許可が出た。

 幻覚も錯誤も無い。

 助手席に見知らぬ人が見えたりもしない。まぁ、もともとあの一回きりだ。

 気分よく運転し、職場に到着。

 菓子折り持って挨拶だ。

 そして、辞令をもって帰宅。

 がっかりである。

 栄転だね、と、言われたが絶対に違う。

 西原小梅殿 本部研修宿泊施設長に任命す

 その晩は、焼きそばをプレートで山盛り作って食べまくった。

 結局、引っ越しだ。

 そして、賃貸を探すも見つからず、職場と自宅が同じになるという悪夢に。

 実家は月ごとにメンテナンスのため帰る事になった。その時に病院にも通えば転院しなくてすむ。

 そして、引っ越したのだが、管理人の人達と挨拶やら仕事の話をしていると、来客があった。

 施設の人に会いに来たという。

 戸田ちゃんだった。

 迷惑をかけた詫びに、らしい。

 茶を飲みながら、近況を話してくれた。

 結局、騒ぎは無かったことになった。

 戸田ちゃんと牧野さん二人は仕事を辞めなかった。

 相性の悪い二人を引き離せばすむことだ。仕事はできる二人だ。そうそれだけだ。

 で、当事者からの暴露。

 ストーカーの男が好きだった戸田ちゃん。

 牧野さんとは中学の同級生。

 戸田ちゃんからすると、牧野さんの周りの人は不幸になるのだとか。

 ストーカーの男もその被害者だと考えていた。

 だから、憎かった。

 ストレートに今も憎い、好きだった男が壊れた原因として。

 ただ、この間の一件以来、牧野さんが全部悪いとも思えなくなった。

「許すって事?」

「まさか」

 戸田ちゃんが帰ってから気がついた。

 二人とも喧嘩の切っ掛けを言わなかった。

 元々の軋轢だけだ。

 **

 宿泊棟の構造は、長方形の建物が南北に伸びている。玄関は東側の真ん中。一階は中央ロビーに階段と管理室がある。ロビーを挟んで南側に男子の宿泊棟、北側奥にボイラーとか機械室。階段登って二階に受付、北側が談話室と会議室、そして食堂。南側は管理室と当直室に倉庫、トイレは宿泊室内にユニットであるのだが、ここにも共同の物がある。三階の女子用の宿泊棟が南側に、北側に小会議室と使われていない部屋が続き、一番奥の北側が私の部屋に。

 誰かが、多分管理人さん達かな?部屋の扉に可愛らしい下げ札をつけたようだ。ちょうwのお部屋となっている。ちょうは、そのまま平仮名だ。施設長の扱いがうかがわれる。

 施設管理と本部研修との宿泊調整、その他、新人研修の宿泊棟にての指導とある。まぁ、管理人さんが施設設備管理を、私が宿泊予定とか人の管理になるわけだ。早く言えば、調整雑用だな。

 利点は、体調が悪くても通勤時間ゼロな訳で、あれ、利点じゃないや。

 今までは本部が研修から宿泊迄を差配していたのを、宿泊部だけ別にして、健康やらに気を配ってトラブルを未然に防ぐようにした。

 この間の騒ぎの余波で作られた役職で、まぁ、ちょうwなわけだ。

 お飾りだね。

 そのちょうw‥のお部屋に牧野さんから荷物が届いた。

 あれ以来、メールでたまに仕事とか近況をやり取りしていた。

 今働いている分社の指導役は年配の男性だが、うまくいってるらしい。よかったよかった。

 しかし、それとは別に、送られて来た物の意味がわからん。メールで聞くと、これが喧嘩の原因だと思う。と、返事が。

 思う、と、断定していないが、彼女の記憶には無い代物なのだ。

 それを戸田ちゃんが指摘して、喧嘩になった。

 念のため、実家に戻って探したら出てきた。

 これが何だかわからない。わからないが、もしかしたら私ならわかるかもしれない。

 何で?

 聞いたら、そう思った。根拠無し。

 何となく戸田ちゃんの気持ちがわかった。牧野さんは、何か欠落している。わざとじゃないが、これは何か危ない。

 写真だ。

 写真とボード。

 男の子二人に、女の子三人。

 中学生ぐらいだ。

 林?樹木の前で並んで立っている。向かって左側に長身の男の子が板を持ってる。女の子三人が並び右側に坊主頭の小柄な男の子だ。

 牧野さんは写真を撮った事を覚えていなかった。

 そして、彼らの事もだ。

 面影がある。

 三人の女の子のうち二人が、牧野さんと戸田ちゃんだ。

 この様子から二人は、相当親しかった。

 そして少年の手にはウィジャボード。

 あの晩、この話題を戸田ちゃんは牧野さんに言ったのだろうか?

