第05話Puls 異能者達のディスコード06 - ギャルっ娘、天野ひびき
第05話Puls 異能者達のディスコード06 - ギャルっ娘、天野ひびき
「それでは、誰から司令を受けている?」
至って当然な質問をしたつもりであったが。
「…………」
橘美咲は答えない。
答えようとしないわけではなく、どうやら考えこんでいる様子だった。
「……あれ? そういえば、あたいって誰から司令うけてるんだっけ? あんた知らない?」
しばらく黙りこんだ後のセリフがこれだった。
「おい、本気で言ってんのか?」
俺はいたって普通の反応をしてみせる。
「うーん。司令は受けてるんだよね。他の娘もいるし、それは間違いないしぃ。でも、誰からどうやって司令を受けたのか、さっぱりわかんないんだってば。ねぇ、どういうこと?」
一通り悩んだ挙句に、また俺に質問してくる。
「だからなぜ、それを俺に聞く?」
俺は一旦は、普通に返しておいた。
「あはは……そりゃそうよね。でも、今考えたら不思議よねぇ」
橘美咲は本気で考え始めたようだ。
どうも、これ以上の情報は得られないようである。
「わかった。もういい、後は好きにしてろ」
俺は破ったファション誌を目の前に置いて立ち上がる。
「ひっどいなぁ。横暴だなー。べんしょー、べんしょー」
背後からそんな声が届いてきたが、もちろん俺は無視する。
だいたいそのファション誌を買って来たのはチロである。
俺のために綺麗になりたいと言っていた。
それを考えると心は痛むが、チロならわかってくれるだろう。
とりあえず、俺は二階へと向かう。
この時間、奴はそこにいる。
俺の部屋の前だ。
帰ってきた俺を、確実に捕まえることのできる場所である。
「おかえりぃ。ちょー遅かったしぃ。この家にいるぅなおんたちぃ、ちょーうざいしぃ。かれしぃ、パコってくんないしぃ。どんだけぇ? ここで、まってるしぃ。だからぁ、今夜わぁ寝かさないしぃ。朝までパコっても、あっしぃ問題ないしぃ。むしろぉ? パコっていこうぜ、的なぁ? そういう気分なんだよねぇ」
やたらとパコり押しをしてくるギャルは、もちろん天野ひびきである。
この家にやってきて以来、急速にギャル度が増していき、今では何処を切ってみてもすっかりギャルそのものとなっていた。
変人女達のたまり場と化したわが家ではあるが、それでもギャル要素は天野ひびき以外に存在しないので、ここに来た影響というよりは本性が現れてきたと見るべきであろう。
問題なのは、これから俺はこんなのと会話をしなくてはならないという事実である。
ほとんど無理ゲー的な困難さが予想されるが、いずれは乗り越えなくてはならない試練である。それが、今になっただけの話だ。
俺は、これと向かい合う覚悟を決めた。




