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アミューの旅  作者: アミュースケール
第2章 輪廻転生
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第2章1ー3

数奇なまでに、ワラコの王を間近で、見つめる機会を得てしまってきたカサであったが、王が死んでしまったのかと、思った。それぐらい、今日のなかで、あるいはこの先も含めて、王の顔が、美しく見えた。実に、清く(いさぎよ)くて、頼りない。


カサは天使から託された重たい肩の荷が降りて、()(むし)られ、まさぐられた胸中であったが、(ようや)()でおろすことができた。不思議なものだ、この後も、城を三人で脱け出すという、実に重要な課題が残されていたのだが、そんなことは、王の色気とそれによる精神の陵辱(りょうじょく)から比べれば、非常に小さなものに感じた。しかもそばには、アミがいる。


カサは、やはり心のどこかでは、鼻をつまんでいたらしく、空気がとても美味しく感じられた。それから二度ほど、遠く離れた地底にも届いてしまうような深呼吸をすることが出来て、毛孔(けあな)からも神気(プラーナ)が入ってきたところで、アミがそっと、声をかけた。


「カサ、ご苦労さま。あともう少しで、静かな朝を迎えられるよ。さあ、行こう」


ベッドに座っていたカサの手を取り二人は、ついに王の寝室を出た。


アミ達は、これで王へ強烈な印象を焼きつけることに成功した。今後のドレフ達の動きというものは、手に取るようにアミには予知することが出来た。アミの頭や体や心というものは、まるごと、この世界の全ての源である「ひとつなる神」が憑依し、乗り移っていたからだ。


だだっぴろくガランドウな王の間には、先ほど、アミの力によって、眠らされた兵達がいた。あたりは静かであり、平安に満ちていた。兵達の寝顔をカサは見たが、やはり、アミによって、眠らされた者達の行く末というものは、浄福の故郷に辿りつくのであろうと、カサは確信を深めた。


後で分かった話しではあるが、アミによって眠らされた兵達でさえも、神様の(おぼ)()しであり、神様に認められた者達だけが、アミの眠りに就くことが出来たようだ。幸運にも、この暗夜には、眠い目をこすり、ワラコの王の権力を恐れ、無理矢理働かされている数名の兵達も、もう少しで安眠に就けるようだ。


王の間を出て、ハマエが待っている回廊まで、二人は向かっていった。始め、カサはドキドキする場面もあったが、そのドキドキというものは、子供の頃に、隠れんぼをしている時と、似ているような感覚のものであった為に、楽しいものだった。


アミも時おり、ふざけた。


アミは起きている兵に、見つからずに、どのくらい兵に近づけるかという、生産性の全くないゲームをすることもあった。


アミは、こしょこしょとカサに言った。


「ほらカサ、今だよ!あの像の前に、隠れるんだ!ほらほら、前行って、前行って」


ひどいときには、わざと兵に見つかるが、寝ぼけた兵のびっくりしたリアクションを堪能したあと、すぐに眠らせるという、幼子のようなイタズラまでをして、クスクスと二人は、笑っていたのだった。


このように、地球に迷い込んだ兵達を、眠らさせて、浄福のひとつなる故郷へといざない、アミとカサは、ハマエと合流出来た。


(かぶと)を外したハマエの顔は、汗を垂らしていたが、けろっとしていた。ハマエは、一晩中働いていても、平気なところがある、精力旺盛な男。


それからスキのある贅沢な庭から三人は抜け出し、宮殿の裏から脱出した。


宮殿を離れた、寝静まる街のとある坂の上、満天の星空の下、三人は、満面の笑みで手を取り合い、抱き合った。


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