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ちょっとだけ終着地点が見えてきました。誤字脱字は後に修正予定です

 


 クレイルに抱えられたまま王宮に転移すると主だった面子に出迎えられた。

 皆さんの顔に張り付いてるのは驚愕の二文字。信じられない につきるって感じ。


 まあウルウルされた目で拝まれるよりましか。

 とっとと済ませよう。

 クレイルの腕から降り、

「言っときたい事があるんだけど」


 

 皆さん固まってどもるばかりだったので話は早く済んだ。私はとっととあてがわれた部屋に引っ込もうとしたところ、クレイルが目の前に立ち塞がった。

「…何故、今まで黙っていた?こんなにあっさり…あれだけの魔物を倒す力がありながら。何故もっと早くに言ってくれなかった?」

「あぁ、誰でもいいみたいだったから、私以外の誰かやりたい人でもいいんじゃないかなー、と思って?」

 それが何か?

 ーーついでにこの魔力経験値付きだから行使するの簡単だけど、代償無しでもないからね?


 固まるクレイルを無視して部屋に戻り、自分の周囲に結界を張って倒れ込んだ。すぐに睡魔に襲われる。

 ーー良かった、効果あった。

 へとへとに疲れさせないと眠れないだろう自信があった。だから限界ギリギリまで体を酷使しようと思った。1番ヤバいのから取り掛かったのは、単なる嫌がらせだ。あとヤケだ。


 ーーーだってもう帰れない。


 今日くらいは泣いたっていいだろう、あの結界は人も魔物も音も通さない。嗚咽だって誰にも聴こえない。

 だからいいのだ。


 私は泣きながら眠った。


 目が覚めて思い知る。

 目が覚めた時に近くに体温を感じる感覚がどんなに幸せなものだったのか、横で眠る子供

 の呼吸にどれだけ癒されていたか。

 おはようとおやすみを言い合う、愚痴を言い合う、約束をする。

 その相手が一切いない場所に今はいる。

 喪失感が半端ない。カリンですらいてくれたらそれだけでいいとさえ思える。


 ほんと、ろくでもないな私。

 そう、聖女の力を宿して落ちてきたのは私だ。

 落ちた時、まず思ったのはこんなに大人数にあの力の記憶みたいなの流れ込んだのか?だ。

 どうやら違うらしい。だって誰も名乗りをあげない。

 単に私と同じ、そんなの真っ平だ、帰りたい。と思ってるからかもしれない。

 単に時間差で受け取るものなのかもしれない、数年かかった人もいるっていうし。

 そうだ全員でなくても。

 他に1人か2人くらい、適性がある人がいる筈だ。

 私だけなんてあり得ない。

 でも、カリンは違うみたい。

 ハルカは?もしかしたら遅れて私と同じようになるかもしれない。

 魔物の進軍が近づいてくるのを感じる。

 ここの結界は強いけど、カンナちゃんが弱ってる。また病気になるかもしれない。


 だから、結界を強化して廻った。

 あんな事になるとは思わずに。


 だって、私はアラサー喪女だ。

 仕事中はノーメイクで引っ詰め髪の御局で、色恋沙汰にもお洒落にも興味がなくて。

 そんな私の趣味は読書とゴスロリだ。何をするかっていうと休みの日にはゴスロリ服で固めて、メイクばっちりの別人に化けてそのテの場所を闊歩する事だ。

 アラサーだけど、モブ顔だけど、化粧をしない替わりに素肌の手入れをしっかりしてきたおかげで肌年齢は若く、化粧映えもした。昨今のメイク道具&技術は凄い。長い髪をおろすと20代にしか見えない自分を楽しんでいた、あの日も。

 原宿にいたのはそういう理由だ。イタいアラサーなのは自覚してる。でもこの処遇は納得いかない。やりたいって子が他にいたんだから他にやらせれば良かったのだ、こんなもん。


 そして歌はストレス解消の一つだ。ジャンル問わずに気に入れば何でも聴くし何でも歌う。友達と行く時もあるけど、ヒトカラだって全然平気だ。


 今思えばせがまれて歌ってたのも立派にストレス解消だった。歌ったら喜んでくれる相手がいたからだ。

 面倒をみてたというより共生してた

 の方が正しい。

 もう聴かせる相手もいない。ストレスってどのくらいたまると爆発するのかな?



 私は熱心に勉強した。ここに落ちた時こうなる事を危惧したからだ。

 授業も熱心に受けたし図書館にも通った。だが、聖女に関する記録は驚く程少ない。図書の記録より教科書の方が多いくらい。

  行き詰まった私は物語を読んでみた。物語は昔語り。その土地の伝説から派生したものだってある筈だ。そこから何か拾えたらいい、そう思って。


 そしてみつけた。

 本当に小さな汚れやページの折り目にみせかけて書かれた日本語を。


 最初はほんとに汚れかと思ったが良くみるとカタカナの”カ”に見えたそれ。そのままページを繰って行くと次にみつけたそれは”レ”

 ーーーやっぱり。日本語だ。そう確信してみていくと同じシリーズの各巻にそれはみつける事が出来た。

 ”カレニアイタイ”

 ”カラダヲダイジニ”

 ”モウゲンカイ”

 ”ゼツボウシナイデ”

 ”カエリタカッタ”

 ”タマシイダケデモ”

 ”ナカナイデ”

 ”ワタシガイル”

 涙が出そうになった。図書館で泣くとマズいので部屋に持ち返って泣きながらそれらをなぞった。

 最後の巻にあったのは”キョウカショ”

 教科書ーーー?

 私達が使ってる教科書は新品だ。書き込みはされてない。歴代聖女が使ってた教科書が保管されているのだろうか?そう思ってきいてみればやはり。一般には閲覧不可の場所にそれはあった。結界もあったけど私は入る事が出来た。そしてみつけた。

 教科書の書き込みにみせかけて時々()や””で

 挟んだそれらの文字を。

 一見、ただの一言ずつにしかみえないそれをなぞっていくと。


 ”聖女 は 遺体 も 残らない 命運 月 れ ば消える”

 

 命が尽きれば遺体も残さず消える。

 予測してはいたがショックだった。

 そりゃあ、まともな修行一つした事ない人間をいきなりこんな高スキルな魔法使いにしちゃうんだからある意味当然なんだけど。



 うん知ったら逃げたくなるよね?ただの人間だもん聖人じゃないもん。


 そして今の体の状態。一晩寝ただけですっきり回復してる。回復力が異様に高いのも魔力の一つ。魔物を殲滅する力、誰かを癒す力、守る力。どれも自在に発動出来るけど源は生命力、つまりは寿命を使ってるんだと思う。


 やっぱ生贄じゃん。

 

 先代聖女が召喚されたのは48年前。つまり今携わっている連中は知らないのだと思う。知ってる古株も言わないだろう。

 神殿にはこの世界出身の聖女のみが祀られている。つまりそういう事なんだろう。


 だから、

「無茶な戦い方をするなと言ってるだろう!」

 とかお母さんみたいな事言うクレイルに

「あなた、馬鹿なの?」

 とか言っちゃうのだ。


 ーーー何も知らないくせに。


ツキナは恋愛ごとに関しての感覚がほぼ壊死してる上に天邪鬼体質です。

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