第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 44 - パンドラの箱
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 44 - パンドラの箱
話しながらミルバがリンクしてくれたのを確認すると、俺は必要なことを簡単に伝える。
「この機体に、今後のことはすべて入力してある。それと、ソーグ帝国皇帝ラーギュルヌ・フォン・リーフラーデに会ったら伝えてくれ」
直接会って話そうか迷ったのだが、やめておくことにする。
「皇帝って、あの皇帝かい?」
思いっきり驚いたようにミルバが聞き返してきた。
「皇帝は一人しかいないはずだから、君の考えている皇帝で間違いはない」
ミルバが戸惑うのも十分に理解できる。
普通に生きていれば、皇帝などと言う存在は人生を通して関係してくることはない。
「で、でも会うことって……あるのかい?」
ミルバはまだ半信半疑であった。
「この機体を持ち帰ったら、向こうからかならず接触してくる。ただし、正規ルートではなく自ら君の前に姿を現すはずだ」
今この時点でライジンのAIはパンドラの箱だ。
開かれたらその瞬間ラートラ共和国とソーグ帝国2つの銀河を巡る歴史が変わる。
そうなる前に、皇帝はかならず接触をしてくる。
もちろん、俺に会うために。
だが、その時俺はこの世界にはいない。
だから、必要なメッセージを残しておく。
皇帝のためだけに。
「あーわかったよ。で、仮にその話が本当だとして、あたいは一体なんて伝えたらいいんだい?」
とりあえず真偽の判断は保留にして、ミルバは俺の話を受け入れることにしたようだ。
良い判断である。
「『あなたは自由だ』とだけ伝えてくれ」
それで必要なことはすべて伝わるはずだ。
「それだけ? それでいいのかい?」
拍子抜けしたようにミルバが聞いてくる。
「ああ、他の言葉は必要ない。『あなたは自由だ』とだけ俺が言っていたと伝えてくれたらそれでいい」
俺はもう一度、同じ言葉を繰り返した。
間違いがないように、というよりもそれで間違いがないということをミルバに伝えるためだ。
「わかった? それであんたはどうするんだい?」
ミルバが聞いてくる。
さっきも言ったし、ミルバも聞いている。
それでももう一度質問してきたのは、これが別れになることを承知しているからだ。
「自分のいるべき場所に帰る。元々長居するつもりはなかったんだが、少々深く首をツッコミすぎた」
自分自身への反省も含めて俺は答える。
滞在期間は日本時間で、およそ一週間といったところだろう。
いくらなんでも長居しすぎた。
フェイズ50以上であれば、時間遡行も可能だがやめておこう。




