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アルティア戦乱記 -魔女と懐刀-  作者: 刀矢武士
第一章 抵抗戦
22/29

第十三話 敵中突破①

軍議室



ラピュセル

「ごめんなさい。遅くなったわ」


ルシフォール

「お待ちしておりました」


バゼラン

「おし。揃ったところで始めるぞ」


ウィル

「偵察からの報告では、後退していた敵軍が再び前進を開始したと」


ルシフォール

「はい。今回は前回と違い、敵はこちらの目前から進軍してきます」


マーチル

「再びこちらと対峙するまでの時間はどのくらいですか?」


ルシフォール

「恐らく、一日というところでしょう」


ラピュセル

「一日……」


ウィル

「さすがに速いですね」


バゼラン

「後退したとはいえ、そこまで時間が経った訳じゃない。そんなものだろうよ」


マーチル

「それしか時間が無いのなら、策は……」


バゼラン

「さすがに厳しいな……」


ウィル

「そうですね……。こちらの奇襲が読まれていたのは想定外でした」


ルシフォール

「申し訳ありません。敵がこちらの都市を占拠してある以上、周辺の地形を記録から調べている可能性を失念していました」


ラピュセル

「……奇襲部隊の被害は」


ウィル

「帰還したのはおよそ四百五十。残りは死亡、もしくは行方不明です」


ラピュセル

「そう……」


バゼラン

「気落ちしても仕方ありやせんぜ。今はまず、次の戦だ」


マーチル

「私もそう思います。次の戦で勝つことが、亡くなられた方々への弔いでしょう」


バゼラン

「そういうこった。とはいえ」


ルシフォール

「ええ。正直、非常に厳しいと言わざるを得ません」


ウィル

「前のガレスの時は……テンマの策がうまくいったからなんとかなりましたが」


ルシフォール

「そうですね。私にも、次の策が無い訳ではないのですが」


ラピュセル

「それは?」


ルシフォール

「火計です」


マーチル

「火計!?」


バゼラン

「なるほど。街道沿いの森に火を放つか」


ルシフォール

「はい。うまくいけば、相当数の敵を削ることができます」


ウィル

「お待ちを。それでは砦の護りが」


ルシフォール

「その通り。この策は下手をすれば、せっかくの地の利を自ら放棄することになります」


バゼラン

「敵は今回の、ブライスとか言ったか。そいつだけじゃないからな」


マーチル

「王国全土に展開する敵は、確か七万でしたよね……」


ウィル

「ああ。ガレスを撃破したことで、その内の一部は削ったはずだけど」


バゼラン

「だがその気になれば、敵は帝国本土から更に増援を寄越せるだろうよ」


ルシフォール

「でしょうね。正直、その増援を含めた敵の総戦力は未知数です」


マーチル

「そんな……」


ラピュセル

「だからこそ、今迫る敵は必ず倒さないといけない。それも、火計は使わずに」


ルシフォール

「はい。ただ、正直もうそれ以外に策は……」


バゼラン

「せいぜい先日と同じ場所に布陣して敵の進軍路を制限しつつ、隙を見て指揮官を討つ、といったところか」


ウィル

「それしかありませんね」


ラピュセル

(ムサシなら、何か策を立てられたのかしら……いえ、ダメね。彼一人に頼りきりじゃ)


ラピュセル

「誰か、他に意見のある人はいる?」


バゼラン

「今回は時間が無い。何も無ければ、この後すぐにーー」


ルーミン

「お姉ちゃん……」


マーチル

「? ルーミン、どうかしたの」


ルーミン

「……これ」


マーチル

「紙?」


ラピュセル

「二人とも、どうかした?」


マーチル

「あ、いえ。ルーミンが何か紙を……え? なに……えっ!?」


ラピュセル

「どうしたの?」


マーチル

「は、はい。この紙、この前ムサシさんが出陣する前にこの子に渡した物みたいなんですけど」


バゼラン

「それがどうかしたのか?」


マーチル

「この子が言うには、万が一奇襲に失敗した場合の次の策を記してある、と」


ラピュセル

「えっ!?」


バゼラン

「なんだと!?」


ウィル

「…………」


ルシフォール

「本当ですか?」


ルーミン

「…………」


マーチル

(この子、前も確か……)


ラピュセル

「それ、見せてくれる?」


マーチル

「はい。どうぞ」


ラピュセル

「…………これは」


バゼラン

「内容は?」


ラピュセル

「どうぞ」


バゼラン

「どれどれ…………ほう。こいつは策というよりは戦術か」


ルシフォール

「戦術、ですか。どのような?」


ウィル

「……また、あいつの故郷(くに)の戦術ですか?」


バゼラン

「ああ。だが、それだけじゃねえ」


マーチル

「どういうことです?」


ラピュセル

「彼の故郷(くに)の戦術に、今の私たちが取れる戦術を掛け合わせたものね」


バゼラン

「ああ。鍵は俺と、そしてお前だぞ。マーチル」


マーチル

「私!?」


ラピュセル

「それと、馬屋の方にも連絡を。出来るだけ足の速い馬を至急用意するようにと」


兵士

「数はいかがいたしますか?」


ラピュセル

「可能な限り多く。敵から接収した馬も、出せるものは出すように伝えて」


兵士

「はっ! 直ちに!」


バゼラン

「よし。では今からあいつの策を伝えるぞ」


ラピュセル

「ともすれば、これはガレスの時以上の賭け。まさしく乾坤一擲よ」


バゼラン

「だが勝算はあると踏んだ。というより、何がなんでも勝たにゃあならん……てめえら、覚悟はいいな?」


全員

「「はっ!」」


バゼラン

「よし。聞き漏らすんじゃねえぞ。まずーー」


ラピュセル

(必ず勝つわ。だから貴方は、安心して休んでいてね、ムサシ)



□□□□□



  そして、翌日。

  全軍がソレイル城塞を出陣し、迎撃地点へと向かった後で。


「…………」


  ムサシは一人、目を覚ました。

本当は一話にまとめたかったのですが、そうすると冗長になるため分割しました。

次の投稿をお待ちくださいませ。

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