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救世英雄譚最終章

作者: Tak1932

 カイトを庇い深手を負ったヨスガはカイトを逃がすために、闇の魔法使いに戦いを挑んだ。


 「・・・ここは俺が引き受ける。お前達はカイトを連れてここから逃げろ!!」


 カイトはその場に残ろうとするが、サラ達に強引に連れられてそこから離されていく。


 「離してくれ!俺もヨスガと一緒に戦う!!」

 「駄目です!今の私達ではヨスガさんの足手まといにしかなりません!!」


 「けど、ヨスガは俺を庇って!」

 「分かっています!そのヨスガさんが私達を逃がす為に殿を勤めてくれているんです!!私達ではあの闇魔法使いに追いつかれたらどうしようもありません。今は逃げるしかないんです!!!」


 「ヨスガを置いてなんて行けない!俺だけでも残って・・・」

 「いい加減にしてください!!辛いのは貴方だけじゃない!!私だってヨスガさんを置いて逃げるなんて嫌です。だけど、今は一刻も早く逃げ延びる事がヨスガさんの為になるんです!ヨスガさん一人なら、逃げる位の事は出来るはずです!・・・だから、今は一刻も早く!!」


 「うぅ・・・ヨスガー!」


 「強くなれ!カイト!!」


 逃げていくカイト達にヨスガはカイトに最後になるだろう言葉を掛けた。

 そして、追いついてきた闇の魔法使いに向き直り睨み付ける。


 「悪いがここから先は通行止めだ。通りたければ俺を倒していけ!」

 「・・・ひひひっ!ぎゃはー!!!」


 既に理性無き闇の化生と化した闇の魔法使いとヨスガの戦いはその身の傷を感じさせぬものであった。

 しかし、ヨスガはスキル限界を優に超える間使い続けた為体は既にボロボロであった。

 それでもヨスガは戦い続けた。

 全てはカイトの為に、ただ一人の家族を守るために。


 「・・・ぐふっ!」


 だが、そんなヨスガを嘲笑うかの如く悠然と衰えた様子を見せることも無くそいつは歩み寄ってくる。


 もはや立つ事すら不可能なヨスガを見てニヤニヤとしながらゆっくりと、絶望を感じさせようとするかのように。


 「はぁ・・・はぁ・・・ここまで、か」


 今にも途切れそうな意識の中、ヨスガは一つの術式の準備を始める。

 そして、それを発動させた。

 闇の魔法使いは直前でそれを察し慌てて止めを刺そうとするが、術式の完成の方が早かった。


 「すまんなぁ・・・カイト、やくそ、く、はたせ・・・」



 そして、その場を閃光が満たし、その日ザウル帝国帝都ザウリスは世界から消滅した。



************************************


 ザウリスでの戦いから三年、カイト達は再び闇の魔法使いと対峙し追い詰めていた。

 三年前の戦いでは、手も足も出なかったカイト達はヨスガの死を受け止められず苦悩した。

 特にカイトはあのザウリスで発生した爆発を見て直ぐにザウリスまで赴いた。


 だがそこにはヨスガの姿どころかザウリスの建物一つ存在しなかった。


 カイトはそれから必死で、それこそ寝食を忘れて探した、探し続けた。

 仲間が止めるのも聞かず、最後には倒れても探そうとした。

 だが何もありはしなかった。


 あるのは全てが消し飛ばされた証拠とばかりに空いているクレーターだけだった。


 それからカイトは塞ぎ込んだ。

 仲間達がどれだけ声を掛けても返事をすることも無く、食事も取らず宿にこもり続けた。


 だがそんなカイトも目を前に向ける事が出来た。

 サラが目を覚まさせることに成功した。


 ヨスガの最後にカイトに告げた言葉を思い出し、カイトはあの時の無力感を感じる程の力の差をどうにかする為、仲間と共に魔の森に帰り、そこで力を磨いた。


 そして、それから2年後、ヨスガとの別れから2年半後世界を震撼させる事件が発生する。


