「魔法少女になってやりたかったこと?」
コメディって何でしょうね?探り探りやってます。
気がつけば、私達四人は周囲の喧騒を他所に、完全に【魔法少女】あるあるネタですっかり盛り上がってました……と、言うよりも……
「いやぁ~ッ!! エレちゃんの女っぷりには負けるわよ、真面目な話ッ!!」
パシパシと、なちゅらる☆エレファントさん(26才)の肩を叩きながらご機嫌なラブリー☆じゃむキャット先輩(30才)。
「……まぁ、見方によってはそう言えなくも……恐縮です」
あくまで控え目な、なちゅらるさん……いや、エレファントさん? うんにゃ、エレさん?
「ねー、ゾウさんっていつもはどんな仕事をしてんですかぁ?」
いきなりド直球な質問!? ……つ、強者か!!……我が妹(24才)ながら、ぴゅあ☆ラフレシアの姿の時はガチで無敵よね……無職だけど。
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「私ですか? 動物園の飼育員をしています。」
突然振られた質問に眉一つ動かさず、キリッと音が出そうな位に律儀な返答!! しかも動物園の飼育員!?
「じゃー、やっぱり象さんの飼育員してんですか?」
「いえ、ピグミーマーモセット等の小型原猿類担当です。原猿類は両手で私が切り分けたリンゴ等を持って、無心で齧り続ける姿がとても良いのです。」
……うん、成る程ね。そこにゾウさんは居ないのね……。
「じゃー、いつか象さんの飼育員になれるといーですね!!」
「ええ、いつかなれるといいですね。」
でも、そう言うと少しだけ寂しそうにエレさんは俯きながら、
「……でも、象の展示は年々少なくなっています。希少価値の高い動物や、人気のある動物に人々の興味は移り、象は自然界に居る者と同様に、少しづつ数を減らして……いえ、減らされているんです。」
「ふーん、じゃ、ゾウさんはどーするの?」
ぴゅあ☆ラフレシアの言葉に耳(人の方の!)を傾けていたエレさんは、しっかりと前を向いて答えます!
「……私が【魔法少女】になって、象の素晴らしさ、美しさ、気高さをしっかりとアピールしていけば……きっとまた、今動物園に居る彼等も人気者に返り咲くかもしれません。そうすれば、新しく日本にやって来る象も増えるかもしれません……」
きっぱりとそう言い放った瞬間、
「ぱおおおおおおおおぉ~~んッ!!」
……空気読まないお股のゾウさんが吼えました。周りのお客さんはスルーする事に決めたみたいです……適応力高いな、某聖域付近だけに。
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「……たらいまぁ……」
私はマンションに帰って、シャワーを浴びて着替えてから、単身出張中のヨシオさんにメールする。
《今夜はカズちゃんとお友達とお外でご飯しました!》
暫くして、ヨシオさんから返事が届く。
《いーなー、僕はこれからコンビニ弁当とビールだよ~( ´-ω-)》
《ゴメンよ~。・(つд`。)・。 ヨシ君が帰ったら好きなモノ何でも作るよ~!》
《うん、ありがと! あと二日したら帰ります!》
《りょーかい! ……ところでさ、ヨシ君って、今の仕事を選んだ理由って何?》
《うん? 前に言わなかった? 色んな人に会えるような仕事がしたくて今の資材部を選んだんだよ~》
……それから、ヨシオさんとメールをやり取りして、おやすみなさい、した。
「ふあああぁ……おっはよぉ……あ、居ないんだよね……」
ついつい二人で居る時みたいに寝起きで抱き着こうとしたら、誰も居なくて……何となく悔しかった。
一人でご飯作って食べるのもイヤだなぁ……って思ったら、ドアホンが二回、キッチリ同じ長さで鳴った……カズちゃんだね、たぶん。
パタパタとスリッパを鳴らしながら玄関に行くと、すっぴんジャージ姿のもっさりな和子ちゃんが、普段通りの背格好で待っていて、
「おねぇちゃん、朝ごはん食べた?」
「アンタねぇ……今何時だと思ってるの? まだ7時前なんだから寝てたに決まってるでしょ……」
アクビしながら髪の毛をヘアゴムで纏めてると、ニヘヘ……♪ と音がしそうな位の明るい笑みを浮かべながら、
「うん、そうだよね? でもさ~、ヨシオ義兄さんも居ないんだからさ~」
……えっ!? ま、マジでっ!?
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……足もすくむような絶景って、こーゆーのを言うんだろうね……
都心部の高層タワーマンション(家賃幾らするんだろ?)の屋上のアンテナが立つ辺り、つまりだーれも入って来れない場所に、ぴゅあ☆ラフレシアとほーりぃ☆パルすいーつの二人としてやって来ました。そこにレジャーシートを広げて、某大手チェーン店の朝食セットを買って持ち込みました。うーん、風が強かったらどうなるんだろーか?
「ひょ~っ♪ 見てみて! あれスカイツリーだよね!? だよね!!」
「はいはいそーですね……でも、どーして急に『朝ごはん、景色のいい所で食べない?』みたいに言い出したの?」
私は和子にソーセージエッグなんちゃらを手渡しながら、コーヒーの蓋にストローを差し込みました。ずぷっ!!
「……昨日の夜さ、帰ったらお父さんに『いつまでも遊んでいるんじゃない! 就職活動して、地に足着けた生活をしなさい』って言われてさ……」
はむ、と手渡されたエッグマフィンを噛み締めてから、ぽつぽつと和子は話し出す。まー、あの堅物なお父さんの視界に居る限り、出る話題だよね……。
私も和子も、当たり前だけど【魔法少女】ってことは大半の人には言っていない(魔法少女同士でも詳しいプライベートはナイショにしてる)。勿論、お父さんには言っていない。
「……ぶっちゃけ、ヨーチューブの閲覧料だけで、お互い自立する気になっちゃえば出来るんだよね……」
そう、私達の『魔法少女☆生ちゃんねる♪』は、全世界でフォロアー数をン十万以上確保してて、更新頻度を上げれば余裕で自立出来ちゃう位の閲覧料を手に入れてるんだけど、私と和子はギリギリ低めの更新頻度でバランスを取ってる。
「……でもさ、お父さんには言えないし、そーゆー稼ぎがあるから就職なんてしなくても生きていけてます! なんて言えないしさ……」
「まーねー……ねぇ、私みたいに結婚しちゃえば?」
軽く言ってみると、緩やかにカールさせた両脇の髪の毛をぎゅるんと振り回しながら、
「ばっ!! ばばばバカな事を言わんでくださいよっ!! ……相手が居ないんだから……無理じゃん……」
「そうかな~? ほら、実家の近くのコンビニの店長サン、気さくでイケメンで和子のタイプじゃない? ……そこでバイトして、サクッと寝取られちゃいなさいよ!」
と、返すと……しゅぼっ!! って頭から水蒸気が出そうな位に真っ赤になりながら(キャラっぽさ補正アリなのかな?)、
「もー!! おねぇちゃんったら、そんなこと簡単に……」
「なーに言ってんのよ! 自分から体当たりしなきゃ出会いなんて起きないわよ? 奥手で深窓の御令嬢ってキャラを拾ってくれるよーな奇特なヒトなんてわちゃわちゃ居るもんじゃないないわよ?」
そんな事を言いながら、二人で朝ごはんしました。たまにはいいかな?
「……あれ? あそこ……何か見えない?」
「どこどこ? ……あ、もしかして……」
空に浮かんだ何か……まさか、【カイジョ】……ッ!?
そろそろコメディ、そしてバトル?