初めの始まり『異世界の昭和』
お待たせいたしました。稲村皮革道具店本館がお送りいたします、【魔法少女】の世界を……ご覧ください。
……此所とは異なる世界の、昭和の時代。
やっと独り歩きし始めた自衛隊は、全く予期しない事態に遭遇し、日々の全ては混乱を極めた組織の引き締めと、遭遇した自衛隊員への箝口令に奔走中だった。
嵐が訪れたかのように破壊し尽くされた税務所、壁という壁が吹き飛ばされたラブホテル、そして駐車場でギシギシアンアン中だったカップルのデートカー……思惑はともかく、標的になった施設や個人の差別無く、破壊と暴力の限りを撒き散らす謎の存在……【カイジン】と【カイジョ】。
自衛隊の軍事力をもってしても、彼等彼女等は完全に『もて余す』存在だった。銃弾を弾き返し砲弾を避け交わし、銃剣をねじ曲げ人数の差をも跳ね返す……駆け付けた自衛隊員達は、ただ自分達の無力さと【カイジン】【カイジョ】の底無しの強さの差に唖然とし、その場に来てしまった己の不運を呪うしかなかった。
だが、【カイジン】や【カイジョ】達は、その絶対数が少なく、撃退出来なくとも破壊された設備の撤去や、被害を蒙った被害者へのアフターケアさえ済ませれば、何とか急場を凌ぐ事は出来た。
……しかし、次第に隠し切れなくなりつつある【カイジン】や【カイジョ】の存在を暈す必要性に迫られたその時、内閣臨時調整班はとんでもない発想で事態を切り抜ける策を持ち出したのだ。
……それこそが、『政府公認【怪人及び怪女】登場のテレビ番組等を通じて虚構と現実の境界を曖昧化させる案件』、通称『怪人登場番組』の放映だった。
これは、結果として大成功した。いや……ある意味、成功し過ぎたのだ。
……怪人達がテレビ画面に登場すれば、園児バスをバスジャックし、製油施設や採石場跡を爆破しようと様々な知略謀略を巡らせて、視聴者の老若男女達を恐怖に陥れた。
そのせいで人々は遊園地のヒーローショーに赴けば、ヒーロー達に声援を送り、怪人達に男児は「いつか必ずお前を倒す!」と拳を振り上げ、女児は魔法少女の声に我の活躍する姿を重ね、ウットリと瞼を閉じるのだった。
それは……実際に【カイジン】や【カイジョ】達に遭遇した際、過剰に相手を刺激する要因となり、少なからぬ人数の少年少女達が犠牲になってしまう結果に繋がったのだが……大事に対する小事として、人々は眼を瞑る。
こうして人々の深層心理の奥底に少しづつ、実在する【カイジン】【カイジョ】と虚構の『怪人達』が混ざり合い、やがて誰も予期していなかった者達を、この世界へと導く鍵となった。
……その一つが、【カイジン】【カイジョ】達の天敵たる『魔法少女』と『ヒーロー戦隊』であり、彼等の行動と結果に眼を光らせる存在の『次元(又は宇宙)刑事』達だった。
これは、時代に翻弄されながらも雄々しく闘う『魔法少女』と、彼女達を監視し時に干渉する『宇宙(又は次元)刑事』達の物語である。
あ、『ヒーロー戦隊』は出てきません。そこまで深い話じゃないんで。ファンの皆様、マジで申し訳ない。
今回はプロローグ①ですが、次回もプロローグ②ですゴメンナサイ……。