「(私達は)アラサーで魔法少女をやってますッ!!(既婚者含む)」
短編の改変加筆版ですが、ちゃーんと色々やってますよ?
「いってらっしゃい! ヨシオさん♪」
「うん、行ってくるよカズミさん!」
「……うん? ヨシオさん、いつものは?」
「えぇっ!? もう…………、 じゃ、行ってきます!!」
照れる旦那様にチューをせがんでお見送りした後、居間で掃除機を掛けてたら……緊急召集の妙なるガムランの音色!!
私は大急ぎでエプロンを外してベランダに出ると……あー、予想通りに【マジカル☆ウニょん】がヨガの水魚のポーズで空中浮遊してるのね……
「他所様の目があるでしょ!? さっさと中に入んなさい!!」
「……フム、せっかく魔の訪れを伝えようと現れたのに……つれないのぅ……」
「うっさいわ!! 窓開けたら不審者が浮いてるだけで通報事案よっ!!」
頭にウニの被り物を被った全身白タイツの不審者……じゃない、【マジカル☆ウニょん】の顔面を両手で鷲掴みにしながらグイッと室内に引き込む! マジでヤバかった……ギリギリのタイミングで不審げに顔を覗かせたお隣サンに苦微笑みしつつエスケープ……。
「それにしても【良縁麗女】よ……ガムランの音色はあくまで雰囲気作りであって、効果音だけで我を強引に引き込むとかは……」
「あのねぇ! そのダサくて万人受けしない名前は止めてってお願いしたでしょ!! 私は【良縁麗女】!! (主に)子供達に勇気と希望を(あとヨーチューブを経由して大きなお友達に、ニッチでキッチュなギリギリセクシー路線の魔法少女としてのリアル画像を)与えるの!!」
「相変わらず願望丸出しだのぅ……あと下半期分の魔法少女免許、更新しといたから大切にしといてのぅ」
「わぁ~い♪ 有り難う御座いますぅ!!」
私は手刀を切りながら恭しく免許を受け取る。そこにはバッチリとメイクをした最上級キメ顔の私が収まってて、『右の者、魔法少女補正を受けられる事、確かに認める』と書いてある訳で……因みに魔法少女補正とは、実年齢より見た目が若返ったり衣装が瞬時に変わったり……あ、コレが無かったら『魔法少女(偽称)が居たんだが』とかタイトル付けられて拡散するだろうなぁ……うわ、怖いよぅ!
「それじゃ、早速変身……って、何見てるのよ?」
「いや、アラサー既婚者がメタモルフォーゼする姿って需要あるよね、って思うし」「黙らっしゃいッ!!」
あ、マジカル☆ウニょんってインド人でヨガの達人……の筈なんだけど、被り物を取った所、見た事無いから判らないのよね……あと全身白タイツだし。
「(以下はマジカル祝詞→)【母なるインダスを源に……」
これから三分くらい掛けて変身するんだけど……
(……ねぇ、いつも不思議なんだけど、こんな時に攻撃されたらイチコロなんじゃない?)
思い付いたら即聞くのが私流! 脇で三角座り待機中のウニょんに尋ねると、
(いや、それはちゃんと対策済み。アンチ変身アタック対策要員の某格闘漫画の父親紛いキャラが百人単位で異次元に待機中だから、安心してメタモルフォーゼしてほしいのぅ)
と、驚愕の事実をペロッと白状……
(そいつらが戦えばいいんじゃないの?)
(絵的に需要無いじゃろぅ?)
(……納得。)
「……ポニーテールは~、最後まで~、解かないの~♪(挿入歌終了)】」
「……てな訳でホーリィ☆ぱるスイーツ、爆☆誕!!」
キラキラと眩い光の粒子を纏いながら、私はホーリィ☆ぱるスイーツに変身! ラッパスイセンのような袖のピンク色基調の都市迷彩柄のドレスに、フッワフワな超ミニフレアースカート!もちろんパニエ装着済みだから下から見てもおパンツ拝観は出来ませんッ!!