 かつてザウリスでヨスガと戦っていた闇の魔法使いが魔王を名乗り、魔界の住人である魔族を率いて人類に戦線を布告してきたのだ。

 後に『人魔大戦』と呼ばれる戦いの幕開けだ。


 会戦当初人類側は各々の国が個別に対応するも、魔族の圧倒的な力の前に悉く蹂躙される事になった。

 そして、会戦からたったの一月で人類側の国は半数が落とされ、残りの国も苦しい戦いを強いられていた。

 人類の数は会戦当初の3分の1にまで減り、もはや、全滅を迎えるのも遠くない状況であった。


 そんな絶望の中カイト達が帰還する。

 そしてそこから人類の反撃が始まった。

 今まで辛酸を舐めさせられてきた人類は、カイト達が中心となり遂に結束。

 種族、民族、宗教、全ての垣根を越え人類の危機に立ち向かう為に『全人類同盟』を結成。

 そこからは多くの犠牲を払いながらも、魔王軍を撃退し、かつて人類側の国があった領域の奪還に成功し、半年後、遂にかつてザウリスがあった現魔王軍の本拠地


 魔王城に突入、そして激闘の末、魔王を追い詰めていた。


 「・・・長かった。貴様の事を忘れたことは無かったぞ!魔王!!」


 「くひゃっ!ひゃ、ひゃひゃひゃひゃ、かはっ!・・・あん時の糞餓鬼が俺を倒せる位になるとは、まったく予想外だったぜ・・・」


 「ああ、そうだ貴様が生きているとは思わなかったが、あんな思いをする事が二度と無いように俺は必死で力を手に入れた!そして、今俺はお前に勝った。」


 「ああ、そうだな・・・お前の勝ちだな~糞餓鬼、ひゃひゃっ!」


 「・・・お前には聞きたい事がある。」


 「ああん?あんだよ?」


 「3年前、ここでお前と戦ったヨスガの事だ。あの時、何があった?」


 「3年前・・・ああ、奴か、ああ、ああそうだあの時から全てが狂ったんだ!」


 そこから魔王は語り始める。

 何処にそんな力が残っていたのか分からない程に、憎悪をその目に込め、あの日にあった事を語る。


 そして、その話が終わった時にカイトは改めてヨスガが死んだという事を理解する。

 分かっていたつもりだった、それでももしかしたら・・・

 そう思いあの時の真実を知る魔王なら、何かを知っているのではないかと、そんな儚い希望に縋りここまで来た。

 だが、今漸く現実としてそれを受け止める。

 心を悲しみが満たし、その頬を涙が流れた。


 しかし、そんな感傷に浸る時間はカイトには与えられなかった。


 「かひゃっ!!・・・・ありがとうよ!無駄話に付き合ってくれたお陰で完成した!!!」


 「な!?」


 「・・・何もかも、消えちまえ~!!!『ブラックホール』!!!!」


 その時魔王の体の内から膨れ上がるように闇の渦が現れた。


 「これが発動した今!世界は終わりだ!!ひゃはははっ!!消えろ!、みんな消えちまえええええぇぇぇ~・・・」


 そしてその渦は魔王を飲み込み、そのまま周辺の物を無差別にありとあらゆる物を吸い込み始める。


 カイトは魔法名を聞いた瞬間に距離をとり仲間達の下にまで戻り事なきを得たが、魔王の周囲に集まってきていた魔族が次々に闇の渦に飲み込まれていく。


 「カイト!大丈夫?」


 「ああ、サラ、俺は大丈夫だ。けど、まずい事になった。」


 「あれの事か・・・?何なんだ、あれは?」


 「・・・ヨスガから聞いた事はある、闇の越級魔法『ブラックホール』だ。」


 「!?越級って!?嘘だろ!?そんなの御伽噺の中でしか聞いた事がないぞ!」


 「それに闇の越級魔法なんて聞いた事もありません」


 「事実だ、こいつは厄介な事に一度発生すると如何な手段を用いても解除する事は出来ず、どんどんその勢力を広げていき例え世界が滅んだとしても止まる事無く全てを飲み込み続ける・・・。ありとあらゆる物を無に帰したとしても止まるとは思えない。世界を変えると呼ばれる越級魔法の中でもトビっきりの危険な魔法だから、抹消された魔法なんだ。知らなくて当然だよ。」


