第05話 異能者達のロンド04 - 専門家
第05話 異能者達のロンド04 - 専門家
「ようするにだ、成瀬くん。小島センセーは口裂けおばけさんを、実際に見に行こうとされているのだよ。そこでもしもの時のための保険として、怪物退治の専門家である成瀬くんを連れて行くように、小島センセーに進言したんだよ」
なるほど、元凶はこいつか。
今まで延々と続いてきた茶番劇は、このための前振りだったのだろう。
ただ、そのことを本人たちが理解しているかどうかは微妙であるが。
斎藤も小島もいわゆる天然色が極めて強いので、紆余曲折した挙句偶然結論に辿りつけたと考えるほうが自然だろう。
それよりだ、
「いつから俺は、怪物退治の専門家になった?」
斎藤と一緒に異世界召喚されたことはあったが、別に必要性があって行ったわけではない。ましてや怪物退治の専門家などと言われるのは心外極まりない。
それに関する斎藤の見解は、
「なんか、かっこいいだろ? なぁ?」
であった。
ならば自分で名乗れという話なのだが、小島が横でウンウンと頷いているのを見ると、これ以上踏み込むのは危険なような気がして話を変えることにする。
「斎藤が行くんだろ? だったら、俺まで駆り出す必要はあるまい」
俺が指摘すると。
「ったく、男らしくないわねっ! 一緒に来るのか、それともあたしに付き合うのか、はっきりしなさい!」
小島がきっぱりとそう言い切った。
どうやら俺には一つの選択肢しか用意されていないらしい。
やはり、斎藤の関係者であるとしか言いようがない。
「それじゃ、小島の親はなんと言ってる? 娘が、ふらふらと夜中でかけていくのは、さすがに心配するだろ?」
俺は別の方面からせめてみる。
「報告を待ってるっから頑張りなさいって言ってた!」
どうやら、攻めてはいけなかった方面だったようだ。
俺はさらなる戦術変更を迫られる。
そこで、スマホを取り出すと、画面を指でスッスッとしながら言った。
「あーすまん。俺はこの後、予定が入っていた。いやー残念だ。というわけで、この話はまたの機会に」
とりあえず、この場を乗り切ることができたらそれでいい。
もちろん、またの機会など存在しない。
だが、しかし、俺は小島を甘く見ていた。
いきなり俺の腕に自分の腕を絡めて来て言った。
「それじゃ、問題はすべてクリアしたねっ。では諸君、いこう我が家へ。いざ、作戦会議だっ!」
スルースキルが発動されていた。
どうやら、自分にとって都合の悪い事態になると自動的に発動されるらしい。
これは、斎藤なみかそれ以上のスキルであった。
さらにやっかいなことに……可愛い。




