第05話 異能者達のロンド06 - 『それ』
第05話 異能者達のロンド06 - 『それ』
公園の南口にある街灯の下から、小島が歩き始める。
しばらくは何事もなかったのだが、やがて公園の中央付近に奇妙な変化が現れる。
公園の周囲には街灯があるのだが、中央には何もなく非常に暗い。
だが、その暗い中に何かが現れようとしている。
微弱だが気の流れを感じるが、人のそれとは明らかに異なっている。
ただ、それが何であるのかは俺にはわからなかった。
チロの気はそれとは別の気に向かっており、今は様子を見ているようだ。
小島は『それ』に気づいているのかいないのか、イマイチよくわからないが、歩いて行く方向は『それ』とぴったり一致していた。
『それ』がなんであれ、この近距離ならば間に合わないということはないだろうが、一応俺はいつでもフェイズ1にシフトできるよう準備しておく。
まぁ、フェイズ・シフトをするぞという気になっただけなのだが。
そして、小島が『それ』から十メートルほどの距離まで近づいたとき、ついに『それ』は実体を表した。
『それ』は女子高生の制服を着ていた。
なぜ女子高生の制服ということが俺にわかるかというと、小島が着ている服と同じものだからだ。
ただ『それ』は女子高生ではありえない。
首から下だけを見れば、多分そうなのだろう。少なくとも、服の上からはそう見える。
だが、首から上に乗っかっているものは口だ。
耳も鼻も目も耳も髪の毛も一切なく、ただ口だけがそこにあった。
それも、人間の口のように唇があるわけではなく、サメのようなむき出しになった不揃いの尖った歯が無数に並んでいる。
あんなのに食いつかれたら、たまったものではないだろう。
ただ、見た感じ口裂けオバケというよりは、口だけおばけと言ったほうが適切だとは思う。
見た目の異様さはあったが、『それ』が発する気は弱く強くはないだろう。ここで問題なのは『それ』の出現はどんどん続いているということだ。
すでに十体以上は出現していた。
この状況に介入してもいいのだが、たぶん『それ』を斃しても終わらないだろう。
『それ』の出現の原因を取り除く必要がある。
問題なのは確認ができるまで、小島が一人で精神的に耐えられるかどうかなのだが……。
そこで、小島の変化に気がついた。