 「じゃあ、どうするんだよ!?何か手は無いのかよ!!」


 カイトからの説明を聞き絶望に包まれる仲間達にしかしカイトは明るく声を掛ける。


 「大丈夫だ!この魔法には対になるものが存在し、その魔法をぶつければ消し飛ばす事が出来る!」


 それを聞いてホッとした表情を浮かべる仲間達。


 「なんだよ、驚かせやがって!」

 「まったくだよ!その魔法をカイトは使えるんだろ?」


 「ああ、もちろんだ。ヨスガから習ったから、使える。だが準備に時間が掛かる上に周辺への被害が馬鹿にならないんだ。だから、みんなはすぐさま魔王城内の友軍と周辺に展開している部隊を最終防衛ラインにまで下げる様に指示を出した後、そのまま後退して欲しい。」


 「わかったわ。けどカイトはどうするの?」


 「俺は大丈夫だ、自分の魔法で自滅するような間抜けじゃないつもりだからな!だが、あまり悠長にもしていられない、みんな急いでくれ!!」


 「わかったわ!」

 「任せろ!!」

 「・・・えぇ」


 そして仲間達は散り散りにその場から離れそれぞれに味方に後退の指示を出しにいく。


 それを見送ったカイトはブラックホールを遠めに眺めながら術式を構築し始める。



************************************



 それから少したった後、サラが一人でカイトの元に戻ってきて撤退状況を説明した。


 「城内の兵の撤収は完了したわ。リドとカレンは本隊と合流して魔族と魔物の残党を倒して撤退の支援をしているから周辺の部隊ももうじき撤退が完了すると思うわ。」


 「そうか、じゃあサラも撤退してくれ。後は俺一人で大丈夫だから。」


 そういいカイトはサラに背を向けたまま術式の構築に意識を向けようとした、が。


 「・・・カイト、あなた、何か隠してるでしょ?」


 というサラからの何かを確信したかの様な声に止められる。


 「・・・何の話だよ?」


 「あなた、本当に隠し事下手よね。丸分かりよ?」


 とぼけようとしたカイトに、すかさずサラはそう答え更に機先を制する様に確信をつく。


 「あなた、死ぬ気でしょ?」


 「!?」


 「図星、ね?」


 「・・・」


 それで黙り込むカイトに対してサラはそっとカイトに寄り添うように傍により声を掛ける。


 「ねえ、カイト。貴方が何をするつもりか、私は分からない。けどね、私は貴方を一人で逝かせる気はないの。」


 「駄目だ!サラは生きて・・・!?」


 その時カイトの反論を塞ぐ様に、サラの方に振り向いたカイトの唇を自らのそれで塞いだ。

 二人はしばらくの間、サラが離れるまでそのままでいた。


 「・・・な、え・・・?」


 カイトはそんな意味の無い言葉しか口に出来ず、正直未だに術式の構築を続けているのが奇跡の様な有様だ。

 それを見てサラはクスリと笑みを浮かべ口を開く。


 「私は貴方が好き」


 「え・・・?だって、え?」


 突然のキスとその後の告白にカイトの混乱は深まるばかりだが、そんな事は関係ないとばかりにサラは続ける。


 「ええ、あなたが疑問に思っている通り私はヨスガさんが好きだった。」


 「・・・だった「けどね?」ら?」


 「あの人が居なくなってからの貴方を、私はずっと見てきた。最初は情けない貴方の姿を見て、ヨスガさんの代わりに私がしっかりしないと、なんて思っていたりしたのよ?けどね、ヨスガさんの最後の言葉を思い出して奮い立った貴方を見てね、考えが変わったわ、カイトは私なんか居なくても大丈夫だって。ねえ?覚えてる?あの日の夜の事。私が夜中に家を飛び出して一人で魔の森の中でブラッドウルフの群れに囲まれて居た時の事。私はそんな事を考えてたの・・・。滑稽でしょ?」


 「そんなことは・・・!」


 「ううんそんな事あるわ。今思えば一体何様のつもりかって思うもの。誰もヨスガさんの代わりになんて成れる訳が無い。そんな当たり前の事すら分かってなかったんだから。・・・けどね、私がブラッドウルフに飛び掛られた時に、助けに来てくれた貴方が、あの時言った言葉、覚えてる?」


