彼の提案 2
「家族になろう」
目の前に座っている青年、リオンと名乗った人物はそう言った。
あまりにも突拍子が無さすぎて、回転していた脳みそはぴたり、と動きを止めた。
不思議な人だとは思った。
こんな私を助けてくれたんだ。ただのお人好し、というには強すぎる。
私を追っていた‘奴等’は、王国魔術師兵団の団長にも匹敵する強さをもっている、そういわれるほどの腕だ。
そんな人物を相手に、彼は逃げ切ったのだ。
しかも、私を庇いながら。
この国に、そんなことが出来る人物は私の記憶には、誰一人としていない。
本当なら、警戒しなくてはならない相手でもあるのに、気が抜けてしまった。
私に大きな爆弾を投下した青年は、にこにこと笑っていた。
それはそれは、嬉しそうに。
その様子が、あまりにも自然で、逆に不自然でもあって。
もしかしたら‘奴等’の仲間なのかもしれない。
けど、仲間ならどうして私を助けたんだ?
目的は私を殺す、それだけのはずなのに。利用価値がない子どもを生かしておく必要性が見当たらなかった。
考えれば考えるほど、訳がわからなくなってくる。
彼は、本当に好意でそう言っているのか?
そうじゃなければ、余程の自分の力に自信あり、家柄も良いどこかの貴族に仕える者なのだろうか。
訳が解らない、仮にも王族である私を誘拐したとしてもリスクが大きすぎる。
ああ、もう。
いっそ意識を手放してしまいたい。
「か、」
「うん」
私には、わからないことが多すぎるんだ。
彼は優しい笑顔のままだ。
会ってすぐの人を信じることなんて出来やしない。
だから私は、
「考えさせて、ください」
そう、一言言うのが精一杯だった。
「そっか、うん」
これからよろしくね。
そう言った彼は、なんだか寂しげに見えた。