表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/550

第01話 ミシュタール召喚-06 近道


 理由は単純で、ルーファとシリンを連れてさっさと決着をつけにいくためである。

 俺一人なら天井をぶち抜いて行っても問題はないのだが、二人を連れてそんなことをやったら死んでしまうかも知れない。

 もちろん、死なないかも知れないが、わざわざ危険を犯す必要もない。

 天井ごと山を取り払ってしまっても問題ないことは確認したし、一番簡単にすむやりかただ。

 俺はルーファとシリンの二人が認識できなくなるギリギリに制限した速度で動き、二人の腰をそれぞれ左手と右手で抱える。


「な、なに?」


 ルーファはただ驚いている。


「き、きさま今何をしてる? 離せ!」


 シリンは驚きながら抵抗しようとする。


「あまり、暴れない方がいい。落ちたら困るだろ?」


 俺に言われて、二人は自分の足元を見てみる。

 すると、漆黒の闇の世界が足元に広がっているのを確認し、自分たちが今空を飛んでいるのだと理解したのだ。

 もちろん、落ちると言ったのはただの脅しだ。

 落としてしまったら、俺は帰れなくなってしまう。


「な、何をしようと言うのです?」


 ルーファは俺にしがみつきながら聞いてくる。

 シリンは黙ってしがみついてきた。

 ちなみに、美女二人にしがみつかれた感想は、正直いってあまりいいものではなかった。

 けっこう強烈な匂いが俺の鼻孔に届いてくる。

 おそらく、まともに風呂も入らず、服も洗濯していないのだろう。

 それをごまかすために、より強烈な匂いを発する香水か何かを使っているらしく、果物が腐敗したような香りを放っていた。

 この世界ではこれが当たり前なのかも知れないが、少なくとも俺にとっては不快でしかない。

 できるなら洗濯機に漂白剤と一緒に頭から突っ込んで、ぐるぐるばしゃばしゃと洗ってやりたかったのだが、飛空している時にやれることではない。

 そもそも、洗濯機も漂白剤も存在しているのか、という話だが。


「今から魔王を斃す」


 俺が言うと、二人の女はほぼ同時に反応した。


「そ、そんなこと出来るわけ……」


 言いかけて絶句したのがルーファ。


「ば、ばかじゃないの!?」


 いきなり文句を言ったのはシリン。

 そして、シリンはさらに続ける。


「あんたは魔王ゾグマの居場所なんて知らないはずだろ? それに、グングニルなしでどうやって闘うつもりだ?」


 二つの質問をしてきたシリンに対して、俺は行動を起こしながら答えていくことにする。


「まず居場所だが……もうついた。この星で一番強いヤツはその下にいる」


 飛空術を使うのやめ二人を地面に下ろしながらの俺のセリフ。


「次に、グングニルなぞ必要ない」


 気を探って見た限り、この程度の相手なら、おそらくフェーズ0でもいい勝負ができるだろう。

 しかし、今は近道を作る必要があるのでフェーズ1でやらせてもらう。

 ちなみに、フェーズ2の攻撃が直接地面に当ってしまったら、惑星そのものが崩壊しかねないので注意が必要になる。

 俺が編み出したフェーズシフトという技は、日常においても普通に生活できて、戦闘中にも周囲への配慮も可能な、とても便利な技なのである。

 もっとも、最終的に宇宙を崩壊させてしまったが、俺以外には誰もそのことを知らないのでまったく問題はない。

 とりあえず、今後は気をつけるつもりではいる。

 とりあえずフェーズシフトはおいといて、俺は左手を少し前の地面に向ける。ダメージを与えることよりも、貫通することを重視した気砲を放った。

 すると、人が四五人くらい並んで通れる大きさの即席トンネルが出来上がる。


「何を……やったのです?」


 もうすっかり、なにがなんだか理解不能な状態に陥っているようで、ルーファが質問をしてくる。

 夜だし、トンネルの中は真っ暗だし、それがなんなんのかわからないのは十分に理解できる。

 っていうか、逆の立場なら俺だってそんな感じだろう。


「とりあえず、魔王ゾンマ?……までの近道作った。いくぞ」


 いくぞと言いながら、おれはもう一度二人の体を抱えると今度は走りだす。


「な、なにを……」


「はなせ……」


 二人が何か言いかけている間に、目的地に到着した。


「ついたぞ」


 言うまでもないかな、とは思ったが俺は一応念のために言っておく。

 巨大な神殿のような広間の中に、今俺たちはいた。

 ただ、赤と黒を基調とした色合いといい、明らかに禍々しい雰囲気といい、普通の神殿とは明らかに違う作りである。

 巨大な広間の中央で、身長が20メートルほどもありそうな巨人が、ほとんどとれかかっている左腕を押さえて呻いていた。

 どうやら俺の気砲が命中したようである。

 貫通用の技なので致命傷にはならず、肩の辺りを削って左腕がもぎ取られるような形になったようだ。

 気を探って放ったので、適当にやっても命中してしまったのだろう。

 運がいいのか悪いのか、まぁこれから斃すわけだから俺としてはどっちも一緒だが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