第05話Puls 異能者達のディスコード12 - 乗り込む
第05話Puls 異能者達のディスコード12 - 乗り込む
「ここから西に五百メートルほどいった場所……」
ルーファは右手を伸ばして西の方に建っているビルを指差して言う。
「たぶん、あのビルの地下のようね」
どうやら、かなりの精度で確定できたようだ。
「わかった。もう、家に帰っていいぞ。じゃあな」
俺は、ルーファに別れを告げるとすぐに移動を開始する。
ルーファが何か言おうとしたが……聞く必要はないだろう。
三分前と言っていた。
『レガシー』がどれくらいこっちの世界にあらわれているのかは知らないが、そう長くいることはないだろう。
俺はそのビルに急いだ。
気を探ると、確かに感じる。
わかりにくいが若干普通の人間の気とは違っているので、ほぼそれに間違いはないだろう。
俺は念のために、自分の気を消すと階段を使って地下に降りていく。
だが、地下一階に降りても、その特殊な気はまだずっと下から感じられる。
しかし、地下一階から下に伸びる階段は見当たらず、これ以上降りていくことはできない。
おそらく、どこかに隠し階段のようなものか、特殊なエレベーターが存在しているのかもしれないが、そんなものを探している余裕はない。
なので、俺はもっとも手っ取り早い手段を取ることにした。
気を出来る限り絞込み、それを足元に向かって放つ。
すると、人が一人通れる大きさの穴が穿たれる。
俺はすぐにその穴に飛び込んで、ターゲットがいる地下に移動した。
派手にやったのだ『レガシー』はすでに探知しており、すぐに逃げ出そうとするはずだ。
実際、俺の目の前に瑠璃色の光を放つ召喚ゲートが開かれており、その前に女が一人立っていた。
近くに能力者がいないところを見ると、すでに司令自体は終えていたのだろう。
俺は転送ゲートに向かって気を放ち、『レガシー』が飛び込む前に消してやった。
「あんた、だれ?」
帰還を邪魔された『レガシー』が俺の存在に気づいて誰何してくる。
魔法の光に照らされたその姿を見る限り、どうやら女のようだ……それも美しい。
少々嫌な予感がするが、今は考えないことにする。
「俺のことが分からないのか?」
たぶんそうだろうな、とは思っていたが一応確認しておく。
「はぁ? 知るわけないでしょ? でも、味方ではなさそうね」
さんざん能力者を使って俺を襲わせている張本人の言葉としては、なかなかに斬新なものだろう。
「俺は鳴瀬和美。あんたが能力者を使って襲わせている当人だよ」
俺は、きちんと説明してやる。
そうしないと、話が先に進まないからだ。




