#1 ペア変更
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#0のプロローグをもうお読みになりましたか?
もし読んでいなかったらそちらからお読みください。
ルガノビル3階エレベーターホールには毎朝9時ごろに弁護士たちが集まってくる。その中で、弁護士とは思えないようなだらしない服、ボサボサで中途半端な寝癖がついた髪。彼こそが昼は弁護士、夜はヴァイオリニストの望月達哉なのだ。レストランで彼の演奏に耳を傾けていた人たちは、彼がこんな格好をしているとは到底気づかないだろう。遅刻寸前の彼が事務所に入ったらもう他の弁護士たちは会議室の席についていた。
「遅れてすいません」
彼は社交辞令程度のお辞儀をする。
「よし、会議を始めるぞ。先週で刑事部門の阿久津くんが他の事務所に移ることになり退社した。というわけで彼とペアだった望月は北本と組んでもらう」
彼と新しくペアを組むことになったのは、彼と小学校のころからの幼馴染の北本奈月だ。彼女とは今まで仕事を一緒にすることはなかったが、月に数回飲みに行っている仲だ。
「早速だが、望月と北本には文京区誘拐殺人・死体遺棄事件を担当してもらう。被告人は、誘拐の罪は認めているが殺人と死体遺棄は否認している。あとで所長室に資料を取りに来い」
彼らは所長室で資料をもらったあと、事件の被告人の速水祐二の接見に行った。