第05話 異能者達のロンド02 - 小島あらわる
第05話 異能者達のロンド02 - 小島あらわる
どうやら斎藤も気づいたらしい。
俺が一番疑問なのは、今気づいた斎藤なのだが、そこにはあえて触れるつもりはない。
「ま、そういうことだ。ちなみに俺は肯定も否定もしていないからな。その話を信じるか信じないかはお前の勝手だ」
そう付け加えておいたのは、この手の話は証拠もなしにあったなかったの不毛な議論になりかねないからだ。
正直、そんな議論につきあっていられるほど、俺は暇を持て余しているわけではない。
この話はここで終わる……はずだったのだが。
ここで、突然の乱入者が現れた。
「ちょっとまって! この話は、そこで終わりじゃないのよ、ぢつは!」
女の子である。
俺よりもだいぶ小柄な同級生。そして、このうわさ話の発信源である小島嘉子であった。
人形めいた美しさのある見た目とは裏腹に、どこにでも出没してはあることないこと――主にないことだが――を振りまいては去っていくはた迷惑……もとい、ゴシップ好き美少女である。
どうやら、俺たちの話に聞き耳を立てていたようである。
「これは、小島センセー。なにか新情報はありましたかな?」
同士の出現に気を良くした斎藤が、気取って小島に話をふる。
「えへんっ。それがだね、斎藤くん。ついに、現れたんだよっ!」
意外と大きめの胸を張って、小島が威張っている。
それなりに調子に乗っているということは、それなりのネタを仕入れてきた自信の現れだろう。
とは言っても、俺にはまったく興味のない話であるが。
「それはすごいですな、小島センセー! これは、スクープですよ、小島センセー!」
斎藤が過剰気味に小島に同調すると。
「まだ、話してないよ、斎藤くん」
小島はお約束のつっこみをしてみせる。
「おや、そうでしたかな、小島センセー。これはこれは、少々焦りすぎましたな。失敬失敬」
何かのセリフっぽい感じの言い回しで斎藤が自分の頭を叩く。
「斎藤くんはあわてんぼさんだなぁ。ははは」
小島は軽くつっこみを入れた後、抑揚のない笑い声をたてて話が一段落する。
聞いていた俺は、この件いるのかと疑問は感じたが、つっこむようなことはしない。下手に触れたらやけどをすることは必至だからだ。
斎藤と小島の間に微妙な空気が流れこんだ後、斎藤が再起動する。
「ところで小島センセー。何が現れたんですか?」
満足したらしく、ようやく斎藤が本題に戻す気になったようだ。




