第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 49 - 明日へ……
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 49 - 明日へ……
俺が尋ねると、
「政府保証によるIDカードです。ルートワース政府の要人としての権限が与えられ、移動とある程度の機密情報へのアクセス権限が与えられます。それをお持ちになっていれば、かなり自由に動けるでしょう。お好きにお使いください」
俺は、この説明でけっこうな所、キナ臭さを嗅ぎ取っていた。
何か裏がありそうだ。
だが、今はそこまで踏み込むつもりはない。
できるだけまっさらな状況で、事件に触れたい。
「わかった、利用させてもらう。それでは、ルートワースで会おう」
それだけ伝えると、俺は風呂場に向かう。
中に入ると、風呂桶にお湯はなかった。
そうだろうとは思っていたが、少し残念だ。
今からお湯を貯めるのもめんどくさいので、シャワーを頭からしばらくの間かぶりつづける。
疲れが取れるわけではないが、俺の部屋から女どもが立ち去るために必要な時間だ。
とにかく、一人でゆっくりと寝たい。
しばらくしてから自分の部屋へと戻ると、さっきまでいた全員が消えていた。
その代わりに、チロが正座して待っていた。
俺が部屋に入ると、両手をついて頭を下げる。
「おかえりなさいませ、ご主人さま」
自分も帰ってきたばかりなのだが、しごく当然のようにチロは出迎える。
俺とともに帰ってこなかったのは、俺を出迎えるためもあったのだろう。
わざわざここまでしなくても、という気持ちはあるがなんともチロらしい。
「よくやってくれた」
俺がねぎらいの言葉を口にすると。
「はい!」
チロは本当に嬉しそうに笑った。
俺が何をするより、この一言がチロにとって最も嬉しいのだろう。
喜ぶ姿を見ていると、そのことがはっきりと伝わってくる。
「ご主人さま。お疲れのところ申し訳ありません。一つ、お伝えしておきたいことがございます」
チロは頭を下げたまま、言ってくる。
出迎えるだけならば、俺の部屋でなくても良かったはず。
そうしなかったのは、俺だけに話して置きたいことがあったのだ。
「ユイの事件と関わりがあることか?」
俺が尋ねると。
「はい」
チロは頭を下げたまま肯定する。
「言ってみろ」
あまり良い話でないだろうことはわかっていながら、俺は先を促す。
おそらく、このタイミングでしかできない話しであろうことは推測がつく。
「ユイ様には姉君がいらっしゃいます。今度の事件の直後から行方がわからなくなっていましたが、日本にいることが確認されました」
ユイは事実だけを告げてくる。
俺はまだ事件のことは何も聞かされていないので、当然何も判断することはできない。
「わかった、覚えおこう」
ここで、俺は少し考える。
事件のあらましを聞いておこうか迷ったのだ。
「朝は、かならずお前が起こしにきてくれ」
結局俺は、起きてから話を聞くことにした。
先に聞いてしまったら、眠れなくなってしまうことはわかりきっている。
「はい、ご主人さま。それではチロは、下がります」
一度頭を深々と下げて、チロは部屋から出ていった。
俺はようやく一人きりになった。
下着のまま、久しぶりに自分のベッドへ潜り込む。
次の瞬間には、俺は眠りについていた。
<第08話 了>




