不思議な人 1
「で、リオン」
「はい」
「言いたいことは、それだけ?」
「……はい」
私の目の前で、今、説教が行われている最中だ。
理由はわかっている。
さっきの話をクロード、というもう一人に話したからだ。
確かにあんな話をしたということがばれたら怒られるだろう。
「どうしてそんな突拍子もない事を思いつくんだ!」
「いや、お前にだけは言われたくない」
「そんなことはどうでもいいだろ!!」
「理不尽!!」
終わりの無い言い争いはどんどん熱が上がっていくだけで、熱が下がる様子は一向になさそうだった。
かれこれ三十分は続いているであろう説教はただの言い争いに変わっていた。
「君の頭の中は一体どうなっているんだい?いかにも訳ありです、って言っているような子どもにどうして家族になろうなんて言えるんだい!?」
「別にいいだろ」
「いいや、関係あるね。リオン、君は自分の家を持っているのかい?」
「…………」
「目を逸らさない」
「……っち」
子どもの喧嘩、そう思ってしまった。
もう一人の青年が言うことはもっともなことだけど、リオンという青年は頑なにその言葉を受け入れない。
どうしてこんなことになったのだろう……。
「えーっと、まだ話し合いが続くとおもうから違う部屋に移ろっか?」
「は、はい」
ぼんやりと二人を眺めていると、一人の少女が入ってきた。
どことなく、もう一人の青年に似ているから兄妹なのかもしれない。
私がここにいても何も状況は変わらないだろうから、素直に返事を返す。
「お兄ちゃん、程ほどにしてね?」
「……わかってるよ」
あぁ、やっぱり兄妹だった。
どこかぼんやりしたままの頭では物事をしっかり考えることが出来ない。
そう思いつつ促されるまま部屋を後にした。