……それにしても、ド派手な変身描写を室内で展開するのって、なんか淋しい……
「……で、悪者は何処に?」
下品だけど、少しだけがに股になりながら、ちょいとクイックイに食い込んだお股付近のデリケートゾーンを手直ししながらウニょんに聞くと、
「ん、円紅商社の本社ビル屋上に【ぴゅあ☆ラフレシア】が向かったようじゃのぅ。彼女いわく『キリッとしたメガネ男子(資材部主任)が人質になっている』らしいのぅ」
「そ、それウチの旦那様じゃん!? マジでヤバいッ!! つーか、私が魔法少女してるのバレたら……どうしよう! り、離婚とか言われちゃうのッ!?」
「……そんなの行ってみなきゃ、判らんじゃろうのぅ……」
©️稲村皮革道具店本館・謹製
「(私達は)アラサーで魔法少女をやってますッ!!(既婚者含む)」
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「あああぁ!? 確かにあれはウチの旦那様っ!!」
「遅いよっ!! 向こうはすっかりやる気なんだから急いでっ!!」
茶色と黄緑色のピッチピチドレスにオレンジ色の超ミニフレアースカート(ラフレシアを画像検索すると良く判るわよ!)のぴゅあ☆ラフレシアが苛立ちながら待っていたけど……私のライバル、そして実の妹……因みに私の方がスタイル補正抜きでイケてる筈なのに、僅差で人気負けしてるのよね……日本男児、総ロリコン化かよ?
「さぁ、和子!! あんな変な触手だらけの怪人なんて二人掛かりで簡単にやっつけちゃうわよ!!」
「バカーッ!! 魔法少女の時に名前で呼ばないでって、いつも言ってるでしょっ!!」
何故かメタモルフォーゼ時はぺったんこなスレンダー体型になるぴゅあ☆ラフレシア。計算の上で狙ってやってるから……つい出る杭として打っちゃうのよ……ゴメンね、和子。
それにしても今回の怪人……テズルモズルって感じ? 腰から上はのたうつ触手だらけの気持ちの悪い奴だなぁ。昼の休憩で屋上に出た所を狙われたのかしら、都合よく旦那様は気を失ってるみたい。よかった……いや、良くない!
「さて、どうしたもんやら…………っ!! 閃いた!!」
「……な、何よ、ぱるスイーツ……って、手を繋いで……?」
「合体技よっ!! そーれ、『ぴゅあ☆ラフレシア体当たり』でドーンといっちゃいなさぁ~い♪」
「ふみゅあ~~~ッ!?」
閃いた私は、ぴゅあ☆ラフレシアの腕を掴んで……思いっきり良く投げ捨てる!!(合体技かと言われたら違うかもしれない)
……ひゅ~ん、ぼふっ。
魔法少女補正の素敵なマッスル効果で、怪人ケズルモズルに一直線のぴゅあ☆ラフレシア。直撃したかと思われたけれど……沢山の触手に阻まれて残念! 捕まっちゃったみたいね~。
……あ、ヨーチューブ撮影班が集まってきて、動画撮影始まったわね? これが私達の収入源。私達は活躍する姿を通してみんなに元気を与える訳!(勿論閲覧料は頂きます!)
で、撮影班の人達は、拘りのカメラアングルで手に入れた映像を売りに出して……まぁ、そんな感じよね? 空気読んでね?
「きゃ~ッ!! そこはダメだったら!!」
あー、あれだけのヌタヌタな触手じゃ、間違いなくデンジャラスゾーンは回避出来ないわね……でも安心して!! 彼女は立派な二十四才、つまり成人女性!! あんなにスレンダーで恥ずかしい格好してるけど、立派な大人だから問題なし!!
「ダメダメぇ~っ!! マジ無理だから!!」
……むぅ、映像的に、スゴく美味しい。黒髪ロングな疑似ロリがヌタヌタ触手まみれで悲鳴上げてる……今回の投稿動画、ぴゅあ☆ラフレシアで大炎上! 間違いなしね♪
「こりゃ! いつまで遊んでおるのかのぅ。さっさとやっつけんと、配信停止になるぞぃ?」
「あ、確かに……。そろそろマジでマジカルしないと色々な意味でヤバいわね!」
マジカル☆ウニょんに言われるまでもなく、決着つけないと実の妹の貞操と配信の危機よね?