 そして、忘れたと言って。

 そんな単純な話でも無さそうな気がする。

 ウィジャボードについてメールしてみる。

 答えは、記憶にない。

 逆行性健忘症という言葉が浮かぶが、彼女曰く家族にも聞いたが、この写真とボードには覚えがないと。

 送られて来たのは、私も見たことがある市販のウィジャボードだ。少し安っぽくて、ちょっとワクワクするようなアルファベットが並ぶ。

 まぁ、これも私が何ら関係の無い事だ。

 牧野さんも何か解決したいとか、そういうものでもなくて。単に煩わしい事を捨てたいのだ。

 ストーカーと簡単にラベルを瓶に貼っても、他人には計り知れない悩みである。それに関係あることは、すべて処分したい。そして、本当は職場も人間関係もリセットしたい。けれど、しないことを選んだ。

 私をその処分先にするのはいただけないが、わからなくもない。

 ウィジャボードを床に置く。

 ちょうど追加の荷物が届いたので、片付けをしていたのだ。その続きに手をつけながら、私は何となくモヤモヤした。

 ウィジャボードは、オカルト的な要素を抜いても、あまりよろしくない遊具だ。

 心理状態に影響をあたえるからだ。

 混乱、暗示、まぁそれを利用している遊びでもあるのだが、この遊具の注意、遊び方のルールからもそれが読み取れる。

 一人からできるけど複数人推奨。

 複数の場合、ふざけないでね。

 どんな場所でもできるけど、静かで暗い場所がおすすめ。

 そして、できれば記録係を用意しましょう。

 もう、これだけでペテンがわかる。

 一人だと自己暗示にかかりやすい場合は危険だし、懐疑的な人間を参加させるとメッセージが届かない。

 届くわけ無いのである。

 参加者がボードの文字と違う言語圏の場合、プランシェットは意味をなす反応が無い。

 まぁこれまでウィジャボードを研究してきた人達が腐るほどいるわけで、自覚の無い意識が反応して動かしているという意見だ。

 勿論、オカルト的な説明もできる。

 私はどれが正しいとも思わない。

 これは遊具である、という立場だから。

 問題は遊びでは無いと思っている人達だ。

 科学的な理由であっても、オカルト的な原因だとしても、遊びで終わるのなら、楽しめるのなら良いのだ。

 怖い怖いと、楽しんで遊びで終わる。

 ウィジャボードは遊びなのだ。

 これを真剣に、死者に呼び掛ける道具、と考える。

 一時的にしろ影響を受けると、不安、恐怖、混乱、ヒステリー症状をおこすわけで。

 掃除機をかけながら、私は床に置いたウィジャボードを拾う。

 掃除機を立ててスイッチを切ると、板をもう一度見る。

 五千円位のメジャーな品だ。

 この遊びで、やってはいけない事のお約束は、だいたい決まっている。

 ウィジャボードの処分方法は、御守り札の処分と同じく正しく行わないとダメだったり。

 所有者の元に必ず戻るとか、聞いてはいけない質問とかである。

 例え工場生産だとしてもだ。

 チャーリーチャーリーチャレンジの方が簡単だろう。

 ある程度、みられる室内になった。

 ご飯はどうするかな。

 ありがたい事に、研修が無いと土日休みなんだよね。

 宿泊棟の利用率は、春の3ヶ月、秋の3ヶ月。

 残りの半年は、多くて月に二週間前後の稼働である。

 盆暮れ正月休みだイエーイ。

 と、まぁ病院通いの私か嘱託さん向けの職場である。

 春の研修後の一般研修があの研修だったので、今は暇である。

 勿論、やるべき雑務はあるわけで、二階の受付と管理室が職場である。

 そして、宿泊棟の稼働時は、ご飯は管理人さんその1、大森桜音さんが作ってくれる。委託は止めて調理師の大森さんとアルバイトが二人で作ってくれるのだ。

 以前の食事への不満を反省。予算がひどかった、徴収しないと無理だわ。栄養と量に重きを置いてくれているのだ。社員の男女比で男が多く質より量になったらしい。

 管理人さんその2、磯貝のおじさんは嘱託で機械室やボイラーの面倒を見てくれている。

 建物の警備は、大手の警備保障で掃除は系列会社の委託である。

 今日は休日で二人ともいない。エントランスロビーの防犯キーは私が持っている。外でご飯にしようかな?

 何となく写真を鞄にいれると食事に行くことにした。

 **

 歩いてすぐに有名珈琲店がある。

 都会って素晴らしい、車に乗らずに店に行けるのだ。

 等と下らない事を考えながら、ランチを頼んでミニノートを開く。

 ゆったりとした広い店内の窓際、ほどほどに混んでいるが相席するほどでもない。

 食事が来る間に、件の人物に関する情報を探す。

 まぁ、ちょっとした下世話な好奇心だ。

 投げて寄越されたお題を無視しても良いのだが。

 私は地方の末端社員で、本社とは都道府県も違う。それで箝口令もあったのか、マスコミで流れた事件と牧野さんが結び付いていなかった。入院と手術のせいもある。

 手術した場所が場所で、暫く目も使わないように封じられていたのだ。そして、ラジオ位が楽しみで、病院食をお代わりしたいと言い出し、カロリーあげるのにおやつと牛乳増やされたのはいい思い出なのか?

