第04話 最強伝説-10 - ヤンキー戦決着?
第04話 最強伝説-10 - ヤンキー戦決着?
逃げ出すつもりなのだろうが、もちろんそんなことを俺が許すはずがない。
死なないように気をつけながら、やんわりと全員を寝かしつける。
今現在立っているのはシリンだけだ。
さすがにこうなると、隠れてもしかたないのでシリンと直接対決する。
「おい、そこの危険物」
俺が背後から話しかけると、シリンは大着にも振り返らずに返事だけを返してきた。
「なに? 忙しいから後にして」
その後シリンはスペルを唱え、魔力転送ゲートを開く。
こいつは……。
「こんな所で、なにをやってる?」
俺の質問に、シリンはけっこうあっさりと答えてくれた。
「バイトだ」
答えながら、再び魔法陣を展開させている。
「はぁ?」
俺は、今ひとつ理解できずに聞き返した。
ちなみに、少しキレかかっている。
「だから、バイトだ。敵を斃せば金になるらしい」
なるほど。俺が気絶させたヤンキー君達が、金でこいつを雇ったらしい。
おおかたシリンに絡んで、フルボッコにされたヤンキー君達が、逆に利用してやろうと計画したのだろう。
問題なのは、このとがり耳の生物には、倒すと斃すの違いを理解することができなかったことだ。
そもそも歩く戦略兵器であるこの生物は、ヤンキー君達の利用目的には適していない。
強盗犯を逮捕するために、空爆を行うようなものだ。効果があっても、そのための影響が大きすぎる。
「おい、いますぐそれをやめろ」
俺は、まだ詠唱を続けているシリンにきつい口調で言ってやる。
「まだ、終わっていない」
シリンは俺の指示を無視してくれた。
「もう一度だけ言ってやる。いますぐ、それをやめろ。でないと、てめぇの履いてるパンツを口の中に突っ込んで、詠唱できないようにしてやる。そのあと、動けないように布団でグルグル巻にしてから押し入れの中にぶちこんで、二度と外には出さないからな。いいか、俺にできないなんて思うなよ?」
俺はキレそうな自分を抑えながら、脅しを含めて警告をしてやる。
もちろん、今話した内容は百パー本気だった。
こんな危険物を野放しにしておくことは道義上からも許されないだろう。
すると、シリンは魔法陣を展開したまま、はじめて俺の方を振り向いた。
「…………」
長めの沈黙とともに、シリンは俺の顔を見ながらニタァっと笑った。
中年オヤジが水着女性をガン見している時のような、そんな雰囲気で。
明らかに、何かアブナイ妄想をしているぞ、こいつわ……。
俺が、少々身の危険を感じ始めた頃、シリンは頭を振って真顔を作る。
どうやら、妄想を振り払ったようだ。




