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093 貰ったアイテム


 ラディス町の銀の斧でシグ達の帰りを待つ。

 宿のおばさんの話しでは、夕暮れ前にはいつも戻って来るらしい。近場の狩場で地道に経験値を稼いでいるのかな?

 現在のレベルが18だから19に上がるには……、レベル18の経験値にその前の経験値の半分を加えるということになるんだよね。そうすると、3万ってことかな?

 レベル12ぐらいまでは倍々なんだけど、さすがにレベルが高くなるとそんなわけにはいかないようだ。


「シグ達も苦労してるようね」

「でも、目標に向かって真っすぐに進んでる」


 たぶん、魔王を倒すことを目標にしてるのかもしれないな。

 レムリア世界に平和を作ること。それは色々と解釈できるからプレイヤー毎に目標が異なるのは仕方のないことなんだろう。

 とはいえ、シグ達と同じように魔族の本拠地に向かって行くプレイヤーは多いに違いない。


「私達はのんびりと進みましょう。シグ達のお手伝いが終わったらトランバーに【転移】するからね」

「ハリセンボンのおばさん達は元気かな?」


 思わず笑みを浮かべてタマモちゃんに頷いた。

 元気でない訳がない。漁師さん達を相手に怒鳴り声を上げてるんじゃないかな?

 その姿を思い浮かべてとうとう笑い出してしまった。


「何か面白いことでもあったのかい?」


 声に振り返ると、シロウさんとジュンコさんの2人が立っていた。いつの間にやってきたんだろう?

 タマモちゃんが席を立って私の隣に座ると、シロウさん達がテーブル越しの席に着く。

 さて、警邏事務所でどんな話になったのかな?


「PK犯は、あのキメラのようだ。死に戻りしたプレイヤーのその後の話しでは、人間よりも大きな影を見た途端にやられたと言ってたからね」

「となると?」

「森の東の入域制限を明日から解除するわ。町の城門に表示するから、プレイヤーも明日は東を目指すんでしょうね」


 狩場の混雑は避けたいところだからね。

 シグ達はどうするんだろう? 私達も一緒に行ってみようかな。


「本来なら食事ぐらいは驕りたいんだけど、イベントが控えてるからねぇ。手伝ってくれたお礼だけは、ということでやってきたんだ」


 シロウさんが、バッグからバンダナで包んだ品物をテーブルに乗せると、ジュンコさんが口を開いた。


「まだ氷漬けのダンジョンの宝箱で手に入るものだけど、身に着けた鎧の機能を少し上げられるわ」

「軽装の戦士達には垂涎の品ですね。でも、良いんですか?」

「【+3】だからねぇ。この種のアイテムでは最低の品だ。この上に、【+5】、【+10】があるんだけど、さすがに今それを渡すことはできないんだ」


 軽く頭を下げて頂いておくことにした。

 現時点ではお金を出しても買えないとなると、ちょっと嬉しくなってしまう。

 

「それじゃあ、何かあったら連絡してくれ。ジュンコに連絡してくれれば警邏事務所も動いてくれるはずだ」


 そう言って2人は出て行った。

 アイテムは指輪型だから、1個をタマモちゃんにあげようとしたらフルフルと首を振っている。

 それも分かるんだよね。私達は相手に会わせてレベルを上げられるし、そのレベルに応じて体力も増加する。体力は防御力の数値にもなるから、【+3】の数値は余り影響が無さそうに思えてしまう。

 私がニンジャとなれるレベル20でのVIT値は15なんだけど、ニンジャ装束である【半蔵の装束】の装甲値は20もある。

 それに、そもそも私の戦い方はヒット・エンド・ランだから素早さであるAGIの上昇の方がありがたい。たぶんタマモちゃんも同じことに気が付いたんじゃないかな?


「ケーナお姉ちゃんにあげる」

「ケーナなら喜びそうだけど……、それで良いの?」


 うんうんと頷いている。

 ケーナもこんな妹が出来たことを喜ぶに違いない。

 そうすると、私の分はシグにあげようかな? 彼女も長剣を振りかざして突っ込むところがあるからねぇ。少しでも装甲値は高い方が良いんじゃないかな。


 いつの間にか宿の食堂が賑やかになって来た。

 日暮れが迫ってきたから冒険者達が帰って来たのだろう。私達も通りがかったお姉さんに食事を頼むことにした。

 シグ達が帰って来なければ、私達だけで部屋に泊まることになりそうだ。


 通りが賑やかになって、食堂の扉が開かれる。

 途端に煩い程の話し声が店の中で始まったから、冒険者達が纏まって食堂に入ってきたようだ。


「ケーナお姉ちゃん!」

 

 タマモちゃんの声にその中の1人がこちらに顔を向ける。

 どうやら、あの中にシグ達がいたようだ。


「なんだ、テーブルを確保してくれたのか?」

 そんなことを言いながらシグ達がこちらにやって来た。途中で椅子を2つ確保してきたのは、このテーブルには椅子が4つしかないことに気が付いたみたいだ。


「どうにか倒せたわ。明日からは森の東が解放されるみたい」

「おい! 明日は森の東に行けるぞ」


 シグが大声でプレイヤー仲間に伝えている。

 彼らの顔にホッとした様な表情が浮かんだのは、やはり狩場が混雑していたからなのかな?


