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140 光の剣は3分間だけ


【粒子砲】は連発出来ないようだ。再び【粒子砲】で狙ってくるかと思ったんだけど、その場から大きくジャンプして私に飛び掛かって来る。

 首を狙おうと長剣を突き出したのだが、前足の一振りで長剣の横を殴られたから私の手から長剣が飛び出して行った。

 

 横に転がるようにして攻撃を避けると、大きく上空に飛びあがる。

 お尻の装甲板を上げながらボルトを射出すると、私の意識がもう1つ現れる。

 ボルトの操作をもう一人の私に任せて、左腕を下げて、左腕の装甲板の裏のギミックを作動する。

 ポトリと長い筒状の物が、手の中に納まった。


 筒を持って両手を広げると、筒の先から光の棒が延びていく。およそ2m程だろうか。長剣の長さとほぼ同じなんだけど、これが新たな武器ということになるんだろうね。

【光の剣】とナナイさんが笑みを浮かべて教えてくれたけど、こんな剣なんだ。

 

 ちょっと、中二病的なところが無くはないけど、威力があるなら都合が良い。

 ただ、問題が無いわけではない。棒状の光を出せる時間は3分ということだった。

 

「威力はあるんだけど、持続時間がないの。数回使えるように、3分で切れるようにしてあるわ。次に使えるまでに1時間程度かかるから注意してね」


 早々と使う機会が出て来るとは思わなかったな。

 だけどこれでダメなら、タマモちゃんに頼むことになってしまう。


 4本のボルトがオオカミを襲っている。

 その間に割り込むように、上空から剣を上段に構えてダイブした。

 

 鬱陶しそうに、ボルトの攻撃を避けているオオカミは上空には注意が向いていないみたいだ。

【レイガン】の威力が上がったんだろう。貫通はしていないけど、当たった時には苦しそうな声を上げている。

 

「デェェ!」


 声を上げながら光の剣を振りぬいた。

 寸前で私のことに気が付いたのか、オオカミも転がり込むようにして私の斬撃を避ける。

 地面まで突き通した光の剣の熱で地面からシュゥゥと水蒸気が上がる。

 剣を引き抜かずに、その位置からオオカミの胴を薙ぎ払う。


 全く斬った衝撃がつたわらないが、腹を割られたオオカミからはらわたが地面に落ちた。

 その時だ。

 オオカミの口が開かれ、口の奥に光が集束を始めた。

 咄嗟に、オオカミを跳び越しながら、下に向かって剣を振り切る。

 ドサリ! と音がして、振り返った私の目に、オオカミの首が落ちているのが見えた。


 やはりキュブレムの機動性がかなり向上している。

 ほとんどニンジャの動きに追従してるんだからね。光の剣が、もう少し長く使えたなら、世界を取れるんじゃないかな?


 さて、タマモちゃんの方はどうなったんだろう?

 曲がり角の先で戦っているから、ここからでは見えないんだよね。

 キュブレムを街道の下方向に向かって進めようとした矢先に、上空から2筋の光線が地上に落ちてきた。

 瓦礫が焼けた瓦礫が飛散すると同時に大音響と振動がキュブレムを通して私にまで到達してくる。


 ロブレスの攻撃?

 上空を見ると、大きな光の塊がキラキラと輝きながら消えかかっている。

 役目を終えて、元の場所に戻ったんだろうけど、やはりレムリア世界であの怪獣は問題じゃないのかな?

 イザナミさんの感性を疑うわけじゃないけど、もう少し穏便なしもべでも良かったように思える。

 タマモちゃんは3つのしもべと言ってたけど、残りの1体も気になるところだ。

 ゴ〇ラという訳ではないんだろうけどね。


 気を取り直して、街道を下がっていく。

 角を曲がって目に入ったのは、大きなクレーターだった。

 街道のど真ん中に直径数十mの丸い穴が空いている。周囲の崖もクレーターの出現で削り取られているけど、これも1日で治るんだろうか?

 まだ、クレーターの中は赤熱して煙が上がっているんだよね。

 

「お姉ちゃん! こっちは終わったよ。お姉ちゃんの方は?」

「何とか倒せたよ。ララアさんは?」

「今そちらに向かってます。タマモちゃんの指示でかなり遠ざかったんですが、とんでもない威力ですね」


 ラゴウを人形に戻していたのかな?