 「・・・いやあの時はサラを助けなくっちゃって必死で、何を言ったのかは覚えてない」


 「ふふふっそうでしょうね、貴方あの時ひどい顔だったもの。本当にひどい顔だったわ・・・。ブラッドウルフを倒した後も私を無理やり抱き寄せて大泣きしてた位だものね?」


 「勘弁してくれ・・・」


 「ふふふっ、ええ、話を戻すわね。貴方があの時言った言葉はね?『もう誰にも俺の大切な人は奪わせない!』よ」


 「・・・うぉー」


 思わず頭を抱えるカイトに、そんなカイトの胸に抱きつきながらサラは言う。


 「けどね、私はそう言われてうれしかったの。それと同時に思い出したわ、私が5歳の時に誘拐されそうになった所を助けてくれた人たちが居た事を。そのときと同じように私の前に立って一生懸命私を庇おうとしてくれた、男の子が居た事を。・・・貴方よね?カイト」


 「!?」


 サラを胸に抱えながらカイトは慌てるがそれを見てクスクス笑うサラを見ていると馬鹿らしくなってきた。


 「ふぅ~まさか思い出していたなんて思わなかったよ・・・」


 「ふふっごめんなさいね?」


 「別に謝って欲しいわけじゃないよ」


 そう言いつつ力なくカイトは笑みを返した。

 そんな様子を可笑しそうに、同時に愛おしいものを見るように見つめ返す。


 「その時から、私はね?貴方に対する気持ちがハッキリと変わったの。もともと、5歳の時にはじめて見た貴方に私ははじめて恋をしたんだと思うの。けどその後に現れたヨスガさんの印象が強すぎた為に、その気持ちを自覚する前に上書きされてしまった。そしてその後も度々私を助けてくれたヨスガさんに抱いた感謝とか尊敬といった感情を恋と勘違いしていたみたいね。」


 そう言って彼女は、あははっと少し苦い笑みを浮かべた後、今度は幸せそうな笑みを浮かべ続ける。



 「けど、それを理解した後は早かったわ。貴方をずっと見ていたんだもの。貴方のいい所も、ちょっと情けない所も色んな貴方を見ていた。そしたらどんどん貴方が好きになっていったの。」


 そこで言葉を切って彼女はジトッとした視線をカイトに向ける。


 「それからは色々と貴方にアピールを始めたんだけど。貴方ったら全然気付いてくれないんだもの。」


 と言って頬をプクリと膨らました。

 そんな彼女にカイトは少し慌てて謝罪する。


 「ご、ごめん!」


 そんなカイトの様子を見てまたクスクス笑いながら頷く。


 「ええ、許してあげる。」


 それを聞いて安心した笑みを浮かべるカイトだったが、その顔を引き締めた。


 「サラ、俺は言うつもりは無かったけど、情けない事に先に君に言わせてしまったからね。俺も君に伝えたい。」


 一呼吸入れる。


 「サラ、君が好きだ。俺と一緒になってくれないか?」


 それに対してサラは満面の笑みを浮かべて答えを口にした。


 「ええ!よろこんで!!」


 そこでカイトは感極まった様にサラに覆いかぶさりその唇を塞ぐ。


 それからしばらくの間二人はそうしていたがどちらからとも無く離れた。

 そして二人が話をしている間も周囲の物を吸収し続け膨張を続けるブラックホールに向き直りその手を強く握り合う。

 決して離れる事の無い様に。


 「じゃあ、行こうか?」

 「ええ、何処までも」


 そう言って二人は一歩を踏み出した。


************************************


 お読みいただきありがとうございます。


 この浮気ものとか言われてるのが聞こえそうですが勘弁してください・・・

 本編も執筆進めてるのでおゆるしくだせ~


 誤字脱字、他感想評価何でもござれでウェルカムですので、気軽によろしくお願いします。


 後この作品の前を描いている途中の現在執筆中連載作品

 『黒猫の見守る英雄前日譚』

URL: http://ncode.syosetu.com/n7170cz/


 の方もどうぞよろしくお願いします。


 何分不慣れな為に大変見苦しい物でありますが、今後も精進していきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。


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