 そして、滝川女史が弱音を吐くくらい面倒事が続いた原因は、マスコミに流れるような、事件、だったのだ。

 白川さんは悪口と噂話大好きだが、私は、その事件を知っていると思って、白川さん基準の言っても良い部分だけを喋っていたのだ。


 始まりは、市営住宅の一室で一家四人が死体で発見された。

 四人は絞殺されたようで、室内には荒らされたあとがあった。

 被害者はここに住む森乃明美さんと小学生の子供二人と、明美さんの母親である。逮捕されたのは、明美さんの内縁の夫、飯島康夫容疑者である。

 明美さんと連れ子の二人を殺した容疑で逮捕されたんだけど、アリバイがあって、一緒にいたA氏に状況を確認。どうやら二人でA氏の家で飲んだくれてたってのが当時の主張だった。

 でも、警察的には鍵のかかった密室殺人で、室内には容疑者の所有するロープ?紐が残っており、このアリバイ以外はどうみてもこの男が犯人だった。本人自身も抵抗されたさいについた傷もおっていたんで。するとA氏は偽証という事になる。

 んじゃ、本当は何してたの?

 A氏、あるお宅にてある場所にいたんだな。

 A氏は、あるお宅の押し入れにいた。

 そして、あるお宅の小学生男子が帰ってきて発見。

 一緒に帰ってきて、車を車庫に入れてた父親が悲鳴を聞き付けて駆けつける。そして、その父親に逃げる姿を目撃されていた。

 落とし物は、包丁‥。

 お互いのアリバイを証明する約束をしていたが、まさか浮気のアリバイと思ってたら殺人のアリバイ作りである。

 強盗未遂事件との関係を突き止めた警察のお手柄である。

 そしてA氏、殺人の片棒を担ぐよりも、不法侵入の方がまだましだ。

 まぁ顛末は、このA氏‥ストーカーは付きまとうお家を間違えていた。

 牧野さんのお家と間違えて、この親子のお家で待っていた訳である。

 しかし、オモシロイけど笑えない。

 このA氏の行動も、殺人犯も。同じだ。

挿絵(By みてみん)

 間違ってなかったら、お互いに殺人とか暴行のアリバイ証明をお互いにするつもりだったのだ。

 カツサンドが来たので、いったんミニノートを閉じる。

 ランチでスープとサラダ付き。珈琲はたっぷりと飲めるポットだ。

 手を拭いて紙ナプキンでかぶりつく。ほんとは二人分以上のボリュームなんでシェアがおすすめだが、私にはちょうど良い。

 美しい新緑に、海風、これで本社ビルが遠かったらいいのに。

 もう芋ジャージとかスウェットで歩いちゃうのに、本社が近いし自宅が職場である。身なりを整えねば休日も歩けないとは何と不便。いや、便利なんだけどさ。

  で、このA氏であるが高校進学後、粘着相手の牧野さんとは縁がいったん切れている。A氏の親や友達が何とかブロック、牧野さんの家族も転勤族だったんで、本当ならそれで終わるはずだった。しかし、就職した先がうちの子会社だったんで、新卒入社の牧野さんを見てストーカーに逆戻り。

 普通に交際を申し込むとか無しの、新型ストーカーってのになった。いわゆる妄想彼女ってやつだ。

 新型の怖いところは、特に交流無しで突然付きまといを始めたり逆上するところだ。妄想で行動するので説得や話し合いは危険である。そして、暴力に走りやすいのも、罪の意識も無いのだ。

 まぁ、今までのストーカーも大差ないが。

 美味しいご飯には合わない話題だ。

 牧野さんは被害者であるし、会社としても子会社から犯罪者が出た訳で。ましてや大元は殺人事件で、一歩間違えたら牧野さんも殺されてたかもしれない。

 戸田ちゃんには異論もあるようだが。

 さて、個人情報だがネット社会では、脆弱なセーフティ機能しか働いていない。A氏と匿名になっており、写真にはモザイクである。あるがおおよその顔はわかる。

 いやはや、イケメンストーカーだ。これはひどい。

 汚ならしい男を想像してたんだが、イケメンや。何でストーカーすんだよ、不細工に謝れ。とか勝手な事を言いつつも、更に検索する。

 掲示板の方に飛んで嘘かほんとかわからん胡散臭いところを探す。と、本元の殺人の方の板にあった。

 そこに貼ってあったリンクにとぶ。

 坊主頭の小柄な野球少年や。

 珈琲は温かくて旨かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