「よしっ!! それじゃ、最終手段よッ!!」
私は手にした魔法少女ステッキを振り上げると……
「【全にして壱、壱にして全なる数多の精霊】に告げる……『魔導兵器』招来!!」
どーん!! 変化したステッキ、これぞ『マジカル対物ライフル』よ!!
魔導の力を用いて召喚した私の秘密兵器! マジカルって付ければ銃刀法違反にならないわ!!……たぶん。
「いっけーっ!! マジカル12.7ミリ対物破砕弾っ!!」
……どっ ごぉーーーんっ!!
伏射姿勢で腹這いになりながら、マジカルスコープ(赤外線暗視機能付き)のレティクルの中心に、怪人の腹部を捉えた瞬間……息を吐きながら、ゆっくりと引き金を絞り込むと……激しいマズルフラッシュを放出しながら、マジカル対物ライフルが私の身体を後ろに弾き飛ばす!!
そして魔力を触媒にして推進力を得た凶悪な弾頭が、一直線に怪人ケズルモズルに到達! 腹部に直撃した瞬間、細かい裂け目の入った弾頭が凄まじい勢いで爆発して一瞬で怪人を木っ端微塵に打ち砕いたわ!!
「……おねえぢゃん……うづならうづっで、いっでよぉ……ふええぇ~!!」
「ごめんごめん……ああするしか無かったのよ……判ってくれるわよね?」
助け出したぴゅあ☆ラフレシアは、私の腕に掴まりながら、涙を浮かべて感謝してるの! ……たぶん。
「……ううぅ、何だったんだ、一体……うわっ!? 和美、なんて格好してるんだっ!?」
「あああっ!? ヨシオさんっ!!」
目覚めた旦那様が私を見た瞬間、慌てた様子で困惑してるっ!! ば、バレちゃったの!?
次回、「ホーリィ☆ぱるスイーツ危機一髪!! 魔法少女がバレちゃった!?」をお楽しみに!!
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(……内閣調整課別動班、事後処理完了しました……)
(……ご苦労様、そのまま監視を維持しながら、別令あるまで待機して下さい)
「……なぁ、また【魔法少女】に先を越されたな……」
真っ黒な迷彩服を纏った男性が、事後処理を済ませ幾つかの隔離用袋に【カイジン】の遺体を詰め込んで立ち去る処理班要員を見送りながら、傍らの相棒に語り掛ける。
「……気にするな。俺達があんな連中相手に……何が出来るんだ?」
ビルの屋上に陣取り、双眼鏡を見ながら現場の監視に務めつつ、話し掛けられた方は静かにそう答え、双眼鏡を仕舞うと胸ポケットからタバコを取り出して、口許のグラブラバ(目出し覆面)を捲り、月を眺めながら紫煙を燻らせる。
「……。全人口の0.000001パーセント。……たったの百人の女性だけが、日本の【カイジン】【カイジョ】を相手に戦える力を持ってるんだぜ?」
そう言うと、同じポケットから携帯灰皿を取り出して中に吸い殻を入れグラブラバを元に戻してから、足元に置かれていた狙撃用ライフルをケースに仕舞い、立ち上がる。
「俺達は、万が一に備えて待機し、連中がしくじった時の切り札として全てを監視し……後始末したら、消える。……簡単な仕事だろ?」
「……判ってる。だが……そんな事をする為に地獄じみた特訓をしてきたつもりじゃ……」
「まぁな……だが、お前もアレを目の当たりにすれば……考えも変わるぜ?」
彼はそう言うと、先に立ってビルの通用口へと歩き出す。
「……俺が撃った必中の三発を、アイツは眉ひとつ動かさずに……掴み取ったんだ。……あんな事が出来るのは、人間じゃない」
そう語りながら、扉を開けて、振り返りもせずに階下へと降りていった。
次回は短編の続き、すなわちマジな本編です!




