第05話Puls 異能者達のディスコード01 - 斎藤さんと小島さん
第05話Puls 異能者達のディスコード01 - 斎藤さんと小島さん
「よう、どうした? 疲れた顔してんなぁ」
朝っぱらから、何故か元気そうに声をかけてきたのは斎藤である。
「ほっといてくれ」
俺は半ば投げやりに言い返す。
正直、斎藤に付き合っていられるような気分ではなかった。
すると、斎藤はいきなり肩を組んでくる。
「んっ? 何があったんだ、この頼りになる親友様に相談してみろよ?」
などと、これまで一度も頼りになったことのない親友が言ってきた。
「お前に話しても、どうもならん」
俺はきっぱりと断言してやる。
「そんなこと、聞いてみなけりゃわからないだろ? いいから、話してみろよ」
なおもしつこく、斎藤が詰め寄ってきた。
「お前は聞かなきゃわからんだろうが、俺にはこの件でお前が役に立たないことは分かっている。だから、話す必要はない」
一応友人ということで気を使ってはいるが、基本斎藤はどの件であろうと役に立たない。
「はぁ? 役に立たないって……お前なぁ、俺を誰だと思ってんの?」
自称親友様が、なんだかヤバイセリフを口にしそうだ。
「斎藤さ……」
そこに、いきなり首を突っ込んできたのは。
「いわせないよっ! 斎藤くんっ!」
小島だった。
こっちはこっちでヤバイセリフのような気もするが……この場はなにも聞かなかったことにしよう、と俺は決めた。
「あら、小島さん。ねぇねぇ聞いてよ、小島さん。このひとってさぁ、朝から疲れてる顔してるから理由聞いても、なぁんにも教えてくんないのよ。これって、水臭いと思わなぁい? ねぇ小島さん」
急におばさん口調になった斎藤が、小島にそんなことを言っている。
「あらあら、斎藤さん。ひとの気持ちがわからない人って、ホントいやですわねぇ。学校の成績がいいからって、きっと調子に乗ってるんですわよ。きっと、無慈悲な官僚様になって、あたしたちのような下々の人間から搾取しちゃうのですわ、斎藤さん」
小島の話は一気に飛躍し始める。
「そうなんですわよ、小島さん。きっと庶民が苦しんでも、ちっとも気にならなくなっちゃうんですわ。これが、格差社会っていうものですわ、小島さん」
斎藤の話しも飛翔を始めた。
このまま放置していたら、俺はとんでもない極悪人にされてしまいそうな勢いだった。
そもそも、最初の話しは俺が斎藤に何があったのか話さなかったということであったはずだ。
このままの流れが続けば、それも完全に忘れ去られてしまうだろう。
斎藤と小島がタッグを組んでいるのだ。かならずそうなる。
鬱陶しいことだが、そうなる前にここは俺のほうが折れた方がいいだろう。




