第05話Puls 異能者達のディスコード07 - 情報入手
第05話Puls 異能者達のディスコード07 - 情報入手
「お前に聞きたいことがある。とりあえず、中に入れ」
俺はなるだけ近づかないように気をつけながら、自室のドアを開けて天野ひびきを中に招き入れる。
「やったしぃ。かれしぃ、あっしぃと? パコっていこうぜ、的なぁ、ワイルドってんしぃ。あっしぃ、そういうのってぇ、ちょーラブるんだよねぇ」
瞬時に誤解されているようだが、そのくらいは想定の範囲内だ。
中に招き入れた後、俺はこれと話した。
ほとんど精神的な拷問のように感じる会話の中で、どうにか必要な情報を探りだして、すぐさま部屋の外に放り出す。
時間的には三十分ほどだったが、一日分の気力をごっそり丸ごともっていかれたような気分になっていた。
やはり、こいつを後回しにして正解だった。
この後に、橘美咲と向かい合うような気力は残っていない。
とはいえ、まだ本番前の下準備にしかすぎない。
まずは、二人から得られた情報を整理する必要がある。
二人に共通した情報として、どちらも『レガシー』がどういった組織なのか知らなかった。
それどころか、誰からどういった方法で司令を受けたのかもわかっていなかった。
ただ、天野ひびきの話によると、司令を受けた物同士はその存在が分かり合えるらしい。
それは、一度も会ったことのない相手であっても、一目見るだけでそうだとわかると言っていた。
司令を受けたら、その任務を果たさなかったりこばんだりすれば、自分が『レガシー』の標的になるとも言っていた。
これは実際に今そうなっていて、俺が対応しているわけだから確認は取れていると言ってかまわないだろう。
次に二人の間の相違点だが、天野ひびきが『レガシー』から司令を受け始めたのは最近のことらしい。
その時のことを、びっくりするくらい、わかりづらいギャル語を駆使して、はっきりと証言した。
天野ひびきが闇に潜る能力に覚醒したのは、ちょうど一年ほど前のことで、初めて司令を受けたのはその少し後のことらしい。
その中で判明したことだが、天野ひびきは今年成人している。
俺より三歳も年上だった。だからどうした、という話しなのだが、微妙にショックだった。
この調査でわかったことは、おそらく『レガシー』という組織は存在していない。
『レガシー』という名を使って、能力を持つ者を操っている何者かがいる。
そいつの目的は不明であるが、正体がバレることを恐れているようだ。
このことは、俺にとって悲報でもあり朗報でもあった。