「キメラを倒して多大な経験値を貰ったと聞いたんだが、トドメを差させてやったのか?」

「私達で倒しても経験値は入らないからね。少しでもレベルの高いプレイヤーが欲しいんでしょう?」


「それはそうだが……。1体で1000以上の経験値と聞いたからね」

「たまたまその場にいたからね。それで、状況は?」


 ケーナが運んできたワインを受け取って美味そうに飲んでいるけど、まさかリアル世界でも飲んでるわけじゃないよね。

 まだ高校生なんだから、あまり羽目を外しちゃダメだぞ。


「だいぶ集まって来た。明日の夜にギルドに集まることになってる。モモも参加してくれると助かるんだが」

「私も集会に参加ってこと? 当日参加で良いんじゃないの」


 私の疑問に、運ばれてきた夕食を食べながらシグが話しを始めた。

 どうやら大ボスの周りの掃除をするプレイヤーを守ってほしいということなんだけど、それぐらいなら別に集会に参加しなくても良いんじゃないかな?


「2陣の連中が多いんだ。さすがに1陣組とのレベル差があるから大ボス相手の邪魔になる。とはいえ、それなりの実力はあるからなぁ」


 要するに面倒ごとを押し付けようということかな?

 友情の終わりが垣間見えた気がしてリーゼに視線を移す。


「シグの言ったこともあるんだけど、出来れば彼等には早くレベルを上げて貰いたいの。この先、どんなイベントがあるか分からないし、将来は一緒に戦えるんじゃないかしら」


 要するに、彼等に取り巻きを狩らせて、たっぷりと経験値を稼がせろということなんだろう。

 この種のイベントなら、取り巻きは大ボスが倒されない限り続々と湧いて出るはずだ。案外大ボスよりも経験値を稼げるかもしれないな。

 それに、イベント参加というところでは一括処理されるはずだ。大ボスを直接倒すことはできなくともその時のイベントに参加したということになって、イベントの景品は同じように貰うことができる。

 何が出て来るかは、ランダムだけどね。イベント後に交換会が起きるのはどのゲームでもあることらしい。


「お守りをしながら、活躍させてあげなさいってこと? 結構面倒だね」

「モモならできるだろう? 他の連中には頼めないからな」


 なら私にも頼まないで! と言いたいところだけど、ケーナの面倒を見て貰っているからねぇ……。

 ちらりと、タマモちゃんに目を向けると、どうやらずっと私を見ていたらしい。視線が合ったところで頷いている。

 タマモちゃんはおもしろそうだと考えてるのかな?


「とりあえず同行するけど、向こうの連中の反応次第だよ」

「イザとなれば、ニンジャ姿に変わればすぐに納得するさ」


 ここは頷かないでおこう。

 そうだ!


「ところで、警邏の仕事を手伝ったらこれを貰ったの。ケーナとシグにあげる」


 バンダナに包まれた指輪をシグ達の前に差し出した。

 包を開けると、すぐにシグが仮想スクリーンを開いている。【鑑定】スキルを持ってるのかな?


「まだ、この種のアイテムは出回っていないはずだが?」

「警邏さんが出所だから、運営に絡んでるんだろうね。私達には必要ないけど、ケーナ達には使えるんじゃない?」

「ああ、そうだな。ありがたく頂いとくよ。正直な話、あまり鎧の装甲が良くないんだ」


 シグとケーナで1個ずつ手にした。直ぐに指に通しているから、やはり必要な品ということなんだろうね。


「それで、明日はどうするの?」

「シグ達と狩りをしようかな」


 リーザの問いに即答したら、ケーナとタマモちゃんが腕をのばして握手している。

 シグ達もケーナ達の姿に笑みを浮かべているから、一緒に連れてってくれるに違いない。


「モモ達はレンジャーと獣魔使いで良いのか? かなりレベルの高い獣が出て来るぞ」

「その時はその時よ。ラグランジュ王国でおもしろいものを手に入れたから、それも使ってみようと思うんだ」


 シグ達が首を捻っているけど、人形使いのスキルを手に入れたとは思わないだろうね。

 仕様書の通りなら、かなりの攻撃力があるんだけど、それを確かめるにも都合が良い。


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