 やがてクレーターの向かい側にララアさんが姿を現した。タマモちゃんも上空から下りてきて基に姿に戻っている。

 周囲の状況を確認したところで、私もキュブレムから抜け出し、改めてクレーターの中を覗き込んだ。


「あの怪獣の攻撃がこれほどとは思いませんでした。【粒子砲】ではないようですね。【闇属性魔法】、【光属性魔法】に【火属性】魔法の集合魔法だと推測しましたが……」


 ララアさんがタマモちゃんに手を貸して貰って、クレーターを跳び越えてきた。

 私の傍に着いた途端そんな話を始めたけど、それ以外にもあるんじゃないかな。


「タマモちゃん。結局、岩石熊は倒せたの?」

「【探索】で見つからないし、最後に見た時にはこのクレーターの真ん中にいたから倒せたと思う」


 影も形も無くなったということなんだろうね。

 前に見た時のキング〇ドラは森を焼き尽くしていたから、今回も熱線を吐き出してくるのかと思ってたんだけど、こんなクレーターを作ることもできるとは思わなかった。


「運営の皆さんに、街道の修理をお任せして先を急ぎましょう。でもその前に、どこかでお茶を飲みたいですね」


 ララアさんの提案に、タマモちゃんもうんうんと頷いている。

 もちろん私も賛成だ。

 この惨状を見ながら飲みたくはないから、もう少し街道を北上したところで休憩しましょう。


 周囲を警戒しながら、30分ほど街道を進むとさすがに煙の臭いが無くなって来た。

 まだまだ九十九折の坂道が続いているけど、街道脇のちょっとした広場を見付けてお茶を沸かして休憩を取る。


「まだ先なのかな。GTOを使う?」

「そうねぇ……。【探索】の結果では、街道付近に魔獣がいないから良いんじゃないかな」


「あの衝撃音で魔獣が散ってしまったのでしょうね。獣は危機管理が本能的にできているそうですから」

「襲う相手を見極める、ということですか?」


「兄様にそのように教えて頂きました。リアル世界での付き合いで狩猟に出掛けることが多いようです」


 セレブなんだろうね。狩猟と言っても日本での狩りじゃなさそうだ。

 簡単に作ったお茶なんだけど、ララアさんは美味しそうに飲んでいる。後で不味いお茶を飲まされた、なんて言われないかな?


「キュブレムの性能はかなり向上してます。光の剣で最後は首を落としました」

「あれですね……。兄様も、最初は喜んでいたんですけど、今では不満をいつも口にしています」


「稼働時間の制約ですね。確かに問題ではありますが、私には丁度合っている気がします。多数を相手にしませんから」

「ナナイが改良を図ってはいるのですが、騎士団の要求にはまだ足りないようですね」


 戦場では、困るだろうね。

 工夫するより先に、別の手段を考えた方が良いんじゃないかな?


「ラゴウの性能は、少し物足りないところはありますが、そこそこ使えるでしょう。良い戦闘データをナナイに渡せそうです」

「あの硬い熊のレベルは45あったよ。これでこの辺りまでは冒険者の人達も来れるよね」


「そうね。ララアさんの話だと、私達に近付かないということは、レベルが低いという事になりそう。次の村までは、シドンから歩いて1日ということだからGTOなr直ぐに行けるんじゃないかな? でも、見通しが悪いからのんびり進みましょう」


 お茶が終わると、タマモちゃんがGTOを呼び出した。

 3人で甲羅の上に乗り込むとGTOがゆっくりと歩き始める。

 ゆっくりと言っても、歩くよりは遥かに速い。

 1時間も掛からずに、次の村を見ることができた。とは言っても、坂道の途中で見えた村に到着するには、曲がりくねった坂道を進まねばならない。

 曲がり角を巡る旅に、だんだんと村の姿がはっきりと見えてくる。

 どうやら村は峠に作られているようだ。


「村とは聞きましたが、だいぶ立派な石壁ですね」

「それだけレベルの高い魔獣が多いということになるんでしょう。でも規模は小さいですよ。次の町に向かう途中の宿場という感じですね」


 石壁の幅は150m程だ。小さな2つの尾根をまたぐような形で作られている。あれだと水源に苦労しそうにも思えるけど、ここは仮想世界だからね。都合よく作ってあるんだろうな。


 村の門に到着する前にGTOから下りて歩くことにした。

 さすがにGTOで、村に入るわけにはいかないからね。

 城門を守る門番さんは、老人ではなく屈強な男性が2人だ。何かあれば直ぐに城門を閉じるのだろう。


「冒険者とは珍しいな。しばらくは誰も来なかったんだが?」

「街道の途中で大きな魔獣がいたからでしょう。どうにか倒しましたから、その内にやって来ると思いますよ」


「そうなのか? 確かに荷馬車すら来なかったからなぁ……。だが、倒してくれたならこっちも助かる。ゆっくり休んでいってくれよ。次の町までは2日の距離だからな」


 門番さんに礼を言って村の中に入る。

 門を抜けると、30m程の小さな広場があり街道に沿って真っすぐに北に向かって通りが作られていた。遠くに北の門が見えるから、さほど大きな村ではないことが直ぐに分かる。


「宿屋が2つにギルドが1つ。本当に小さな村ですね」

「とりあえず、ギルドに向かいましょう。到着報告をすれば、ここに【転移】できるから」


 村の西側に大きな建物が並び、東側には2つの雑貨屋があるだけだ。その東側にある建物は住民の住まいなんだろう。

 教会は北東の一角にあるけど、尖塔だけが見えている。

 広場から2つ目の西側にある建物がギルドだった。少し大きく見えたのは警邏事務所を兼ねた作りだからだろう。

 入り口の看板は2つ出ていた。


 ギルドのホールに入ると、がらんとしている。

 NPCの冒険者ぐらいいると思ってたんだけど、生憎とこの村には配属されていないようだ。

 カウンターのお姉さんも1人だけだ。

 カウンターで到着報告をすると、ホールの1画にある扉から1人の男性が現れた。扉の上に警邏事務所と書かれているから、警邏さんの出張所になるんだろう。


「手続きが終わったら、話を聞かせて貰えないかな?」

「良いですよ。今日はこの村に留まる予定ですし、特に急ぎの依頼書は無いようですから」


 急ぎの依頼書があれば、カウンターのお姉さんが直ぐに頼んでくるはずだ。

 手続きを終えたところで、男性が腰を下ろしたテーブルへと向かう。

 たぶん、途中のキメラの話に違いない。


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